見出し画像

ロンドン・ブックフェア2019報告(風の噂的に) Brexitカオスとバズりタイトルなど

Brexitで戦々恐々させられる欧州流通権とは?

あんまり日本の本の流通には関係のない話で恐縮なんですが、他で知る機会もないと思うので紹介しておきます。

とにかく、ヨーロッパの出版人から見れば、ブレグジットという締め切り目前に、それでも原稿が全然書けなくて阿鼻叫喚の作家みたいな状態。この先、どうなるのか誰にもまったく見えない。出版業とEU離脱はあまり関係ないだろうと思いそうなものだけど、たぶん今UKの編集者もエージェントもこの先どうしたものかと途方に暮れている。

イギリスにとって一大事は、この国、自国で作った本の4割が海外に輸出、つまりそのまま主にヨーロッパ大陸で消費されるってこと。EUのおかげで、これまでは大量の本が関税なしに取引されていたわけですよ。で、このまま「いきなり!ブレグジット」になってしまうと、その本が全部、関税の対象になるから、書類もロジスティックもややこしいことになるわけです。しかもややこしくなるとわかっているのなら、それなりの準備もできるけど、その関税のルールもぎりぎりまで議会ですったもんだやっては却下されてるから準備もできない。

版権には「欧州流通権」なるものがあって、同じ作品に複数の英語版(アメリカ版、イギリス版、カナダ版、オーストラリア版とか)がある場合、どの国ではどのバージョンを売っていいか、ということまでしっかり事前に契約で決められていることがある。(日本国内では日本語、という括りで収まる日本は、この点でとってもラクなんだってことです。)

日本の大きな洋書売り場でアメリカ版とイギリス版が並んでたりするのを見たことありませんか? あれはヨーロッパ諸国と比較した場合、日本というテリトリーでは、流通権を買ってまで独占するほど日本で洋書は売れないので、どこの国のバージョンを売ってもいいよという、いわゆる「お目こぼし」(non-exclusive distribution rights)で処理されている状態だからです。

ここから先は

1,704字 / 1画像

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?