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セルフ・パブリシングのうそ・ほんと

昨年ぐらいから日本でアメリカのEブックについて喋ったり書いたりする度に指摘してるのが、アメリカにおけるセルフ・パブリシング、つまり自己出版の躍進。お国柄というんですか、車の修理から家の改装工事まで、とりあえず何でも自分でやりたいDIY精神というのがあって、これがまた、みんながみんな器用というわけじゃないのに(むしろ手先の器用な日本人に比べれば大雑把この上ない人も多い)、なんでも手作りしちゃう。好きなように。

これは「本を出す」ということにおいても同じで、だからつまり、KDPやKoboのライティング・ライフの他にもSmashWordsだの、Wattpadだの、AuthorsSolutionsだの、Lulu.comだの、もうその手のサービスがゴマンとありましてな。

当然、手先が器用じゃなくても日曜大工やるくらいなんだから、本も、ロクな文章も書けないのに皆さん、我こそは次なるスティーブン・キングかダニエル・スティールか、ってくらい、書きまくってます。たまーに本当に天才的に器用な人もいて、口コミで「この本おもしろいよ」ってのが広がって出版社デビューという人もいないけど、ま、だいたいはネットの塵になるわけです。

当然、セルフ・パブリシングのコミュニティーというのができあがって、装丁はこうするとラクだとか、カバーデザインはこうすると売れるとか、その手の情報交換にも熱心。名前も、昔は紙しかなかった時代はVanity Pressなんぞと揶揄されるようなところから刷っていたのが、今やインディー作家などと自称して、実にパンクなカオスですよw

そんなサービスの一つ、スマッシュ・ワーズがクライアントデータから色々割り出してわかったことを発表していたので、ちょっと紹介。

・インディ作品の読者は、どうせなら読みがいのある長い作品を求めており、お値段は1冊3〜4ドルが相場と考えていて、無料のプロモーションをきっかけに読むようになることが多い。

・著者の印税収入は、Eブックオンリーで出版社から8ドル以上の値段を付けた場合と、3〜4ドルで自己出版したときとどっこいどっこい。つまりトーゼンのことながら本の値段を安く設定すると読者数が増えると言うこと。でもだからといって、1〜2ドルで売ることもない、と。

・短くサッと読めるものよりも、けっこう長編が好まれ、さらに3部作とかシリーズものになると人気が出る、特に1作目をタダにした3部作の方が、全部有料の3部作よりも売れる。

・読者はフィクションに「お値打ち感」を求めるけれど、ノンフィクションの作品は内容次第でもっと高い値段でも売れるものは売れる。安くすればいいわけじゃないよ、と。

・Eブックだけで出すのなら、出版社から出すよりセルフで出した方が儲かる。

とまぁ、スマッシュ・ワーズの創設者&CEOであるマーク・コーカーが言ってるんだけど、もちろん、インディー作家が集まれば集まるほどスマッシュ・ワーズも儲かるという図式の中での発言なので、そこんとこは割り引いた方がよろしかろ。

同じ論理で、セルフ・パブリシング界の宝くじ一等賞組であるJA・コンラスやヒュー・ハウイーの言うことも眉にツバつけてから読んでいる。つかさぁ、数字を出さないので有名なアマゾンで、こんだけみんな売れてて稼いでますって言われてもねぇ。

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