見出し画像

能面を見る人の脳波を測る実験について、フォーラム顔学会2023にて発表。

能面を見る人の脳波を測る実験について第28回日本顔学会大会にて発表します。

能面師である私が学会で発表するというのは、前回の情報処理学会のインタラクション2023に引き続き、貴重な経験をさせてもらっている。能面についてこれまでと違った角度から解明し、これまで能面に知識や興味がなかった人にも知ってもらえるいい機会だ。

さて、そんなわけで、能面を見ている時、人間の脳はどのように反応しているのか脳波を測定する実験を行った。

なぜそのような実験をするに至ったかというと、昨年開催した能面展『中村光江と四人の弟子展』において、能面の前に球体や水の入ったグラスを置くといった『対象物』シリーズというアート作品としての展示を試み、その時のお客様方の興味深い反応が多く散見されたから。

『対象物』シリーズ作品

能面は、世界の多種多様なお面の中でもかなり特殊だ。リアルさとデフォルメのバランス、舞台で用いるが故の表情変化の発達、日本人の美的感覚や精神性を内包し、それらが相まって見る者の心を揺さぶる何かがあるのだと思う。

能面展に来場していた東京国際工科専門職大学の大学教授の「これを見てる人の脳波を測ったら面白いかもね」の一言から、「それ、やりましょう!」と共同研究を行うこととなった。さらに、これをテーマに卒論を書きたいという学生さんも加わっての共同研究実験となった。

今回は、このシリーズ作品の中から3点をピックアップ。1点目は、ベースとなる、能面の前に何も置いていないバージョン。

2点目は、能面の前に透明の球体を置いたもの。透明の球体であるのは、具体的な何かではなく、できるだけ置く対象物の抽象性を高めるため。

3点目は、能面の顔がちょうど入るくらいのサイズのが透明の枠を立てた。枠越しに、能面と鑑賞者が相対する形となる。

被験者には、簡易型脳波計と眼鏡型の視線測定器を装備してもらい、これら3点の能面を順に鑑賞する間の脳波と視線の動きを取らせてもらうという実験だ。実験後には、実験中の自身の感情の動きをアンケート形式で答えてもらう。

事前の準備や測定機器の取り扱いのレクチャーなど打ち合わせを重ね、被験者に記入してもらうアンケートも準備し、実験に臨んだ。

ここから得たデータの解析と分析を教授らにしてもらい、分析結果をもとに抄録原稿をまとめ、この度学会で発表する運びとなった。

今は、今週末に行われる『フォーラム顔学2023』での発表に向け、最終調整に入ったところ。また、登壇発表の他に、実験に用いた3点の作品も展示発表することになっているので、ご来場の参加者の皆さんには登壇発表と合わせて実際の作品も見ていただけると面白いかなと思っている。


第28回日本顔学会大会 【フォーラム顔学会2023】

第28回日本顔学会大会【フォーラム顔学2023『人々のための顔 〜 顔の技術と社会受容性』】は、2023年10月14日(土), 15日(日)につくばカピオ(つくば市)において対面と配信のライトハイブリッド形式で開催いたします。皆様、奮ってご参加くださいますようご案内申し上げます。

本フォーラムに参加したい方は事前の申し込みが必要です。ご希望の方は、「日本顔学会」のHPよりお申し込みください。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?