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26歳、拳で。

猿を一匹連れなさい と私に囁く老婆あり

教員の講釈をひとしきり聞いた午後、路上でパクったトラックを転がす
海岸沿いのバイパスをぶっ飛ばしているとトラックの振動で胃と金玉が痙攣してきたのでとりあえずETC前で路駐した
道の駅で金玉の煮汁を啜っていると、老婆が肩を叩いて俺に言った「猿を一匹連れなさい」

「それはどんな猿ですか?」
「なぜ猿を連れなければならないのですか?」

「質問は一つずつ相手に聞きなさい
ワカッテティービーにはそのような人はいません
ワカッテティービーをご覧になったことはありますか?」

学歴の話になりそうだったので「質問を質問で返すな」と俺は老婆を力いっぱいにぶん殴った

大便を済ませ、道の駅の自動ドアを抜けると目の前に猿が一匹立っている

猿は俺に問うた

「あの老婆を殴ったのはあなたですか?」

「はい。そうです」

「でしたらワカッテティービーはご存じですよね?」

学歴の話になりそうだったので俺は猿を力いっぱいに殴った

近頃の猿は学歴しか脳にない。そして20代目前になると寺子屋で酒とセックスの話しかしなくなる
インスタグラムとは中学以降疎遠になった同級生がグレていく様を観察する水族館のようなものだと思っていた
彼らが言うにはインスタグラムにはセックスの潜在成長力があるらしい
俺は生まれてこの方、寺子屋では妖怪ウォッチの話しかしたことがないため、耳の後ろでインスタグラムとセックスの関連性を説かれると金玉が膨張して珍棒がうっ血するのだ

猿は鼻血を拭って、ギターを片手に自分語りを始めた

「私は生まれが貧相であるが故に、礼儀を重んじています
どんな飲食店どんな小売店でも店員さんには優しく
店員さんよりも大きな声でありがとうございました。いらっしゃいませ。の挨拶
スナック菓子をつまむときでさえもテーブルマナー
袋を開ける前にいただきますの挨拶
食べ終われば袋裏の植物性脂やカスを拭い舐め、ごちそうさまでしたの挨拶
一日の終わりには感謝と共に床に就きます」

俺はもう一度、力いっぱい猿をぶん殴った

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