AmazonCEOベゾス下半身スキャンダルのすべてがわかる長ったらしいニュース解説

(こういうネタにやたら詳しい自分がちょっとイヤかもw)

英語のネット用語にdic* picという言葉がある。日本語訳を考えてみたが「写チン」というのはどうだろう?  要するに、男性が下半身を自撮りしたものを指すんだけど。アメリカではLINEを使う代わりに、スマホの電話番号にメッセージや写真が送れるようになっているので、特定の相手とのやりとりには、textingと言って「テキスト」を動詞化した言葉が使われる。それが性的な内容のやりとりであればsextingとなる。

昨今、アマゾン、ワシントン・ポスト、ドナルド・トランプまでを巻き込む勢いの「ディック・ピック」スキャンダルは、まだ協議離婚中のアマゾンCEOであり、世界一の富豪、ジェフ・ベゾスに新しいガールフレンドができたことから始まる。

そもそも、アマゾン創業前に勤めていたヘッジファンド、D・E・ショーで、重役だったベゾスがアシスタント職に応募してきたマッケンジー・タトル(旧姓)の面接官だった縁もあり、オフィスで2人のデスクの場所が近かったため、よく聞こえてきた彼のあの独特の笑い声に惹かれた(変わった趣味だと思うけど、好きな人は再生してみようw)マッケンジーがベゾスをランチに誘ったのが2人が出会ったきっかけだったという。

インターネットで本を売る、というベゾスの夢を叶えるため、1993年にニューヨークからシアトルへ車で大陸横断中に2人でビジネス企画を立て、アマゾン黎明期には経理を担当していた小説家志望のマッケンジーと結婚して四半世紀、2019年初頭にツイッターで離婚を発表したばかり。

だが既に昨年から、ベゾスが他の女性を同行して華々しいイベントに参加する様子がなんどか目撃されており、どうやら意中の人はローレン・サンチェズらしいと言われていた。サンチェズにも夫がおり、こちらは大手エージェンシーのウィリアム・モリス・エンデバーの共同社長であるパトリック・ホワイトセル。つまりはダブル不倫だ。(左からホワイトセル、サンチェズ、タコ入道)

地位や名声を手にしたアメリカ人男性の場合、セカンドワイフにはぐっと歳下のブロンド女性を選ぶケースが多いが、サンチェズはマッケンジーより1つ上。髪もブルネットで背格好も大して変わらない元2流のエンタメレポーターのために、エリート教育を受けた新進作家でもある妻を捨て、裁判所の判決によっては7兆円を超える慰謝料を払う(二人が住むワシントン州の離婚法では、結婚期間に蓄積された財産は、それがすべて夫が稼いだものだったとしても、夫婦で折半となるため)つもりなのかと、揶揄されていた。

カウボーイが活躍した西部開拓時代から男は精力絶倫でなんぼ、というマッチョ文化が色濃く残るアメリカでは、女性へのアプローチにディック・ピックが有効、と思い込んでいる男性がなぜか多い。私の周りでは、なぜこんな写真を送れば好かれると思うのか、といぶかる女性も多いし、相手に好意がない場合はセクハラ以外の何でもない。つうか、普通に猥褻罪だろ、それ。

だが、ヒラリー・ロダム・クリントン大統領選挙戦でヒラリーの右腕として信頼を得ていたフマ・アベディン(写真右)というセレブな妻との間にできた幼子の寝姿が横に写っているディック・ピックをどこぞの田舎のティーンエイジャーに送りつけて失脚し、政治の表舞台に返り咲こうとニューヨーク市長に立候補するも落選し、離婚に至ったニューヨークのアンドリュー・ウィーナー元下院議員(左)しかり、どんなに地位やお金があってもアメリカの男性はハートの絵文字の代わりに「写チン」を送るというアプローチに抗えずにリスクを冒すようだ。

