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体を動かすために必要なATPを生み出す仕組み(動画あり)

今回は人が体を動かすために必要なATPについてまとめていきます。


人が動けるのは何でか?

筋肉が収縮して関節が動くから!

ではどうやって筋肉が収縮するのか?


筋肉の収縮の仕組みについての詳細はまた今度まとめますが、簡単にいうと筋小胞体からCa⁺(カルシウムイオン)が放出され、アクチンに絡んでいるトロポニンと結合し、トロポニンはアクチンから離れていく。その空いた隙間にミオシンの頭(ミオシンヘッド)が入り込み、ミオシンが頭を振るようにしてアクチンを引き寄せることで筋肉の収縮が生じる。


重要なのはこの中の「ミオシンが頭を振るように」の部分!


ここでミオシンが頭を振るためには何らかの燃料が必要である。つまりエネルギーがないとミオシンの頭を振ることはできない。


そのエネルギーとなるものがATP(アデノシン3リン酸)である。


ではこのATPについて少し掘り下げていこう。


ATPの化学構造

ATP化学式


まずはATPがどのような構造であるのかをみてみる。塩基であるアデニンと五炭糖のリボースが結合したアデノシンにリン酸が1つ結合したものをAMP、リン酸が2つ結合したものをADP、3つ結合したものをATPという。


リン酸同士をつなぐ部分は高い結合エネルギーが存在し、高エネルギーリン酸結合と呼ばれている。


この高エネルギーリン酸結合が外れるとき、つまりATPからADP(リン酸が1つ外れ、3つから2つになる)になる際にエネルギーが放出され、このエネルギーを利用して、様々な活動を行っている。


車はガソリンをスタンドで補充すれば走り続けられる。人もこのATPを補充していけば動き続けることができる。


では人はATPをどのように手に入れるのか。



ATP産生における3工程

ATPを手に入れるには自分の体の中でATPを作っていく。つまり、体の中で様々な化学反応を利用してATPを生産していく。


そのATP産生には大きく分けて3つの工程がある。

①解糖系

②クエン酸回路系

③電子伝達系


ではまず解糖系から


解糖系

解糖系とは字のごとく「糖」を分解する過程でATPを産生する機序のことである。

ここではグルコース1molあたり2つのATPを産生できる。では詳しく見ていこう。


まず、「糖」とは糖質のこと。ご飯やパン、うどんなど炭水化物は糖質であり、食事でこの糖を摂取するところからスタートする。


ご飯やパンなどの糖は「でんぷん」とよばれ、それを唾液や消化酵素によりグルコースまで分解され、主に小腸で吸収される。

吸収されたグルコースは血液により各細胞まで運ばれる。また、このグルコースは筋肉、肝臓にグリコーゲンとして貯蔵され、血中の糖が不足するような状態になったときにこのグリコーゲンを再びグルコースに戻して血液中に放出され、全身の細胞へ運ばれる。


そしてもう一つ!


筋肉や肝臓に貯蔵できるグルコースには限界がある。もしこの限界以上のグルコースがある場合はどうするのか。

皆さんご存知の脂肪として蓄えられる。そのため、余分なグルコースは脂肪酸とくっつき中性脂肪として蓄えられる。


「糖質制限」がダイエットに重要であると最近言われているのはこの余分なグルコースがないように、食事からとるグルコースを減らしましょうというもの。

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血液により全身の細胞に運ばれたグルコースは細胞質基質でピルビン酸に分解される。ここでのグルコースにはリン酸も含まれており、ここでエネルギーを供給した際(ATPからADPとなる)に生じたADPに再びリン酸を渡してATPを作り直す。解糖系では2つのATPが産生される。

そして、ここで生じたピルビン酸は次の工程の②クエン酸回路へと入っていく。

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また、グルコースからピルビン酸の流れの中でNAD⁺(脱水素酵素)により水素も抜かれる。化学式を見てもグルコースからピルビン酸で水素が4つ減っている。


つまり、このNAD⁺がないとピルビン酸は作れない。


しかし、ここで問題が発生!


このNAD⁺は水素を抜きとった状態(NADH+H⁺ )ではそれ以上水素を抜き取ることができない。


つまり、このままでは次にくるグルコースをピルビン酸に変えることができないのである。


そして、NAD⁺は希少性が高く、数が少なく変えがきかない。


この問題を解決する方法は何とかしてNAD⁺を使いまわすしかない。


そのためには抜き取った水素をどっかに渡して、空にして、再度また抜き取れる状態にしておく必要がある。


そのNAD⁺を空にする過程で生じるのが誰もが聞いたことがあるであろう「乳酸」である。


ピルビン酸は酸素があるとアセチルCoAとなって次の第2工程のクエン酸回路へ行く。


酸素がない場合、NAD⁺が抜きとった水素を再びピルビン酸へ戻し、それが乳酸となる。


乳酸は肝臓へと行き、再びグルコースとして再利用されるという流れである。


これによりNADH+H⁺から水素がピルビン酸へと移り、NAD⁺が再び水素を抜き取れる状態に戻れるのである。


ここまでが解糖系である。


もう一度流れを確認しておこう。

食事で炭水化物をとる

唾液や胃でグルコースまで分解される

小腸から吸収されて血液へ

血液によって全身の細胞へ(筋肉、肝臓、脂肪にも蓄えられる)

細胞の細胞質基質でグルコースからピルビン酸になる。

その過程でATPを2つ得る。(同時に脱水素酵素であるNAD⁺によって4つ水素を抜きとられる)

ピルビン酸は酸素があれば第2の工程の「クエン酸回路」へと進んでいく。

抜きとられた水素はピルビン酸へ戻し、再びNAD⁺が水素を回収できるようにする。



以上が解糖系の流れである。


では次回は第2工程の「クエン酸回路」についてまとめていきます!

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