張り上げポピー(前編)

ワシは仕事中、ハンコの赤インクを補充していた。

すると、知らぬ間に手に赤インクがついてしまったらしい。

ワシはそれに気づかず、しばらく仕事を続けていた。

あるときふと手を見ると、手が赤くなっていることに気づいた。

ワシは驚いて声をあげた。

「うわ!血が出てる!血が!」

すると隣の上司がこう言った。

「さっきインクの補充してたときについたんじゃないかね?」

ワシはそれを聞いて、これはインクなのだと気づいた。

しかし先ほどのように声をあげてしまった手前、ただのインクでした、なんて恥ずかしいと思った。

ワシは決死の覚悟で手にカッターを突き立て、本当に傷を作ろうとした。

それを見た上司が、

「やめなさい!」

と言ったのだが、上司は急に声を張り上げたもんだから声が裏返った。

ワシはそれが面白くて笑っちった。

「んふっ、んははははは!!」

上司はムッとしていたが、ワシは面白さが止まらない。

「やめなさい!んふっ、やめなさい!…んはははは!」

ワシは上司のマネをして笑っていた。

そしてワシは言った。

「あー、笑った。上司さん、あんた、これでR-1グランプリとれる思いますよっ!」

次の日からワシの席が無くなっていた。

ピンになっちまったのはワシの方だったってわけ。

クソが!

#小説 #エッセイ #上司 #仕事 #ハンコ #Rー1
#モノマネ

ワシのことを超一流であり続けさせてくださる読者の皆様に、いつも心からありがとうと言いたいです。