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ノーベル文学賞のオッズ予想を元に毎年 寄せられる期待が気の毒な村上さん

また今年もそろそろノーベル文学賞の発表時期がやってまいりました。昨年はスウェーデン・アカデミーに近い人物のセクハラ疑惑と、受賞者の情報漏洩問題で選考員が次々辞任、決を取ることさえできない事態に追い込まれ、今年はその分もダブルで発表になるわけですが、相変わらず日本のマスゴミは村上春樹が受賞するかのように書き立てているようですね。

そのベースになっている情報源がイギリスのLadbrokesなんだけど、ここ、普段はスポーツの試合結果への合法賭博などで幅広くやってるオンライン・ギャンブルサイト。賭け事関連ならなんでもござれなビジネスで、一時期ヒルトン・ホテルのチェーンを買収してた記憶があるな。昔ロンドンにもカジノがいくつかあったよね? 

そしてある時、企業名が変わったなと思ったらCoralを買収したんだわ。これってカジノ後進国の日本だとわからないだろうけど、タバコ屋みたいな感覚で小さなお店があって、そこでありとあらゆるギャンブルのチケットが買える商売。今では店頭でのギャンブルがオンラインに移行して、すっかり見なくなったけどさ。

最近たまにLadbrokesの名前をニュースで聞いたのは、ギャンブル依存症の従業員が横領してたとか、マネロンに加担してたとか、そういう話。こういう商売をbookmakerなんて呼ぶからなんだか本に関係あるかのような感じなんだろうか? いやいやそれをいうならBooker賞が本とは関係ないぐらいに関係ないからw

このLadbrokesのオッズ予想っての、つまり、このサイトにやってきてノーベル文学賞にもカネはろうって人はハッキリ言ってギャンブル依存症のルーザーたち。普段はサッカーだの競馬だのに賭けているが、それでは飽き足らず、なんかオッズ表があったら手を出さずにいられないタイプ。
そういう人たちが普段から翻訳された外国文学の本なんて読むと思う?

このギャンブルサイトにやってくる賭博狂いの人たちは、リストに並んだ名前から「あ、この名前聞いたことあるかも」とか「そういえば地下鉄で向かいの姉ちゃんがこんな名前の著者の本を読んでいたな」とか、そのぐらいの感覚で選んでいるわけですよ。

それなのに、そんなオンラインカジのテケトーな投票結果を鵜呑みにして、毎年あたかも村上春樹が本当にノーベル文学賞の候補に挙がっているかのように報道するのってどうなんだろう? しかも今年はそのオッズ予想表に多和田葉子の名前が入っているから、ダブルで浮き足立っているようだ。日本の現代文学が海外で評価されているんだなスゲー日本、という勘違いをしているマスゴミが多すぎないか?

今年のオッズ表に多和田葉子の名前が入ったのは、去年から始まった全米図書賞の翻訳部門で「献灯使」が選ばれたから。多和田葉子はもうずっと前から地元ドイツで一定の評価はされていて、シャミッソー賞とか、ゲーテメダルとか、ドイツ語で(でも)書いている作家として認知されている。

アメリカではずっとニュー・ダイレクションズという出版社がほそぼそとながら多和田作品を出していて、「献灯使」にはジニー・タプリー・タケモリさんという優秀な翻訳者が付いて、いい感じにポピュラーな仕上がりになったし、もともとアメリカで出される翻訳文学作品なんて全体の3%と言われているので、希少価値もあって多和田作品にもチャンスがあったという話。

もちろん、こんなことを毎年のように書いているけれど、個人的には村上春樹も多和田葉子も好きな作家。だいたいのタイトルは読んでいるし、ノーベルに限らずどんな文学賞でも受賞したなら、心の底からおめでとうと言える。だけど、それと受賞の可能性を冷静に客観的に考えられず、読みもしないで持ち上げたり期待したりするのとは別だよね。

なんでも毎年のように村上春樹担当編集者は、山積みの仕事もうっちゃっていつノーベル文学賞が発表されるかと待っているとか、各社の担当編集者が集まってどっかで飲み食いしてるってな話も聞いたけど、なんかそれって恥ずかしい。ノーベル賞のエピソードなんて、だいたいスウェーデン・アカデミーからかかってきた受賞の知らせを友人のいたずらだと思って、電話を切っちゃいました、なんてのが多いんだがw

そして翌日の日本の新聞には「今年もノーベル文学賞を逃す」みたいな見出しで書かれちゃう村上さんに心の底から同情する。本人もわりと「迷惑だ」みたいなこと、どっかに書いてませんでしたっけ?


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