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Eitaが偉かった話

Eitaが師匠であるドラゴン・キッドを裏切り、ヒールターンをしたのは2017年11月の後楽園、彼が26歳の時だった。
それと同時に、所属していたユニットOVER GENERATIONを抜けヒールユニットVerserKに加入した。当時VerserKには鷹木信悟を屋台骨にT-Hawkエル・リンダマンというEitaの同世代がおり、ヒールは彼ら3人の若い選手に託される。
翌年1月にはユニット名をANTIAS(アンチアス)に改名し若手中心のユニットとして本格的に始動した……筈だった。
しかし、5月の愛知県ビッグマッチの後、彼にとってもDRAGON GATEにとっても予想外だったであろう出来事が起きる。
団体の新体制、そしてCIMAが上海事業を希望した事により団体を離脱。彼を慕うT-Hawk、エル・リンダマン、山村武寛、現#STRONGHEARTS勢が相次いで退団をした事だ。
それにより、3人で担う筈だったDRAGON GATEの抗争の中心であるヒールの旗手という重責が、Eita1人の肩に重くのしかかった。
ここからの彼の苦労は計り知れないものがあった。
今でこそ愛されヒールとして余裕のある振る舞いをしているEitaだが、当時の彼は今のキャラと大きく変化はないものの余裕がなく、常に目を吊り上げていた印象がある。
口が達者だったリンダマンに比べるとマイクも未熟でブーイングすら起こらず、彼が喋ると客席がサーッと引いていく瞬間があったりとヒールとしての支持率は決して高くはなかった。
そんな彼がDRAGON GATEで為した一番の大仕事が師匠であるドラゴン・キッドとの抗争だ。
17年11月に裏切ってから翌年18年12月の福岡国際でのビッグマッチまで約1年、近年の団体の抗争の中でも最も長く愛憎渦巻く熾烈なものだった。
そして、その1年はEitaがヒールとしてプロレスラーとして大きく成長した記録そのものでもある。

1年の間、師弟は正に二人三脚で抗争を続けた。
ANTIASとの解散マッチでキッドの所属していたOVERGENERATIONは解散、当時キッドが所持していたブレイブゲートを2人で奪い合った。
Eitaの視線の先には常にドラゴン・キッドがいて、時に本当に嫌っているのかと思う程の激情と憎悪の表情をキッドにぶつけた。
今思えば彼の必死さがそのままリング上に反映されていたのだと思うが、キッドファンにとっては観ていて本当に辛くなるような場面も数多くあった。そして、キッドは彼の愛憎全てを全力で受け止めていた(実際はEitaのTwitterバトルにレスポンスが薄く、構ってくれる土井成樹にうつつを抜かしている時もあった)。

抗争の間、ANTIASの屋台骨だった鷹木の離脱があったものの、ビッグR清水(現・BIGBOSS清水)Ben-KKAZMA SAKAMOTOの加入、DAGAの参戦、PACの久々の帰還等がありヒールユニットとして充実し、ユニット名もR・E・Dと改名した。
仲間も増え、客席の支持も上がっていき、Eitaも徐々にヒールとして成長をしていたが、同年代のライバルがいなかった彼は常に孤独なように見えた。

Eitaの集大成になったのは18年12月の福岡国際センターでのマスカラ・コントラ・カベジェラ戦。試合はR・E・Dとキッドを後押ししたMaxiMuMとのDRAGON GATEらしいユニット同士による総力戦となり、最後は土井のボックスで全力でぶち抜かれたEitaが負け、髪を失った。
キッドはEitaに対して「すべてを受け止めてやる!」と言い、Eitaは試合後に「貴方は本当にすごい人だよ」と称賛した。
最終的には握手を求めたキッドを攻撃して立ち去った彼だったが、その言葉は心からのものだったのであろうと信じたい。
この試合で、師弟の愛憎渦巻く抗争は終わりを迎えた。
大仕事を終えた後のEitaは表情も柔和になり余裕が生まれ、ヒールとして、プロレスラーとして大きく成長したのは明らかだった。

ヒールターン後、ライバルというライバルもおらず、数々の先輩ヒールと比べられて支持がなかなか集まらなかったEita。
彼が#STRONGHEARTS勢が抜けた後、散漫な空気のあった客席とDRAGON GATEを盛り上げた選手の1人であるのは紛れもない事実で、ヒールとして重責を背負ってくれた彼にファンの一人としては頭が上がらない。
今のDRAGON GATEには彼のライバルたる選手はいないかもしれないが、団体を背負う若い選手と同年代のライバル達が数多くいて、次世代の若手としてEita1人がほぼ全てを背負っていた時代とは違う。
だから、彼には安心して団体を若い選手に任せて好きな事をやって欲しい。
そしてたまには、本当は信頼しているであろう師匠とのタッグも見せてほしいというのはキッドファンとしての密かな願いだ。

ありがとうございます、お疲れ様でした。
そして、たまには戻って来てね。​

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