アマゾンCEOたる、顧客情報セキュリティーの最先端を行くお人の写真やsextingのメッセージを何らかの方法で手に入れ(その彼女が怪しいからw)、ベゾスを脅してきたのがアメリカン・メディア社(以下AMI)という出版社だ。ここの主要誌は「ナショナル・エンクワイヤラー」で、俗に「スーパーマーケット・タブロイド」と呼ばれている。定期購読もできるが、多くはスーパーのレジに並んだ時に目に入るように陳列されている、カラー刷りの小さめのスポーツ紙のようなもの、と説明するとわかりやすいだろうか。そして内容はどんな文春砲も、女性自身もかなわないほどエグい。

ナショナル・エンクワイヤラーは、金を使ってありとあらゆるセレブのスキャンダルを集め(ちなみにアメリカのまともなメディアに取材される場合、情報提供者に「取材協力費」というお金は一切出ない。日本だと取材されて謝礼がないと怒る人がいるのを知って驚愕した)、挙げ句の果てにはUFO・雪男・ネッシーの類から、トンデモ陰謀論まで間口が広いが、唯一、大統領選挙以前からドナルド・トランプに関するネガティブなスキャンダルは掲載したことがなかった。これはAMIのオーナー社長のデイビッド・ペッカーがトランプと懇意だからとされてきたが、実はもっと根深い問題が発覚している。

(ちなみにpeckerにはキツツキwoodpeckerという言葉からもわかるように、アッチの方は小物、という男性への蔑称でもあるので、ベゾスからペッカーへの手紙に「ペッカーさん、ペッカーさん」と繰り返してるのは嫌味なのかなと思ったりする)

それは「キャッチ&キル」と呼ばれる手法で、トランプの大統領選に不利な情報、例えば第3番目の夫人であるメラニア・トランプ妊娠中に彼がストーミー・ダニエルズ(写真左)というポルノ女優と関係を持ったとか、離婚するからと嘘をついて元プレイボーイ・モデルだったカレン・マクドゥーガル(左、この写真だとわからないけど、この2人の上半身が写っている写真を見るとトランプの趣味がわかるw)という女性と不倫の関係にあった、という話だ。女性側にはその話を特ダネ扱いするから他のメディアには絶対に喋らないという契約を取り付けた上で大金を握らせ、その後で「やはりあの話は使えない」ともみ消す。もし逆らってどこか他のマスコミにチクろうとすれば契約違反で訴える、というやり方だ。

ちょうど今、そのキャッチ&キルの窓口としてトランプの指示で金を振り込んだり、相手の女性を脅したと法廷の場で認めた元用心棒(自称弁護士)であるマイケル・コーエン(写真中央、いかにも小物のマフィアって風貌w)が、ニューヨーク南部地方裁判所で3年の刑期を言い渡されたばかり。この判決文でコーエンに命令や指示を与えた「individual 1」というのはドナルド・トランプを指している。大統領でなければ即刻同罪だ。同時に、トランプが大統領になるべく選挙活動中である限り、AMIのキャッチ&キルのような活動は「選挙献金に準ずる」ものとして選挙法違反なのだが、AMIは地方裁判所と交渉し、コーエンの行動に関する情報をすべて裁判所に伝え、今後3年間はキャッチ&キルを含めた違法行為は一切行わないという条件でお咎めなしとなっていた。

ちなみにニューヨークの南部地区地方裁判所といえば、ウォール街も管轄に入っており、昔からここの検察官は相手がゴードン・ゲッコーだろうが、イタリアン・マフィアだろうが、念密な調査でホシをあげてきた頼もしい部署。今、米大統領選挙へのロシア政府の関与を調べているロバート・マラー特別検察官のスタッフと連携して、トランプ政権周りの人間を次々に追い詰めている。なぜなら、マラー検察官の特別捜査委員会によって起訴されても、トランプ大統領は連邦政府の罪状であれば勝手に恩赦することができるが、南部地区地方裁判所で起訴されたら恩赦は効かないし、いったん恩赦を受けた者はその後、地方裁判所で黙秘権を行使して証言を拒否するとはできないからだ。だからたぶん、ロシアと直接関係ないトランプの悪事はこっちで裁かれることになるだろう。

