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監獄みたいな寮に入った話#1

桜花爛漫の春。

暖かな風と空に舞う桜が新たな門出を祝福するかのような、そんな季節。

スーツケースを片手で引き、私はとある学生寮へと来た。

獣道を抜け、雑木林をくぐると、時代に取り残されたかのような外観の建物がそこにはあった。まるでジ〇リの世界観さながらだ。


「ここが、噂の・・・」


大学から徒歩数分!家賃は相場の10分の1!
そんな好条件に魅せられ、入寮を即決した。

が、新居を訪れてから早々に自分の選択を間違えたのではないかとさえ思った。

確かに、入寮する前から色々と不穏な情報は耳に入ってきていた。
やれ汚いだの、やれ不便だの、やれ虫と同居することになるだの・・・。

しかし私は完全に楽観視していた。
何事も住めば都!なんとかなるっしょ♪

「マジで・・・!?このレベルなの?」
声が出るほどに驚愕し、そんな甘い考えは建物を見た途端に容易く崩壊した。

住めば都?いやいや笑
住んでも廃屋は廃屋だろっ!

これは自分のエンジンにハイオク突っ込むくらいの覚悟をしなければ…!!と、鼓舞しつつ管理人に鍵を受け取りに行く。

「周りには何も無いからねぇ~、勉強にはもってこいですよ!ワハハッ!」
恰幅の良い管理人が私に鍵を渡しながら笑顔でそういった。

バカか冗談じゃない、一体どうやって生きていけばいいんや!
泣くぞ、良いんか?猫ミーム発動すっぞ?お?

確かにここに来るまでにスーパーの1つも見かけなかった。

「あ、あの~買い物はどこで、?」
困惑が陰キャ感を増長し、いつも以上にどもりながら聞く。

「まあ、皆さん歩いて数十分のスーパーまで買いに行っていますね笑」

不便だ!不便だよお!!
片道数十分も歩かないと飯にありつけないなんて。。。

まあ、大の大人が玄関で駄々こねて泣きわめいても何も始まらないので、とりあえず部屋に行く。

寮の敷地の最奥、男子だけの棟の一室が私の部屋だ。
寮の玄関には、さも当然のように蜘蛛の巣が張ってあり、玄関にはカナヘビも駐在している模様。
足下をスルスルと這っていく姿をこの目で見たからな!
勿論、宮川探検隊バリの驚きで転びそうになる。

廊下は、この季節ではあり得ないくらいジメジメとしていて、じっとりとした湿気が肌にまとわりつく。

うん、帰ろうか?もう帰ろうよ・・・

ほんとにここ人が住む場所なんか?
(入居人にバカ失礼)

部屋につき、ドアを開けても嫌な湿気は付きまとう。
トイレと衣類の収納棚、ベッドと机に椅子のみのとても狭い部屋だ。

スウェーデンの刑務所の方がマシじゃねえか!
私はなんてとこに来てしまったんだ。。。
本当にやっていけるのだろうか。。。



これは、監獄みたいな寮に入居してしまった限界大学生の日記。















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