人の素材を使っても著作権クリアしておけば「パクリエイター」とは呼ばれまいに

某デザイナーの某イベントのエンブレムに端を発し、「パクリエイター」なる造語が聞かれるほどネットで賛否両論、攻撃する人から養護する人まで様々な発言が見られる。

そんなことを引っくるめて、やはり少し「パクリ」がすべからく違法行為なのかどうか、何がオーケーで、どこからがパクリなのか、書いてみた。(例によって私はこういう基礎知識はアメリカで学んだので、日本の現行の法律と照らしあわせて必ずしも一致するとは限らないのだが。)

まず、現代において、どんな分野のアーティストでも、今までに全く似たものがなかった新しいモノを創りだすのは至難の業だということ。

Nothing comes from nothing.

最近もPayPal(ネットでお金のやりとりが出来る画期的なシステム。まぁ日本だとおさいふケータイなんでしょうけど、浸透度が違う)創業者で今はITファンドやってるピーター・ティールが「Zero to One」でゼロからどう起業するか、という面白い本を書いてたね。今年のビジネス書大賞とってたし。(個人的にはエージェントが企画を売った時から、NHK出版のMさんが版権取ると思ってたよ!)ティールは刊行に合わせて日本にも来てセミナーやってたそうじゃない。

それはさておき、特にアメリカという国は「人と違う」ことを評価する個人主義が浸透しているので、がんばって今までになかったモノを創りだした人に対しては、そのことに対してきちんとお金を払うシステムが整っているし、クリエイター側も(タダで)自分のモノが真似されることを嫌い、著作権保護にも余念がない。その辺がだいぶ日本とは違う「文化」なんだなぁと感じる。

ITみたいにテクノロジーそのものが新しい業界ならいざしらず、文明歴が長い娯楽のジャンルで全くのオリジナルを生み出すのはほとんど不可能といっていいだろう。例えば、私が身を置く書籍出版の世界では、フィクションに出てくるベーシックなキャラクターやプロットなんて、すべてローマ・ギリシャ神話の時点で出尽くしていて、その後書かれた小説は、すべていずれかのバリエーションに過ぎない、という「理解」がある。

じゃあ、もう何をどう書いても「パクリ」になるのか、といえばそうではなく、プロットのディテールでいくらでもその時代に沿ったオリジナリティーを出せるし、その表現方法についても果敢に新しい文体に挑戦しているのが「文芸」あるいは「純文学」と言える。アイディアそのものに著作権はないので。

でもそのディテールで、そこそこ長い文章(ワンセンテンス以上)がそっくりそのまま同じ、というのはやっぱり「剽窃」に当たる。The devil’s in the detail.とも言うしね。ちなみにこの場合、devilというのは「悪魔」というより「ものごとの核心」とか「大事なこと」という解釈ね。

一昔前だったら、ちょろっと人の書いたものの一部をそのまま使っても、たまたま同じ部分を読んだことがある人がいたらピンとくる、ってな偶然がなければ、わからずじまいだったんだろうけど、ネットで検索できるこの時代に、そういうのはもう通用しなくなったということ。これを未だにわかってない物書きがいることに驚くこともあるのだが。

もちろんどんな小説家だって、文章力をつけるには人の作品をたくさん読まないとダメだし、誰にだって「こんな風に書けるようになりたい」と尊敬する作家がいるはず。文体の練習として、人の文章をそのまま書き写すのはとても有効な上達法でもある。だけどそれを自分の作品として発表したら、アウト。オマージュでもパスティーシュでもなくなる。

グラフィックデザインの世界でもそれは同じでしょ。人の作品を見てインスピレーションをもらう、何かを着想する、それを元に自分のデザインを展開する、どれもありでしょう。ネットで入手できる著作権フリーの素材、無料の素材も、作った本人が「使っていいよ」って言っているのなら、使っていい。でも、「クレジット入れてね」「商業利用はダメ(つまりそれでお金儲けするのはダメってこと)」「使うなら加工しないで」という但し書きがある場合は、それに従わないとアウト。

某さんもプロで人気のあるデザイナーなんだから、その辺はきちんと押さえてオリジナル製作者の許諾をとったり、指定料金を払えば問題なかったんだろうに。素材サイトもこういった商業利用の可能性を見越して、サイトには粗い画像を並べ、取引が成立したらデータ容量の多いファイルを送ってくれる。その素材がド素人のブログだったとしたら、これこれこういう風に使いたいんですが?って問い合わせれば、何かしらの返事があるでしょうよ。そのプロセスを最初に怠るから後でゴタゴタになる。

画像が一致したからって即「パクリ」ではない。でも、自分はアートディレクターで、下っ端のデザイナーが無料でパクってました、は言い訳にならない。デザイナーだって、名前が出ない、給料安い、でもそういうところで修行をしたい、という気持ちで働いているのでしょう。だったら、ちゃんとプロが最初に「素材の使い方」を指導しないでどうするよ?

同じようなことを説明している法律の専門家や、参考になる基本知識のサイトがあったんでリンク貼っておきます。もうひとつ、厳しい口調のコラムもあった。でもまぁ、私も同じ考えだな。

ちょっと飛躍するけど、TPP(TPTA)がこれからももし締結されるようなことがあれば、この辺のことは誰もが心に留めておくべきことだろうな。いちばん困るのはコミケ界隈の人たちだろうけど、こういう違法な「パクリ」が取り締まれるならそれも良かったんでは、って思ったりしてるんで最近。なんでかって言うと、日本で評価される「モノ作り」って何か新しいものを生み出す「クリエイト」とは別モノだし、デザインの現場に限らず、人と違うコトやろうとする人はとりあえず叩くし、真似したりされたりしてナンボってのがあるから、そこから生まれるものが「パクリ」になりがちなんだよな。そういう文化だってこと、自覚してるのかしらん?

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