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左むっくんが完璧だった2つのポイントについて【vs.FC琉球の会報 2019 7/13】


はじめに、前回の会報で「このまま上積みはないのか、編集部の疑念は深まってしまったぞ~」とか抜かしていたら今節完璧な「上積み」を見せつけられた件につきまして。編集部は己の不明を恥じ、深くおわび申し上げる次第です。なんやこの試合、完璧やん…完璧な試合やん…

横浜、鹿児島と二試合連続で見られていた「前からハメられないと直ぐに決定機になってしまう」「逆にこちらが前からハメられてしまうとヨンジェが勝つ以外に好機を作れない」という二つの懸念点がほとんど払しょくされており、それもむっくんの配置転換がキーとなっていたのですから、推しが尊過ぎて死んだというしかないです。すごかった。有馬監督もむっくんもすごかった。挑戦してこれ以上ない結果が出たので、編集部の手のひら1080°回転した。テンエイティだ。

というわけで、今週は突然の左SBむっくんをめぐる2つのポイントを中心に情報をお届け。当マガジンは良質な「謎解き情報バラエティ」を目指しています。



試合情報


琉球0-2岡山:イヨンジェ(2分、69分)


メンバー


交代
岡山:25久保田→14上田(57分)、24赤嶺→7中野(70分)、19仲間→11三村(90+3分)
琉球:19越智→14上門(63分)、6風間→15和田(71分)、33福井→25金(83分)






左むっくんの2つのポイント


むっくんの左SBは3月の福岡戦での守備固め10分間のみ。あとは右SBでの出場です。広島、C大阪、東京では出場経験がありますが、有馬監督のチームではスタートからのフル出場は初めてのことです。

左SBは廣木雄磨か最近はチェジョンウォンが担当していましたが、今節初めてむっくんがスタメンで左SBに入り、右SBはこれまでCBで卓越したボール奪取能力で活躍してきた田中裕介が入りました。その狙いはどこにあったのでしょうか。むっくんの実際のプレーぶりから見たところから編集部は2つのポイントを挙げてみます。


①サイドのタイマン力を極大化させ、仲間隼斗の迷いを無くす


まずは守備面でのポイントについて。

守備の良さには「コンパクト」という言葉が使われるように、守っているチームの選手同士が協力してボールを奪えるような距離感と角度を適切なタイミングでとれているという状態が必要です。

これは俗に「圧縮」と呼ばれますが、「圧縮」には前後(縦)と左右(横)の2つの方向が存在します。縦の圧縮が出来ていなければ、前後の味方の間で相手がボールを持ててしまい、さらにゴールに近づく危険性が高まります。横の圧縮は主にロングパスの際に横の選手との距離感が離れすぎている(目の前の選手を捕まえるべきか、ボールが来そうな場所に寄せているべきかの判断にラグが生じる)場合に問題となります。攻撃側の狙いは大きく分けてこの2つに分けられ、具体的にとられうるルートに応じて「圧縮」をしていく必要があるわけですね。(チームによって異なるその”ルート”の割り出しが「スカウティング」になるわけです)

例えば、よく問題となるのは2トップvs2CBの数的同数の相手が中盤の選手をおろしたりSBの選手を非対称の高さにすることによって、2対3や2対4という状況を作り出す場合。SHの選手とCHの選手(いわゆる二列目)がそれらの「遊軍」によってボールを奪うタイミングがずれてしまうと、「縦の圧縮」が破られてしまいます。このSHとCHの間のところが、攻撃の起点として主に使われる空間となっています。この遊軍となる選手とそのタイミングはほとんどの場合チームの約束事となっています。

一度後手に回ると、相手はそのアドバンテージを埋められるより速く攻めきるために、ワンタッチで最終ライン→中盤→最終ラインへとボールのベクトルを変えて守備を迷わせ動けなくさせるワンタッチパス攻撃がセオリーとなっています。鹿児島、琉球はこの連動攻撃に磨きをかけることでJ3で図抜けた破壊力を生み出し、J2においても少ない戦力で大きなパワーを出す秘訣となっています。もちろんより戦力のあるチームにおける威力は言うまでもありません。

そういうわけで、ボールを持たれる際はとにかくSHとCHの間にいる選手にボールをコントロールさせないということが重要になってきます。今節の左むっくん起用によってこの目標を概ねうまく達成することができていました。

CBにFWが詰めている時はSBへ仲間が詰め、その後ろで縦パスを受けようとする琉球のSH富所へむっくんが厳しく詰めることを徹底していました。富所は自陣まで下がり「遊軍化」を狙うことが多かったのですが、仲間が前に出ている時は躊躇なくむっくんも敵陣まで富所ついて行って「縦に圧縮」。

逆にFWが自陣でとどまり琉球のCHへのパスを塞いでブロックを形成する場合には、富所を押さえるのか大外を突破し突破口を作ろうとするSB西岡へ対応にするか切り替える必要が出てきますが、今節はむっくんと仲間とで非常に粘り強く富所への縦パスとそれに伴う西岡のオーバーラップを遮断していました。

この切り替え=「横の圧縮」はタイミングが重要で、これまでの2試合ではここの判断で後れを取ってしまって縦パスや裏へのパスを通されてしまう場面が頻発していましたので、非常に大きな改善ポイントと言えます。

