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残り4分を戦うために(清水‐東京V)

2023.12.2  J1昇格プレーオフ
決勝 清水 1-1 東京V

こんにちは。
メンタルコーチ 兼 清水サポのLilyです。

第二弾は試合について。

前回のnoteをアップした後、
「最後の最後で失点するのはメンタルなのか」
という質問をいただきました。

このことについてはちょうど
書こうと思っていたところでしたので
「あと数分」「あと1プレー」で失点することに
ついて考察します。

※巷ではあと2分と言われていますが、
おそらくPKでのヴェルディ側の得点時間が
96分だったことによると思います。
髙橋選手のプレー自体が94分ごろなので、
実際清水はあと4分守り切る必要があったとみなし
4分という記載にしております。



1,本当に「変わっていない」のだろうか


決勝後、選手から、メディアから、サポーターから、
「変わっていない」
「去年と同じ」
そういう言葉が多く出ていました。

本当にそうでしょうか。

私は、そんなことないと思います。

去年は後半になるにつれ、
「最後に失点するんじゃないか」
という不安がずっとありました。
むしろ「失点をしない」イメージができなくなるほど
悪循環に陥っていました。

この心理的悪循環は間違いなくメンタルです。
どこかで断ち切る必要があったのでしょうが
最後まで断ち切ることができませんでした。

一方で今年、リーグ戦での
アディショナルタイム(以下、AT)の失点は
14節いわき戦と17節町田戦、プレーオフの3回。
18節以降のリーグ戦は後半75分すぎてからの失点もないのです。

去年、終了間際の失点で落とした勝点は
確か13点だったと思います。
今年は町田での1点のみです。

75分以降の失点も含めても
7節甲府戦の1点、9節仙台戦の2点、16節千葉戦の1点。
町田戦と合わせても5点。
(それを落としていなければ・・・という意見は
ごもっともですが、今の問題はそこではありません)
これは全部前半戦で起こっていることで
後半戦にかけては修正できていたと言えます。

私は、「変わっていない」のではなく、
変わったからこそ、起きたことだと思っています。

1回目の転機は秋葉監督初陣の8節東京V戦。
90分、オセフン選手のゴールで逆転に成功。
2‐1でリードした状態でATへ突入。
あの時、選手たちは
「ボールを保持して時間を使う」という選択をしました。
不格好でも守り切って勝利を取ることを選んだわけです。
その時点で清水エスパルスが7戦未勝利だったことは
皆さんご存じの通り。

攻めるな、時間を使え
権田選手からの指示だったと覚えています。

2回目の転機は15節藤枝戦。
その前節、14節いわき戦は9-1でしたがATに1失点。
最後の最後での失点に、権田選手激おこでした。
8点、9点と取れていても失点したら台無しになる。
幸い勝点は落としませんでしたが、
それを痛感した試合でした。

ですからその次の15節藤枝戦では5点取りながら
後ろは0で守り切る、という戦いができました。
おそらくいわき戦での反省を活かし
試合中何度も選手たちが修正し合って
しっかりとクリーンシート(失点0)で
おさえるということをやってみせました。

更に3回目の転機は28~30節の岡山、東京V、山口戦の
1‐0の試合です。

1点を取り、それを残りの時間守り切る。
それができていた。

この3試合で、おそらく選手たちは
自信をつけたはずなんです。
私がコーチだったらそう思います。

更には38節の磐田戦、
1点を守り切ったことも記憶に新しく、
私の中にはそのイメージがあったので
いける!大丈夫!
そう言ったことを覚えています。


2,AT8分、あの時何が起こったか


VARが入るとATが長くなる。

これは、去年J1で経験し、知っていました。
AT7分、守り切れずにラストプレーで失点する。
そんな光景も、何度も見ていました。

選手は覚えていたでしょうか。
コーチたちは気づいていたでしょうか。

私は覚えていましたし
8分と表示された時に「想像通り」
と思いましたが、
あの時の周りの反応を思い出すと
そうでなかった人もいたと思います。

あの「8分」を見た時に何を思ったか。
どういう戦い方を選択するか、
今年手に入れたものを活かせていたか。

結論としては、うまく活かせなかったと思います。
結果的に。

たとえば山形戦で1‐1(エスパルスが先制し、
後半ATもしくは80分台くらいに失点、
引き分けで勝ち上がり)
という結果だったとしたら、
おそらく決勝では最後の最後、慎重になったはずです。

ですが、今回はそこが曖昧になり
前に行ってロストからのファールからのPK
となったわけです。

それは単なる「至らなさ」だと思います。

ただ、なすすべもなくATの失点を繰り返していた
2022年とは、同じではないと、私は信じます。
人は必ず成長する。
成長して当たった次の壁がちょうどプレーオフだった。

