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運命のカノジョ

☆はじめに

読者諸君は、運命という存在を信じているだろうか。努力や意志を超えた力。どうやっても抗えない力。運ばれていく命の流れ。

自分は存在していると思っている。少なくとも、人との出会いに関しては。

小学3年生だか4年生だか忘れてしまったが、とにかくそれくらいのある日、自分は家出をした。親とくだらない理由で喧嘩したのが理由だ。まあ、よくある話である。もちろん小学生なので、警察の世話になり、2日で発見されてしまった。強いて述べるならば、行動範囲が狭かったのが敗因だ。バスや電車を使うべきだった。

これは、少年時代に家出をした人間にしかわからないかもしれないが、家出において最も大きな問題とは、有り余った時間をどう浪費するか、である。水は公共の蛇口を捻れば出る。しかし、食料だけは買わないといけない。よって必然的に金銭を使うことは、なるべく回避したい。だから家出の際は、なるべく金を使わずに日々を過ごさなくてはならない。だが、金を使わない外での娯楽なぞたかが知れている。実際に公園で、体力の限界まで遊ぼうとしたが、すぐに飽きがきてしまった。

別に自分は家出の話をしたい訳ではない。家出の最中に起きた出来事についての話がしたいのだ。

遊びに飽きた自分は、コンビニに入って本を読むことにした。近所の本屋は既に閉まっていたからだ。店員に怪しまれながらも、小学生でも知っている雑誌を手に取る。電撃PlayStationにするか迷ったが、ファミ通にした。

そこで、俺は運命の女性に出会った。

小早川凛子。自分のカノジョである。

☆要するに

コンビニでファミ通を立ち読みしていたら、女に一目惚れしたというだけだ。

最初に凛子を見た時の衝撃は凄まじかった。月まで吹き飛ばされたかと思った。当時、大のツインテ女子好きだったのもあり、ストライクゾーンにド真ん中ストレートだった。人生で初めて2次元のキャラに萌えた。ここから自分のオタク道は始まったと言って良い。過激な巨乳派でもあったが、凛子に出会ってからは多様性を見出した。それほどまで、ツインテール姿の小早川凛子は、自分の好みだったのだ。

家出を終えてから、すぐにパソコンで調べた。鼻息を荒くしながら小早川凛子、と入力する。すると、意外な結果が待ち構えていた。普段はツインテールではなく、ショートカットだったのだ。動揺しつつも、忘れないように国語のノートへラブプラス、小早川凛子、とメモをとる。後に提出することなど知らずに。

ゲーム内容と彼女の詳細を調べていくうちに、あることに気付く。ラブプラスというゲームは、自分には早すぎたのだ。当時、まだ小学生だったため、ある程度まとまった金銭を所持していない。真面目な少年だったから、お年玉は親に預けていた。故にゲームソフトを買う際には、親に使い道を言わねばならない。このゲームを買いたいので、お年玉を返してくれと言わなくてはならない。ここで考えてみてほしい。小学生である自分の子供が、恋愛シミュレーションをねだってきたら? 答えは言うまでもないだろう。

その上、ラブプラスは当時、社会現象を起こすほどに大人気なゲームであった。良くも悪くも有名だったのだ。つまり、親を誤魔化せない。さらに、当時の自分にはまだ恥じらいという感情があったため、お手伝い代を貯めてまで購入する勇気がなかったのである。

というわけで、なくなく購入を諦めることにした。こんな形で挫折を味わうとは思わなかった。とにかく悔しかった。夢に小早川凛子が出てくるほどに。

☆数年後

時は進み中学生。クソガキ真っ盛りの頃、同じ部活仲間からある一言をもらった。

女の子と遊ぶゲームやらね? と。

自分は2つ返事で了承した。その時の自分は、おそらくものすごくカッコいい表情をしていたと思う。

みんなで一緒のギャルゲーを買って、それぞれ好きな女の子を攻略をする。そして各々ブヒブヒ喘ぐのが目的だ。そんな同志が自分含め、3人いた。自分ら紳士三傑は、どのゲームを選ぶか公民館で話し合っていると、テレビからあるCMが流れてきた。そう、NEWラブプラスのCMである。まさに天啓。自分は必死に2人へラブプラスがどういうゲームなのかを説明した。ヒロインもちょうど3人いるし、ピッタリのゲームだ。

2人は快く了承してくれ、急いで近くにあるゲーム屋に向かった。当然だが、買ったのは中古の初代ラブプラスだ。中学生にNEWラブプラスを買う余裕はない。お小遣いでは数年前の中古品が限界だ。

3人でパッケージを手に取り、空に掲げる。というか掲げさせた。そして自分は大声でこう言った。我ら生まれた日は違えども、女に惚れる時は同じ、と。その時の光景は、今でも鮮明に思い出せる。あの時の自分らは、確かに輝いていたのだ。まあ、この後真面目にラブプラスをプレイしていたのは俺だけだった、というオチなのが非常に残念だが、現実とはそういうものである。