琉球が陣形を変えて2トップの守備に対する数的優位や河合のドリブル突破によるアドバンテージを狙ってくると、スライドのエラーによるピンチをつくってしまい(サイドチェンジにむっくんが遅れてしまい身長も足らなかったことでCBの間を割られてしまった)ひやひやしましたが、上田の投入に伴って赤嶺が下がることで中央の数合わせができて落ち着きを取り戻すことができました。これはベンチのファインプレー。

「圧縮」できたとしても、肝心のボール奪取が成功しなければ意味がありません。有馬監督が田中・むっくんというSB配置にしたのはチームで最もサイドでのボール奪取力が高い人選だからだと思われます。圧縮し追い込めば確実に奪えるという自信を持った守備によって効果的なカウンターが可能となり、仲間隼斗の突破力を蘇らせることができた言えるでしょう。



②左利きの喜山を左サイドで前に向かせ、ポゼッションの迷いを無くす


先ほど守備の項で挙げたことはそっくりそのまま岡山の攻撃にとってもポイントとなります。特に複数人に囲まれ続けていた仲間隼斗を自由にし、そこへボールを届けるルートを確立できたことが今節の画期的な部分でしょう。

今季前半でキーとなっていたのは田中裕介とチェジョンウォンの2人のCBからの直接の配球。イヨンジェへ直接当てて相手守備に鉄球をぶち当てるような突破を見せるもよし、サイドに流してセカンドボールを急襲するもよし。イヨンジェ単体のアドバンテージとその二次攻撃における仲間隼斗の突破力で岡山はだいぶ勝ち点を稼いできました。

とはいえ、じゃあCBにいいボールを蹴らせないようにしようと研究されるわけで、今度はそこをかいくぐっていかに攻めるかがポイントとなりました。一つは仲間隼斗をあえて孤立させるカウンター。もう一つはSB、むっくんからの浮き球パスによるヨンジェの飛び出しという「変奏」によってある程度は対抗形を作ることができましたが、むっくんはあまり自らが決定打になるタイプでもないので、やはりCHからじゃないと相手の守備を崩すにはいたらない(SHとCHの間を使いにくい)…と武田将平の成長を待っていたところでした。

その状況で上田康太が負傷から復帰したのは大きかったのですが、それだけじゃなかった。ちゃんと用意があり、今節形となって現れていた。前節の懸念は見事にクリーンヒットされ、場外ホームランになりました。

では具体的に。琉球の守備も岡山と同じく4-4-2の形で、2人のCBと2人のCHに対して2人のFWと2人のCHで抑えに行きます。琉球が前線の選手が降りてくることによって守備をかいくぐろうとしたのに対して、岡山はむっくんが上がって生まれる最終ラインのスペースに喜山が流れることで守備をかいくぐり、前線のワンタッチパス攻撃に繋げる形。

喜山が下がったのは関戸との関係で、左サイドに降りたのは利き足の関係と思われます。サイドでボールを受けるとき、タッチライン側が利き足でないと相手選手に近づく形でボールを止めてしまい相手がボールを奪う合図となってしまいます。逆にタッチライン側で止めることができれば、前でも横でもパスを出せる状態に持って行けるわけです。

そこへ外にむっくん、中に仲間、横に関戸(後半途中から上田)と四角形状にパスを受ける選択肢を作ることで、琉球に「圧縮」を許さない状況を繰り返し作ることが出来ていました。「圧縮」が緩まれば、仲間隼斗が囲まれることなく、存分にドリブルの強さを見せることができますし、逆にドリブルをおとりに裏を取る選手に繋ぐこともできます。イヨンジェや中野誠也へのシンプルな展開と併用していったことで、試合のリズムを自分たちに望むペースへと調整することが可能となっていました。

左からとなったのは上記のようにCHの顔ぶれの都合があると思われますが、それに応じてタイミングよく地味にチャンスを演出するむっくんの振る舞いは非常に気持ちよかったです。

自分が持ってクロスはちょっとあんま良くなかったのであれなんですがw自らが入り込んでシュートというのも前節の右サイドと遜色なくやってますしいい感じでした。あれ入ってたらもういう事なしだったんですが…先の楽しみにとっておくんだと編集部は力を込めて主張したいところです。いやあ決めて欲しかったけどね。



未来へ

次節からはまた上位連戦ということで、前半戦で「いい試合はするけど勝ち切れなかった」という結果からどれだけ上回れるかという部分が問われてきそうです。

今節見せた柔軟性がその答えとなってくれるか、楽しみになるパフォーマンスだったと思います。右でも左でも安心の遂行能力を見せたむっくんもキーとなりそうで愉しみ。

早々に1-0とできたことで完璧に切り替えができたという面もあるでしょうし、これが0-0なら...1-1なら...0-1なら...と点差状況に応じた変化もうまくできるかがポイントになってきそうです。

さらに、むっくんは右かな?左かな?という面も相手によって使い分けてきそうな感じもあります。注目したい部分がいい意味で一杯あって編集部も盛り上がってきたぞーわっふるわっふる。


それでは。