例えるならば
初めて包丁を手にした人が
何度も何度も怪我をする。
それが2022年。

料理教室に通い
食材ごとの切り方を習って
手を切らないように
料理ができるようになってきた。
それが2023年です。

でも初めての食材や慣れていない食材
やることがいっぱいでテンパっている状態になると、
またうっかり指を切ることもあるでしょう。
それがあのプレーオフ。

ここからは、練習あるのみです。
体験と経験を積み重ねて、習熟度を上げる。
習熟すれば、どんな場面でも慌てずに
パフォーマンスが出せるようになる。

更に、
こういう食材は滑りやすいから慎重に、とか。
この食材は切りにくいから一度レンジにかけると
切りやすくなるよ、とか。経験も多くなる。
それがどんな場面にも対応できる適応力になる。
それが2024年のエスパルス。

・・・になると、いいなと思います。

3,リスク管理


大宮戦のレビューを書いた時に
「リスク管理」と書きました。

水戸へ全員で遠征し、
結果プレーオフに回ってしまった。

結果論ですが、ジュビロ磐田は
残りのメンバーを磐田に残して栃木遠征しています。
(磐田はプレーオフに回る可能性の方が
高かったのですから、当然と言えば当然です)

2016年の清水も、メンバー外の選手は
徳島に連れて行っていません。結果論ですが。

秋葉監督は「一体感」を重視(おそらく)したから
水戸へ全員連れて行った。

それが上手くいかなかった、
それは何度も言いますが結果論です。

もし上手く行っていたら、褒められているのでしょうから。"全員で掴んだJ1昇格"とかなんとか、見出しになっていそうです。

ですが、「リスク管理」はどうだっただろう。
夢を追う時
目標を定める時
リスクを考える人はあまりいない。
仕事でプロジェクトをするときは
必ずリスクを考えるのに。
そのリスクをあらかじめ把握できていれば
問題が起こった時の対策ができるからです。
対応策を提示できるからです。

スポーツでも本来、それがあるべき。

超攻撃的に、超アグレッシブに
と言いながらも、
先に取られても慌てるな―
取れなくても焦るなー
秋葉監督はよく言っています。

選手たちにリスク管理を伝えているんですね。

勝つことしか考えていないと
失点した時に慌てます。
失点を想定していないと
どうしたらいいかわからなくなります。

そう考えると、リスク管理は、メンタルです。

先に取られた時にどうするか
引いて守られた時どうするか

そして、
後半のATの戦い方をどうするか

それをあらかじめ想定しておく。
その時のスコアによって。
2‐0なのか、1‐1なのか、1-0なのか、0‐1なのかによって、
どう対応すべきかをあらかじめ想定しておく。

そうすればどんなことが起きても慌てず対応できる。
それが、メンタルです。

実際にこの水戸戦、東京V戦で、清水が
どこまで想定していたかはわかりません。
私たちは想像することしかできませんし
新聞やネットニュースもどこまでが真実かわかりません。半分は記者の主観です。
(最近はXにある一般人の投稿だけを見て
ろくな取材もせず記事を書く記者もいるくらいなので)
普通であればリスクを想定しているはずです。
そうでなければ、すぐに動けないと思うからです。

最後まで、勝利だけを信じる。
それは、スポーツに携わる者としてはごく当然のメンタルです。

ですがどこかに、リスクを計算するしたたかさ。
も、あるべきなのです。
なぜなら、リスクを計算している人は、
すぐリバウンドできるからです。


去年のことについてはこちらにも書いています。ご参考に。


そして最後に、
私がメンタルの道に入るきっかけとなったある人の言葉を送ります。


「残り数分、勝利を確信して気を緩めたら、簡単に負ける」

残り4分、気が緩んでいた人は本当にいなかったか?
それは個々に、自分自身を振り返ってみてください。




次回は選手について書こうと思います。

最後までお読みいただき、
ありがとうございました。

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【プロスポーツメンタルコーチ Lily】

・独りきりでがんばるアスリートをなくしたい
・すべてのアスリートがメンタルコーチに頼れる世界に
・すべてのアスリートに幸せな引退を

静岡市出身。お茶の水女子大学心理学卒。
清水エスパルスとサッカー、音楽が大好きです。
小~高校まで吹奏楽部。高校野球の応援にも全力。
現在は清水エスパルスのゴール裏で声援を送る生活。

伸び悩む若手サッカー選手が
活躍できずに引退してしまう、
そんな姿を見たのをきっかけにメンタルコーチの道へ。

現在は音楽家(プロジャズミュージシャンなど)、
スポーツ選手(サッカー、ビリヤードなど)の
サポートの傍ら、自らの音楽活動も継続。

プロスポーツメンタルコーチ
プロチームメンタルコーチ
NLPマスタープラクティショナー
音楽療法士
リトミック ディプロマA

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