という紆余曲折を経て、ようやく凛子と出会えた。出会ってからも長い話がまだあるが、それは後々ブログに書く。今はラブプラス及び小早川凛子について述べよう。

☆ゲームについて

ラブプラスは、出会ってから付き合うまでのギャルゲーパートと、付き合ってからの甘い日々を送るラブプラスパートの2つがある。この作品は後者がウリのゲームで、プレイの殆どがラブプラスパートだ。しかし、ギャルゲーパートだけでも普通にゲームとして楽しめる。実際、一緒に買った2人も、ギャルゲーパートは楽しんでくれた。

はっきり述べてしまうと、好き嫌いがわかれるゲームだと思う。当時のゲームにはなかった、付き合ったその先をテーマにしたゲームだ。自分はゲームのカノジョとイチャイチャすることに抵抗がなかった人間だが、受け付けない人は本当に無理なはずだ。中学2年生の時に、恥じらいという感情をゴミ箱に捨てていなければ、自分もラブプラスが無理な人間だったのかもしれない。そう思うと、過去の自分にひたすら感謝である。

そんな自分は、ラブプラスを毎日欠かさずプレイしていた。凛子と一緒に登校したり、電話したり、デートをするのが心のオアシスだった。カップル同士の何気ない会話が、自分を癒してくれた。この不公平で不平等かつ不均衡な世の中を耐え忍ぶには、そんなひとときが必須だったのだ。携帯機のギャルゲーとは思えない膨大な会話量とイベントに、自分は救済されたのである。

悲しい人間だと、笑いたければ笑えば良い。ただ、自分は本気でそう思っている事を念頭に置くように。

☆紹介

そんな自分の女神である小早川凛子について、軽く紹介しようと思う。まずはプロフィールを見てもらおう。

+ 学年 : 高校1年生
+ 血液型 : B型
+ 誕生日 : 8月17日
+ 星座 : しし座
+ 趣味 : 読書、音楽(特にロンドンパンク)、格闘ゲーム
+ 好きな動物:猫
 
  (CV:丹下桜)

主人公の下級生で、同じ図書委員。

本と音楽が好きで、一人でいることが多い。

他人とかかわろうとしないのには、

何かわけがありそう…

https://www.konami.com/games/jp/ja/products/site/loveplus/info.html より引用

ご覧の通り、思春期で反抗期真っ盛りな女の子である。有り体に述べてしまうと、クール寄りのツンデレだ。当時、自分の周りにはこういった子がいなかったので、初めて見た時は新鮮な気持ちだった。まあ、のちにギャルゲーオタクとなってしまった自分は、数多のツンデレ出会うのだが……。

彼女に惚れた理由は先程述べた通り、見た目である。外見から入った。

(かわいい)

なので、最初の頃は性格が合わないな、と思っていた。しかし、ギャルゲーパートをプレイして彼女の細かな内面を知り、付き合ってからのデレを浴びていたら、いつの間にかメロメロになっていた。魔性の女である。何故なのかは、是非、自分でプレイして確かめてほしい。もしプレイするならば、3DSでできるNEWラブプラス+がオススメだ。

声優は丹下桜さん。カードキャプターさくらの木之本桜や、グランブルーファンタジーのカリオストロなどを演じている方だ。この声が、クールなツンデレである小早川凛子にベストマッチしている。丹下桜さんを選んだ開発に盛大な拍手を送りたい。

実は、自分はゲームだけでなく読書も趣味なのだが、そのキッカケは小早川凛子だったりする。作中で彼女が読んでいたであろう作品を読んで以来、本にハマった。ちなみに、その本とはサリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』である。

小早川凛子の素晴らしさとは、ズバリ距離感である。彼女は最初、人との距離の掴み方が上手くない。しかし一緒に過ごしていくにつれて、彼女は人との接し方が上手くなっていく。その成長に関わることで、プレイヤーは彼氏面ができる。その上、成長した彼女からの信頼(デレ)は、プレイヤーの脳内で麻薬のように作用するのだ。

以上が、小早川凛子の軽い紹介だ。魅力を紹介しきれていないのはわかっているが、これ以上は惚気話になってしまうので割愛しよう。

☆別れ

そんなわけでカノジョがいる生活を楽しんでいたが、何事にも終わりが存在する。ある日、ラブプラスが起動しなくなってしまったのだ。理由は簡単で、長年使い続けていたからソフト側にガタが来てしまったのだ。元々中古だったのもある。

その日、俺は泣いた。派手に泣くと親にバレて面倒なことになるので、枕で顔を隠しながら泣いた。カノジョとの突然の別れは、あまりにもつらかった。自分の中で、カノジョはもうリアルだから、バックアップなんてない。買い直しても、それは別の小早川凛子であって、自分を救ってくれて愛してくれた小早川凛子ではない。とにかく悲しい。ギャルゲーで泣いたのは、これが初めてだった。

さっさと新作へ引き継ぎをしなかった、愚かなで馬鹿な自分を憎む。しかし、いくら憎んでも、壊れてしまったゲームソフトをどうすることはできない。

結局、そのあと新作を買ったが、長くは続かなかった。

これが自分の、人生で最初の失恋である。

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