個人的な「発明」

「発明」というのは、一般的には、世界じゅうで一番最初にそれを成し遂げたことを指す言葉だと思います。

ここでは、「実際のところ、誰が一番最初か?」についての探求は脇に置いておいて、「自分が初めて出会った」ことを「発明」と呼びたいのです。

というのも、ぼくは、いろんな表現や作品に触れる中で、「これは発明だ!」と感じることが多々あるからです。

「すごい!」「感動する!」と思う前に、なぜか「これは発明だ!」と考えます。

たとえそれが過去の表現をなぞったものであっても、ぼくが最初に出会ったのはこれなのだから、これがひとまずはぼくにとっての「発明」だ! と考えるのです。

何をいいたいのか、よくわからないと思うので、例を挙げます。

小学生だった頃、ぼくはポルノグラフィティというバンドが大好きだったのですが、その大ヒット曲『サウダージ』のサビの歌詞で、

『許してね 恋心よ』

という一節があります。

ぼくは、これを聞いたとき、誇張でなく、愕然としました。

なぜ、この人は、恋心に向けて許しを乞うているのか?

乞うたところで、恋心から返事がくるとは考えられない。なぜなら、当然、それはかたちのないものだから……。


今にして思えば、これは恋心を擬人化して相対しているような描写をしたにすぎません。

でも、だからといって、ぼくが受けた衝撃は消えません。種明かしを受けてなお、その輝きが消えないのです。

それが、ぼくがこういった表現や作品を「発明」と呼びたい理由です。

僕にとって新しい。

理屈じゃない。

初めて出会った衝撃が、ずっと尾を引く。

それが、ぼくにとって「発明」の条件です。


ももいろクローバーZでいちばん好きな曲で、『GOUNN』という曲があります。

これは、アイドルの可愛らしい声音と、重厚なバンドサウンドと、韻と世界観が合致した歌詞、という要素が見事に調和した曲なのですが、この中で、

『前世も一緒にいたようなカ・ル・マ♪』

という一節があります。

ぼくは、心の中でおしっこをちびりました。

これまでも、仏教的な世界観を歌ったアイドルはいたかもしれない。

でも、底抜けに可愛いまま、仏教を歌ったアイドルは?

……いない、と、思う。いたとしても関係ない。これは「発明」だ!

と思ったのです。


高校の時、マキシマム ザ ホルモンが大好きだったのですが、このバンドも、ポップなメロディーとデスボイスが同居したかっこよさがあります。「発明」です。

のちにSystem of a Downというバンドの影響を受けていることも知りましたが、やはり、衝撃は消えませんでした。今では、どちらも大好きなバンドです。

歌の例が多くなってしまいました。

歌は、ぼくにとって、アイデアの源泉です。

好きな歌は、なんども繰り返し聞きます。

「発明」と出会った鮮烈さは、いつまでも消えることがないからです。


最後に、今でも繰り返し聴く歌で、ぼくの大好きな「発明」のひとつを、紹介して締めくくりたいと思います。

「時を止めて 君の笑顔が 胸の砂地に 染み込んでいくよ」

スピッツの『ホタル』です。

そうか、ぼくたちは時を止めることができる。

その止まった時間のなかで、君の笑顔を思い浮かべることができる。

そして、そうか——胸の中には「砂地」があって、忘れなくないことを水のように染み込ませることができるのか。

ぼくはこの事実を知らなかったけど、すでに、こういった作業を実践していたはずです。

心のありようを的確に言い当てた、大事な大事な「発明」です。

今も、胸の砂地にあります。


「すごい」とか「尊い」とか「エグい」とか「エモい」とか、賞賛の言葉は人それぞれですが、それが、僕にとっては、「発明」という言葉なのでした。

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