見出し画像

LIMEXが石灰石を主原料とする理由②【「偏在性」の高い資源に依存しないという選択】

日本が100%自給自足できる資源


LIMEXの主原料は石灰石です。

石灰石というのは、主に炭酸カルシウム(CaCO3)から成る堆積岩です。海や湖沼に生息する貝類やサンゴなどの海生生物は、カルシウムイオンを取り込んで自らの骨や殻を形成しますが、それらの死骸が海底や湖底に堆積し、長い年月をかけて圧縮されて石灰石を形成します。それがプレートテクトニクス(地球内部の岩板が移動すること)によって地上に現れたのが、私たちが今、目にしている石灰石です。

石灰石は世界中の多くの地域で採掘されますが、日本は中国、米国、インド、ロシア、ブラジルに次いで、世界6位の生産量を誇ります(*1)。資源に恵まれず、多くの鉱物資源を輸入に頼っている日本において唯一といえる、100%自給自足できる資源です。

果たして地球上にどれだけ石灰石が埋蔵されているのか、その正確な数値は把握されていません。一説には陸上の1割を占めるとも言われますし、総重量は4000万ギガトンという数字もあります。

別の見方をしてみましょう。地球上の地表付近に存在する元素の割合を表した「クラーク数」という数値がありますが、一番多いのは酸素で、ケイ素、アルミニウム、鉄に続き、石灰石を構成するカルシウムは5位です。地球上で最も豊富なカルシウムの化合物が炭酸カルシウムで、要するに石灰石ということができます。

地球上のどこでも豊富に採れる石灰石


地表周辺にある元素は、当然ながら人類の生産活動との関わりが深くなります。酸素は言うまでもありませんが、ケイ素(シリコン)はガラスや半導体などに用いられるし、アルミや鉄はものづくりに欠かせません。

そして、前回の記事でも紹介しましたが、石灰石もまた、セメント・コンクリートをはじめとする建築材料、鉄鋼、製紙、農業、化学など、さまざまな用途に使われてきました。LIMEXもそのひとつといえます。

どんなに優れた材料を発明しても、原料自体が手に入りにくかったり、採れる地域が偏っていたりすると、物流や調達コストなどの経済上のリスクが生じるだけでなく、産業としての発展が制約されることにもつながります。

例えば、日本には天然レアメタル資源がほとんどありません。にもかかわらず、日本の基幹産業である自動車産業やハイテク産業は、レアメタルに依存しています。経済産業省によると、リチウムイオン電池に使われる「コバルト鉱石」生産の約64%はコンゴ民主共和国に偏在しているし、特殊鋼などの生産に必要な「タングステン」は9割以上、リチウムイオン電池や半導体の加工などに利用される「蛍石」は6割以上が中国で生産されているそうです。また、EVの普及で需要増が見込まれる「レアアース」(レアメタルの一種で17種類の元素)においては、日本は約6割を中国から輸入しています。

歴史を振り返っても、人類は資源をめぐって戦争をしてきました。資源の争奪戦に巻き込まれないためにも、偏在性が高い資源への依存度を引き下げるという視点は極めて重要です。

その意味でも、地球上のどこでも豊富に採れる石灰石を原料にするというのは、合理的で持続可能性の高い選択といえるでしょう。

「水」も偏在性の高い貴重な資源


また、日本で暮らしているとあまり意識しないかもしれませんが、「水」も、偏在性の高い貴重な資源と言われています。

世界では今、22億人が清潔な飲料水を確保できず、42億人が適切な衛生設備へのアクセスがない状態で暮らしています(*2)。そして人口増加と気候変動によって、状況はさらに悪化する懸念があります。

世界の総人口は現在の約80億人から2050年には約97億人に増加すると予測されている(*3)ので、水リスクの解決スピードより人口増のペースの方が速いかもしれません。

なぜ水の話をしているかというと、日本では製紙産業が最大の水の使い手だからです。国内の産業別淡水使用量をみると、化学、鉄鋼業界を抑えて紙業界(パルプ・紙・加工品)が最も水を使っています。

実は、紙の生産には大量の水を要するため、自国で紙(紙・板紙)を生産できない国は、78カ国(調査対象190カ国中)もあります。多くの国にとって「水」は偏在性の高い貴重な資源なので、きれいな水を大量に使う製紙産業より国民の生活用水のほうが喫緊の課題というのが、むしろ世界の常識なんです。

水資源に恵まれた日本は、日本は、中国、米国に次ぐ世界3位の紙生産大国です。また、紙を自国生産できるだけでなく、自国生産量が消費量を上回っている数少ない国です。だから、その深刻度を実感するのは難しいかもしれません。しかしその日本も、紙の原料となる木材パルプについては、約70%を輸入に頼っています。

そして、これから人口が増えていくことが見込まれるアフリカ諸国などを筆頭に、世界の紙需要はますます増えると予測されています。紙に代わる持続可能性の高い素材の登場を、世界中が求めています。

LIMEXはこうした課題を解決する素材でもあります。水資源に恵まれず、紙を作れなかった国々でも、石灰石なら採れることが多い。自国産の石灰石を使って紙の代替品を製造できるという意味で、LIMEXは、産業創造によって富の分配を可能にする素材とも言えるのです。

出典
*1 米国地質調査所(United States Geological Survey)
*2 『2020年国連世界水開発報告書(World Water Development Report 2020 ‘Water and Climate Change’)』
*3 国連人口基金「世界人口白書2021」


この記事が参加している募集

自己紹介