2日目午前　ホーチミン

2日目の朝はバインミーから始まった。
今回の連れ合いの食の目的が「バインミー」だというが、大変おいしそうなので異論はない。
フランスパンにベトナム風のレバーペーストやハムや紅白なますみたいなのが挟まれていく。バインミーは、確かに私にとってはSUBWAYのサンドウィッチよりそそられる。
それはそうとSUBWAYの店内にはどこも寒かったという印象しかない。それは私が入ったわずか数回が冬期だったからか相当前だったからかはわからない。たまたまかもしれないが、熱量補給したにも関わらず体が温まらずに外に出た記憶が残る。

こちらは朝から十分な暖かさだ。多分冬でも夏でもフランスとは随分違う気候だろうが、パンの外側はパリッとしていてサンドウィッチとしてどちらが引きずられるでもなく具と共に口内に収まっていくコンビネーションがいい。そしてパクチーやオニオンスライス、ヌクマムの香味が、確かにベトナムを主張して一歩も引かないところもいい。

午後からのツアーに向けて集合場所の旅行会社オフィスを確認しつつ、有名どころのベンタン市場方面へ向かいながら食べ歩きできるものも探す。

ヒンドゥー寺の　スリアマン寺院　を見つけて最初入るのをちょっとためらったのは、インドでは異教徒が入れない場合もあるからだ。明らかな異教徒としては敬意を払いつつ伺いつつだったのだ。
しかしどうも開けっぴろげに人が入って行くので続いてみる。
驚いた事に参拝する人々は　ヒンドゥー　＝　インド　系の見た目ではなく、ベトナムの人に見える。その人達が熱心に参拝していることが予想外だった。

ベンタン市場はにぎやかで華やかな、ツーリストも買い物ができそうな場所だった。
デザインがかわいいカゴバッグやコーヒー売場もある。各地の物がここで買えるなら、これは雑貨好き女子にはぴったりだろう。

と思ってベンタン市場を回った後
「ね　おしゃれ雑貨が女性に人気らしいよ。たくさんあったでしょ？」
と連れ合いに言うと
「ああ　こういう雑貨か　インドのより掃きやすそうな箒やから」と道端の出店を指されたが。

90年代あれだけ聞かされた　アオザイ　を着ている女性をほぼ見なかった。見かける高校生はチェックスカートに揃いの色のシャツだったし、女子高生どころか上の世代もそうだ。
しかし市場内や付近でアオザイ女性グループを多数見かける。外に停まるレトロなシクロに乗り込み、笠をかぶり、カメラに向けてポーズを取るのは、コスプレ外国人？
トキメキアオザイ体験　なりきりフォトショット付き
だったようだ。
東洋人であり、顔貌に顕著な違いはないのに、一目で観光客に違いないとわかるのは、その姿がどこかコントじみているからだ。
皆うれしそうで微笑ましいが、私くらいの年齢に見える女性だったりもする。洋服だったら何を着てもいいが、民族衣装は慣習や縛りがあることも多い。私が振袖着たりセーラー服着たりしてるみたい感があって、コントになるのだろう。
ベトナムの母は娘がアオザイを着るために食事や生活を厳しく徹底して体を作らせる、というのを聞いたが、あの美しいシルエットは着ただけでは到底出せないのだということもわかった。

市場近くのある通りを歩いた時、5RM の値札がふと見える。
あれ？　ドン　とか　K という表記じゃなく　マレーシアリンギット　みたいな表記は何だろう　とよぎった次に　HALAL FOOD の看板のレストランが目に止まる。
そして歩く人に目を向けると　黒いヒジャブの女性を含むグループが歩いていた。
そうか。この通りはモスリムの旅行者向けなのか。

バインミーだけではおなかがすいたので、フォーを食べてから今度はベンタンより庶民的なタイビン市場をのぞくとこういう食材や売る人買う人のいる光景にアガった。
面白がるだけで本当申し訳ないが、まるでホッケみたい魚とかがんもどきみたいなのを見て目を丸くしていると向こうも笑ってくれるので許してもらおう。

一度宿に戻ってシャワーを浴びて、午後のクチトンネルツアーにでかけよう。
宿に近づいたところで買った肉まんを口にすると、それは横浜中華街のものよりうまいかも。
個人的には　それまで中国とある街で90年行きずりの店のものを除けて最もイケると思っていたマレーシア　ペナンの物にあっさり肩を並べてしまった。