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わたしの相方の事 10

人は産まれた瞬間から死に向かって生きています。
それがあまりにも早すぎると考えたこと…。今までのわたしの人生の中で1ミリも考えもしなかった。
昨日まで向かい合って話しをしていた愛しい人が次の日に、動かなくなっていた。
あの人は、うつ伏せに倒れていて、顔は右を向いていました。
身体を起こしてみると血を吐いていて、わたしの手は血だらけに。床を見て初めてそこが、血溜まりになってることに気がついた。すぐに脈を測り、全身を見ました。
足のつま先までがピンッと伸び切っていて固まっているのを見て、「死後硬直」だと分かりました。
無理だと思う分かっていても救急車を呼びます。
心臓マッサージもしますが、顔が紫色に変色していて、「あ…ダメだ。もう。手遅れだ」
わたしはあまり泣くことはないんですが、あんなに心から叫ぶように泣いたのは前にも後にもこの時以外はありません。
あの人はそのまま救急車に乗せられて病院に行きました。
わたしは、警察の方がいらしたので、事情聴取を何時間も受けました。自宅で亡くなった場合は決まり事のようなので、しかたありません。
事情聴取が終わって、病院へ行って先生に「死亡解剖しますか?」と聞かれたので、わたしは「いえ、けっこうです。」と答えました。あの人の身体を切り裂きたくなかったのです。
そのままの綺麗な身体のまま、旅立ってほしい。そう願いました。
お通夜の日は棺のそばに布団をひいて、何度も何度も小窓を開けては、この目に焼き付けておきたくて、顔を見ました。
涙が溢れ出してきて止まりません。
もう動くことはない。動かない。笑ってくれない。話しかけてくれない。優しい気遣い…優しい言葉をかけてくれない。
そう思っただけで、この胸が張り裂けそうになります。とても苦しいのです。まったく寝れません。
横になり右を向いて、左を向いて、それを何度も繰り返していたら朝になってます。
そのまま死んでしまおうか…と、産まれて初めてわたしは「死」を考えました。
たぶん、このまま駅のホームに行き走ってくる電車に飛び込んでも痛さは感じないだろうなぁ…と思いました。
それだけ、頭の中と心と身体が張り裂けそうなくらいに苦しくて苦しくて死にたくなりました。
火葬のときはもっと辛いです。最後にお顔を見て。
このまま、焼いてしまったら跡形も残らなくなる。
魂が戻ってきたら、戻れる身体がなくなってしまう。と本気で考えてました。
ふぅ…と起き上がってくれないかな?と考えもしました。
わたしは火葬が終わって、火葬場の方がわたしに寄ってきて、「どうしますか?確認しますか?」と聞かれるので、わたしは「はい…」と返事をして、わたしのみ部屋に入っていきます。
入った瞬間…あの人の骸骨を見たら、「もう戻ってこれないね、生き返れないね。」と感じます。
火葬が終わって骨をお箸で取るんですけども、わたしは、みんなの前で…
ちょっといいですか?と言いました。
骨をひとつもらっていいですか?と返事を聞かずに、1番目についたものを拾い、ポケットに入れました。
あの人の前歯です。綺麗に残っていたので、今でも大切にもっています。
それと…もうひとつ。
わたしは散骨したんです。お墓も仏壇もいらないと、あの人は出会ったときから言ってましたので、その遺言通りにしました。が、ひとつだけ今でも残してます。
喉仏です。言葉のとおり、仏様の形そのものです。喉仏なので、あの人と行ったカラオケを思い出せるかな?と思って、今でも大切にしています。

気づいてあげれなかった、わたしの責任です。
わたしは一生このことを心の中に刻んで生きていくと誓いました。何だか重い十字架を背中に背負ってる。そんな今日この頃です。4年も経過したら、気持ちは落ち着いています。
自然に笑顔も出ます。心から笑うことはありませんが、あの人を1日たりとも忘れたことはありません。
これからも…ずっと。あの人はわたしの心の中で生き続けています。

〜Lime〜

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