空の電車

都会の電車はひどい乗り物だ。

改札口から線路の上を渡した連絡橋~ホームまで、そぞろ歩いていく人々。わずかに左右に揺れながら、老若男女が同じような歩幅で長蛇の列を成すのはいつもの光景だが、その日は妙に、彼らが死んでいるように見えた。誰もその流れに逆らわないし、速度を上げることも下げることもない。ただ同じくしてふらりふらりと一歩ずつ足を置いていく。さながら現代版スリラーだ。人塊がそのまま、鉄の箱になだれ込んでいく。塊がようやく収まるかというところで、急いで飛び込む輩が現れる。駅員がよくわからない言葉をわめき、聞き慣れたメロディーが響き渡ったかと思うと、はち切れんばかりの中身が強引に押し込まれて扉がシューッと閉まる。軋んだ音を立てながら重たいそれはのろのろ進み始める。

私は……私はそれを眺め、次の電車が来るのを呑気に待っていた。やがて到着した電車の中は、同じものとは思えないくらいの伽藍堂だった。

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lilycal

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