ワシ現実

超一流ドキュメンタリー純文学小説エッセイブログマン

ワシ現実

超一流ドキュメンタリー純文学小説エッセイブログマン

マガジン

  • ワーシーマガジン

    ワーシーマガジン

最近の記事

  • 固定された記事

無才のロウソク

ワシは都内のサラリーマンだ。 なんとなく生きて、なんとなく大学に進み、就活をし、地元を離れてなんとなく、都内の企業に就職した。 これまで何かを特別に頑張ったという自負はなく、大学や就職も受け身の範囲で叶う程度のところだった。将来の計画だとか、そんなものは特に考えていなかった。 ワシは現在、妻と二歳の息子と共に暮らす。 妻とは仕事で知り合った。 無才なワシに優しく寄り添ってくれる、正直なところ自慢の妻だ。 どちらかというと地味で静かな性格だが、ワシにはそれが心地良く、心底大切

    • 制服タルタル

      とある定食屋。 「なあおやっさん、今に始まったことじゃあねけどよお、どいつもこいつも『あれがなきゃだめだ、これがなきゃだめだ』って騒いでよお、ちったあ足るを知るって頭はねえのかってんだ。なあ?」 「そうですねえ。SNSやら何やらで他人の様子を垣間見ては、勝手に人と自分を比べて落ち込むんだとか。あの人はあんなにキラキラしてるのに自分は…とかって。それよりも、目の前にある幸せに気づきたいもんですねえ」 「良いこと言った!おやっさん、今いいこと言ったよ?そんでよ、そういう奴ら

      • 令和スタンダード

        ワシの部下である石橋が、近々こどもが生まれるのだと言って喜んでいた。 ワシは、「妊娠中の奥様も大変だろうし、何かあれば有給休暇を気軽に申請してくれたまえよ」と伝えた。 石橋は、何度も感謝の言葉を言ってくれた。 ワシは、上司として当たり前のことだと考えているので、 「当たり前のことだ!感謝するようなことではない!それにもう令和だぞ!?いつまで古い考え方でいるのだ!」 と石橋の頭を何度も何度も叩いてわからせた。 石橋を叩いて渡るように、念には念を入れて何度も石橋を叩いた。 「わか

        • 化粧品キャンディ

          ワシは化粧品メーカー勤務にしがみついていた。 この会社ではムダ毛処理用品なんかも作っていて、ワシはその商品開発チームに携わっていた。 しかし、ワシはチームを外されそうになっていた。 おそらくワシは体毛が濃すぎるので、チームにふさわしくないというのが原因だろう。 あと、ちょっと何回か寝坊してしまったのも少々影響したようだ。 寝坊したときに、 「お詫びに胸毛むしりやります!何本取れると思う?当たった人にはキャンディあげます!」 と言って、ワシは胸毛を引きちぎった。 9本抜けた。

        • 固定された記事

        無才のロウソク

        マガジン

        • ワーシーマガジン
          48本

        記事

          月額ヤンキース

          ワシがハリー&ポッツァの映画を観てたら、「アクシオ!」という魔法が執り行われていた。 どうやら遠くにあるものを手元に引き寄せる魔法らしい。 非常に便利だなと思って、ティッシュ箱に向けて「アクシオ!…アクシオ!アクシオ!コラァ!」と言ってみたが、やっぱりティッシュ箱は来なかった。 結局、ワシがティッシュ箱のところまで行く羽目になった。 これでは、ティッシュ箱の方がワシにアクシオを使ったも同然だった。 思えば、こんな経験はこれまでもあった。 学生の頃だった。 昼休みになると、ク

          月額ヤンキース

          バレンタインジンクス

          ワシには好きな男の子がいるのだが、ずっと想いを伝えられずにいた。 ワシの一番の友人である、加藤ブランダオ友梨奈ちゃんにだけは、そのことを相談していた。 告白することを決断できずにいたワシの背中を、ブランダオは押してくれた。 「このまま想いを伝えないまま、レイ君が他の誰かと付き合ったらば、きっと後悔しか残らないのではなかろうか。であるならば、結果がどうあれ、告白をした方がコスパが良かろうものを」 「うん…そうだね。そうだよね。ワシ、今度のバレンタインデーに告白する!」 「賢明な

          バレンタインジンクス

          十字架スピーチ

          「幸せはいつも自分の心が決めるんだもの」 これは、人間であることでお馴染みの、ミツヲ氏の名言である。 全くもってそのとおりであって、ワシはいつもその言葉をモットーに生きている。 あるクリスマスの日、友人の結婚式だった。 ワシはスピーチを頼まれた。 何股もかけまくったり彼女を取っ替え引っ替えしたりと遊び呆けていた友人がようやく落ち着いたという非常にめでたい結婚だ。 皆が、ほっこりするようなスピーチがしたいと考えていた。 スピーチの時がやってきた。 まずはマイクチェックと発声

