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ワンピース 1112話 RAW

毎日毎日学校に通うために歩く。
わざわざ給与も出ない2時間拘束のために毎日歩く。

いざ教室に着いたと思ったら不思議な環境音が聞こえた。

就職の話とソシャゲの話が同時に飛び交う教室は極めて異常だ。

14歳の頃に想像していた20歳と全然違う。

あの頃は、20歳の人間はもっと高尚な趣味の話だとか美味しいお酒の話をするものだと思っていた。

今じゃ携帯で始まって携帯で終わる物の話題が永遠に聞こえる。

永遠に聞こえるんです。

俺の話をひとしきり聞いたカウンセラーは深く俯いた。

「じゃあさ、もし君ならどんな話題を話すの?」

そうですね…

素敵な温泉地だとか穴場の風俗店とかゴシップ、""聞きがい""のある情報のやり取りをひたすらしていたいです

「それ週刊実話だよね」

週刊実話ってなんですか?

「これ」

カウンセラーが棚の奥から取り出してきた雑誌に俺は目をやった

「試しに読んでごらん。これ""君""だから」

適当にページを見開いて、綴られている文字を黙読する。

気づくと真っ白な部屋にいた。

真正面に俺と全く瓜二つの人間が立っている。

状況を吞み込めず仰天していると、俺と同じ姿の人間が話しかけてきた。

「韓国美女!無修正流出!!」
「トラック野郎が選ぶ穴場風俗スポット6選!!」
「統合失調症になった芸能人!!!」

なんだコイツ、大声でこんな内容喋って恥ずかしくないのか。

「お前だよね?」

真っ白な部屋にカウンセラーの顔が浮き出てきた。

「お前の言う""聞きがい""のある話題って週刊実話だよ」

でも、こんな下世話な雑誌読んでるヤツなんかろくな人間じゃないですよ!

「そう、お前はろくな人間じゃないよ笑」

嘘だ。

「お前が馬鹿にしてる人間の次位に馬鹿だから」

何を言ってるんだ。

「だから死ぬんだよ」

やめろ。近づくな。やめてくれ。

やめ______。

次の瞬間、激痛が走り、俺はこれになってた。

目覚めた時はアパートのベッドの上だった。

携帯を開くと月曜日の午前8:30。

学校に行く日だ。

いつものように、照る日差しに「殺すぞ」と言いたげなしかめた面で登校路を歩く。

変わり果てた俺の姿に阿鼻叫喚にならないか不安を募らせ、恐る恐る教室へ近寄る。


下校。

誰からも声をかけられることなく学校が終わった。

誰も俺の変わった容姿に言及することはなかった。

俺は何か腑に落ちない気分でそのままバイトに向かった。

事務所に入る。

おはようございま~す

「あっ、おはようございます~」

○○さん、今日の俺見た目変じゃないですか?

「え、いつもと変わらないように見えるけど…」

何かがおかしい。

事務所の大判鏡を見ると、俺は明らかにこれになってた。

だいぶ人とかけ離れた見た目というか、人間じゃないと思うんですけど。

「何言ってんの。ずっとこんな感じじゃないのよ」

「…あ~、わかったかも、髪切ったの?」

切ったのは髪どころではないと思う。

バイトも普段通り終わり、帰路についた。

家の前でほうき掃除をしているおばさんに挨拶をされた。

やはり普段通りの反応だ。

アパート前のアスファルトを歩いていると、足元に見慣れない物が生えていた。

乳首だ。

チクビがつちからはえてくるんだ。

俺は乳首を踏んづけてみた。

地面が大きく揺れる。

「痛い痛い痛い」

ドスの効いた声が響き渡った。

今の声は誰の声なのだろう。
どこか聞きなじみがあって、懐かしい気がした。

俺はさらに乳首を踏みつけた。

「痛い痛い!もうやめて!や↑ーめー↓て!」

思い出した。これは母なる大地。地球の声だ。

この世に生を受ける瞬間、俺が受け取った声だ。

地球さん!聞こえていますか!?