さて、次はワシントン・ポストとそのオーナーであるジェフ・ベゾスに対するトランプの敵対心を語らねばなるまい。首都ワシントンに本拠地を置き、ニューヨーク・タイムズをライバルとして、ニクソン大統領を辞任に追いやったウォーターゲート事件や、ベトナム戦争時代の米軍の悪事を暴いたペンタゴン・ペーパーズ報道のように、政権の闇に鋭く切り込んできたワシントン・ポストは、現在もトランプ政権とロシア政府の関係を調査し、いくつもの特ダネをものにしている。

一方で、トランプはワシントン・ポストのロシア癒着報道も気に入らないが、ハッタリだけで実は大して金持ちでもない自分と違って、ビジネスで成功して今や世界一の富豪となったベゾス個人に対する嫉妬もひどく、大統領就任後ずっと一貫して目の敵にしている。昨年夏には、米郵便公社に直接「アマゾンが支払う郵送費を倍額にしろ」という無理難題を突きつけたことが報道されている。ことあるごとにワシントン・ポストはフェイクメディアだと批判し、今回の離婚報道の後でも「ざまぁみろ」的ツイートをしている。

さらにワシントン・ポストは、AMIがサウジアラビアに進出したがっていることや、ペッカーがトランプの仲介でサウジの王族と会う機会を持ったことなどを記事にしている。アメリカ国内のメディアは、昨年10月にトルコのサウジ総領事館内で、同紙のコラムニスト、ジャマル・カショジが殺され、その遺体が切り刻まれて持ち去られた事件を非難し、トランプ政権に何らかの外交的制裁をするよう、NATO諸国と協力するよう呼びかけてきたが、トランプはこれに対し何の対応もしていない。

ベゾスのディック・ピックやセクスティングの会話が存在することは、既に先月にナショナル・エンクワイヤラーが報じているが、ベゾス夫妻はこれに先んじて急いで離婚を宣言したようだ。さらにベゾスはAMI側から「今回の自分の不倫離婚スキャンダルの報道に政治的な利害関係はない(要するにトランプがらみではない)と公言しろ。さもなくばさらに10枚のディック・ピックを掲載する」と脅す手紙を送りつけてきたことを自ら暴露したからだ。写真の説明文もエグいが、「結婚指輪をはめた手が写っている」といちいち注釈してあるところが、キリスト教的タブーを強調しており、どの口でAMIが宗教道徳をふりかざすのかと笑止の沙汰だ。

自分に送られてきた脅迫文をそのまま掲載し、「私は屈しない、どんなにワシントン・ポストがcomplexifier(いわゆるオーナーとなっていることの重荷)となろうとも、手放したりしないし、その取材ぶりを誇りに思っている」などと発言したものだから、単なる恥ずかしい浮気者から一気に正義と自由報道の味方、ぐらいに持ち上げられている。その間にも、セキュリティー専門家のギャビン・デベッカーを雇い、どうやって写真が漏れたのかを探っている。

どうやら米司法省も既にAMIの行為がニューヨーク南部地方裁判所との和解条項に違反していないか調査に乗り出したらしく、かつてアマゾンのキンドルにアップルのiPadとiBooksというライバルが現れた時も、アップルと米大手出版社が談合しているとして司法省を動かしたアマゾンが今回もそのロビイストの力に物を言わせているようで、AMIの理事会がさっそく社内調査に乗り出したとの報道があった。

ワシントン・ポストを所有するジェフ・ベゾスとナショナル・エンクワイヤラーを操るドナルド・トランプのバトルにどう決着がつくのか? そのスケールの大きさにただ目眩がするばかりだ。

ジェフ・ベゾスがAMIのデイビッド・ペッカーに宛てた公開文書

事の成り行きを説明したニューヨーク・タイムズの記事

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

36
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。