          十字架スピーチ

          校則トマト

          ワシは高校で生徒指導を担当する教員だ。 校則を確実に守らせることで、可愛い生徒たちを真っ当な人間に育て上げるのがワシの役割だ。 校則を守れる人間こそがまともに生きていけると信じている。 頭髪検査に引っかかる者がいたらクリアの基準を満たすまでピンセットで髪を抜き、スカート丈で引っかかる者がいたら膝小僧に目印線のタトゥーを入れさせ、肌着の色で引っかかる者がいたらその肌着を回収して漂白剤で脱色し、美術の庵美加(アンミカ)先生がOKを出す白色となってから返却した。 そうやって業務

          校則トマト

          百八発ふわふわ

          TVショウで、女性タレントが整骨院にロケに行く番組を観ていた。 すると、お兄さんが施術を始め、 『はーい、いきますよー。いち、に、さん!」  掛け声とともに、女性タレントの体を「ゴキッ!!」と鳴らしている。 すると女性タレントは、『すごーい、体が軽くなった感じがしますと言っておきたい!』と言っていたので、ちょうどワシも人助けがしたかったこともあり、整骨院を開いた。 早速、お客さんが来店したので、ワシは見よう見まねでやってみた。 「いち、に、さん!…あれ?」 ゴキ!と音が鳴ら

          百八発ふわふわ

          敗北空洞

          最近は、「無礼王国(ブレイキングダム)」というものが注目を集めているようだ。 ブレイキングダムとは、折り合いのつかない二人組がいた場合、第三者が「そこの二人、試合決定で御座候」と声をあげると、揉めている二人組はリングに上がって対決せねばならず、より無礼な言動で相手を深く傷つけることができた方の勝ちとする法律だ。 ワシの周りでもその影響が顕々著々に現れていた。 ちなみに「顕々著々」という四字熟語はない。 ある日、ワシが出張先で買ってきたお土産のお菓子を職場の皆々様に配って

          敗北空洞

          寒い。サッカーの大金星、祝日にして欲しかった。

          寒い。サッカーの大金星、祝日にして欲しかった。

          ジンジャ・フォーマーズ

          職場の飲み会で、ワシは漫画の話を切り出した。 「あのね、ジンジャ・フォーマーズっていうゴキブリさんの漫画があってね…」 すると、先輩の笠原がいきなり話を遮ってきた。 「おい、何でゴキブリがゴキブリの漫画読むんだよ!わっははは」 「コラ!何言ってんだ笠原!」 「…えっ、すんません」 上司が笠原を叱ってくれた。 頼もしい上司さんだなぁと思っていると、上司は続けた。 「笠原、むしろゴキブリさんがゴキブリ漫画を読むのは普通でねいか?人間が読んでる漫画だって、大抵は人間の話だろうが。も

          ジンジャ・フォーマーズ

          消毒用ジレンマ

          人間というのは、疲れてしまう時がある。 そういう時は、細かいところに神経が行かなくなっている。 コップの水をこぼしたり、足をぶつけたり、コンビニで商品を持ったままお会計せずに店を出てしまったりする。 ワシは疲れて、頭がぼーっとしていた。 とりあえず、何か体力回復できる物を買おうと思ってコンビニに寄った。 入口の側に消毒用アルコールがあったので、ぷしゅ、と消毒した。 消毒したはずが、ぼーっとしていて、「あれ?消毒したっけ?」と思って念のためもう一度ぷしゅをした。 でもぼーっと

          消毒用ジレンマ

          パッチワークヘッド

          春は出会いと別れの季節だ。 ワシは今年度いっぱいでの異動が決まった。 あとひと月程でワシはこの土地を離れる。 最後にこちらでお世話になった床屋で髪を切ろう。 電車を乗り継いで小一時間かかる所だが、腕利きの理容師が一人でやってくれる良い店だ。 ワシは床屋を予約した。 散髪当日になった。 世話になった礼にと、気持ちばかりのお菓子を片手にぶらさげた。 ワシは床屋に着いて、この看板を見るのも最後かと、少しばかり思いを噛み締めて中に入った。 お待ちしてました、と、いつもと変わらない

          パッチワークヘッド

          早速裁判

          ネットサーヒィンをしていたら突然画面が切り替わり、「会員登録完了!」と表示されていた。 併せて、「登録料30万円を12時間以内に下記の口座に振り込んでください。振り込みが確認できない場合は、法的措置を取らせていただくことがあります。」と書いてあった。 今時、こんな詐欺に騙される人はいない。 無視すればおしまいだよ。 ワシはバツボタンを連打してウインドウを閉じた。 連打してたら本来閲覧していたウインドウまで消してしまってイラついた。 イラつきながらもう一度、検索フォ

          早速裁判

          今晩の缶ビール

          ある夕方、ワシはスーパーマーケッツでお買い物をしていた。 明日は日曜日だから今晩は少し飲もうと思って、ビールやおつまみをカゴに入れた。 小さな幸せというやつだ。 カゴは他にも日用品などでいっぱいになった。 レジにて袋はいるのかと尋ねられたとき、マイバッグを忘れたことに気づいた。 「一枚ください」 「はい、一枚398千円になります」 ちょっと高いなと思ったけど、手で持ちきれる量ではなかったので一枚買った。 支払いを終えて商品を袋に詰めようとしたが、袋がくっついて

          今晩の缶ビール