僕は冷笑のし過ぎで見た目を不細工にされました!!

精進しますから元に戻してください!!

「知らねーよ。元々そんな見た目だったろうがよ」

違います!!こんな酷い見た目じゃなかったです!!

「何か勘違いしてないか?」

え?

「お前は最初からソシャゲもやらない。就職もできない。冷笑はする。見た目も呪霊順平のキモータだったぞ?」

違う。そんなことない。

「ソシャゲに魂を吸われていないだけ他の奴よりマシだと思ってるんだろ?違うからな。お前は何にも熱中できない無人(むびと)。中身カラッポのウンコ人形だ」

俺は頭を掻きむしりながら咽び叫んだ。

違う違う違う!!!

大量のフケが地球の乳首に降り注ぐ。

「どうしちゃったの。そんな叫んで」

近くで掃き掃除を続けていたおばさんが心配して近寄ってきた。

「あららぁ、凄いフケ。ちゃんとお風呂入ってるの?」

おばさんが乳首をほうきで掃く。

次の瞬間、とてつもない衝撃波が地球の内部から放たれた。

「お"ほっ♡!!!」

地面から聞こえた轟音が鼓膜をブチ破り、俺は気を失った。


-アメリカ航空宇宙局-

「大変だ!周回してる衛星が全部軌道上から吹き飛ばされたぞ!!」

「ISS(国際宇宙ステーション)は無事か!?」

「ダメです!!通信失敗!どの子機も応答がありません!」

「とんでもない事態になったな」

「執務長、一体何が起こったのですか?
こんなのマニュアルに想定されていません」

「あぁ、お前は戦後生まれだから知らないか。
コンプライアンスの都合上、この事態の対応策はマニュアルには載せていない。
いや、対応策が"無い"と言うべきか」

「何なんです?この災害は」

「地球(ガイア)のメスイキだ。」



目を覚ますとそこは崩壊した路上だった。

「お"ぉ〜!、ヤベ、キクキク」

地球は立て続けに唸っている。

振り向くと先ほどまで掃き掃除していたおばさんが倒れていた。

大丈夫ですか!?

おばさんの背中を叩き問いかけたが。力の抜けた人形のようで反応がない。

濡れた感触を感じ手を見ると、赤黒い血がベッタリとついていた。

おばさんの左頭部が瓦礫で弾き飛ばされていたのだ。

「あ"〜お"ぉ"ん"!キクキク!キク!」

地球は唸り続ける。

下品なオホ声が、俺には獣の唸りに聞こえた。

地面に散らばった脳の肉片を見つめたまましゃがみこむ俺はフツフツと腹の底から湧き上がる怒りを感じていた。

この野郎。

無言の怒りに身を任せて、俺は地球の乳首を蹴りつけた。

何度も何度も。靴から血が滲み出ても蹴り続けた。

親指の骨が大きな音を立てて折れると同時に、喉元で堪えていた怒りが飛び出した。


このバカ乳首地球が!!乳首感じない男は何やってもダメ。誰が抜かしたセリフだこの野郎!!ただでさえイイとこナシの俺をこれ以上下に落として楽しいか?あぁ!?

「あ"ぁ"っ!!!ヤベ!イクイクイクイク!!!!イギュンゥ!!あぁぁぁぁああああああああ!!!」

隆起したアスファルトから高圧洗浄機のような勢いで水が噴出された。

噴き出している水は、一点から徐々に広がり線を繋いで大きな壁のようになっていく。

直線上になっている水の壁は勢いよく俺の足元まで向かってきた。

避ける気力もないまま俺は正中線に沿って身体を真っ二つに裂かれ、半分になった肉片が外開きに倒れた。

血液が水と混じって空へ噴き上げられ、俺の死体へ雨のように降り注ぐ。


水壁は数分と経たずして地球を一周し、線上にいる人々を裂き殺し、血の雨を降らせながら直線を描いて広がった。

これがグランドライン(偉大なる航路)の元ネタと言われています。

完。


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