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中小零細企業でDXに挑戦して爆死した話

もふもふライオン(@mofumofu_LION)です、こんにちは。
ここ3年くらいで、どこのイベントに行っても「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」という言葉を目にするようになりました。
実際、うまくいってる企業はDXという言葉を使ってないように見えますが、どうなんでしょうか?

…という話はさておき、弊社でも業務のIT化を行い、ビジネス形態を変えるDXにチャレンジしてみました。そして、残念ながら失敗に終わりました笑
今回の記事ではDXを行おうとして爆死した経験を紹介します。
その経験から、中小企業のDXが遅れてる理由も書いていこうと思いますので、是非ご覧ください。

産業廃棄物処理事業の管理は昭和で止まってる

弊社はビルや学校などの建物を壊す解体業者、そしてコンクリート廃材をダンプ車で運ぶ収集運搬、一定の大きさに破砕処理を行う産業廃棄物処理業者です。
この記事を読んでる方の中にはイメージしづらい人もいるかと思うので、弊社でやってることをザックリまとめてみました。

コンクリート廃材が最終処分地まで辿り着く3ステップ

ここでキーマンとなってくるのが、解体現場~産業廃棄物処理工場までコンクリート廃材を運ぶダンプ車の管理業務です。
ダンプ車の管理業務は

  • 現場、最終処分地からの発注管理

  • 産業廃棄物処理工場の処理量の管理

  • 現場~産業廃棄物処理工場~最終処分場までの人材・設備管理

という重要なミッションでもあります。
簡単に言うと「どのドライバーが」「どの車を使って」「どこに行くか」「どれくらいの量のコンクリート廃材を産業廃棄物処理工場で処理できるか」を全体管理してる仕事です(以下、この業務を「配車業務」と呼びます)。

工場、及び搬入出管理を行う大事なお仕事

この配車業務、15年以上前に完成された形になり、「配車計画書」なるもので管理してます。
実際に今でも使ってる配車計画書サンプルが👇。なお、普段は手書きです(汗)

現行の配車計画書。
どの解体現場から、どの発注者から、どんな発注が来て、どのドライバーが行くか、を記載。

現在、この配車計画書の運用は

産業廃棄物処理工場の管理者が印刷する

電話で産業廃棄物処理工場の管理者が解体現場、最終処分地からの発注を請ける

ドライバーがどの解体現場にコンクリート廃材を取りに行くべきか、を産業廃棄物処理工場の管理者が手書きで記載する

産業廃棄物処理工場の管理者が翌日分の配車計画書をコピーして運転手に共有する
産業廃棄物処理工場の管理者が翌日分の配車計画書をスキャンして、解体現場、最終処分地の責任者にメールで共有する

という流れとなってます。もっと詳しく書くと👇の通り。
(細かいので、読み飛ばしてOKです。)

現行の配車業務フロー

見てわかる通り、手書きと電話で対応していくアナログスタイルが色濃く残る業務になります(汗)
そして、ここから先の話では、この手書きで作ってる配車計画書をスプレッドシートに変えて「DXしていこうよ」という話になります。

解体現場の職人からの要望を踏まえ、アクセル全開

この15年、特に問題なく配車計画書をもとに配車業務を遂行していたのですが、ある日、解体現場の職人から改善要望がこんな要望が出てきました。

職人「配車計画書、翌日分しか見えないけど、もっと先の予定まで見たい」

実は先ほど書いた紙の配車表、実は工事の翌日分しか共有されません。
そのため、オーダーを投げる解体現場の責任者からすると

  • 自分が出した翌日以降の発注状況の確認

  • 翌日以降のダンプ車の空き状況、運転手の出勤状況の確認

を電話で産業廃棄物処理工場の管理者にいちいち確認しなければいけない状況でクレームが殺到してました。
(翌日以降も紙で共有しようと思えばできますが、毎日数十枚単位の印刷を行う必要があり、それを毎日行うのは現実的ではありません。)
逆に解体現場の責任者が翌日以降の状況が即座に分かれば、

解体現場の責任者側で発注タイミングをコントロールできる
(他の現場からの発注が多い日は避けることができる)

につながり、いちいち電話で産業廃棄物処理工場の管理者に確認することもなくなります。
産業廃棄物処理工場の管理者側も電話の稼働も減りますし、いいことづくめ。
その他、翌日以降の状況を掴めれば、

  • 他の解体現場からコンクリート廃材を受ける営業も可能
    (今まで産業廃棄物処理工場の状況がブラックボックスのため、営業もできませんでした。)

  • 発注状況(どの現場から、どんな発注が来たか)をデータとして蓄積し、将来の発注予測を立てることも可能

など、翌日以降の状況を「見える化」するだけでビジネスの形態が変わる、いわゆるDX案件でした。
そんなことも踏まえ、開発スタートにアクセルを踏んだわけです。

要件定義、開発、説明まで無事終了

…とは言え、既存の配車計画書を作る業務をしている産業廃棄物処理工場の管理者からすると

管「15年やってた業務を変更されると、困る。やったことない業務なんて、無理です。いくら会社にとってプラスになるからって耐えられません。」

となるのは必至。逆の立場でもそう思います。
そこで、

  • 要件定義:現行/将来の業務フロー確認、その他要望ヒアリング

  • 設計:現行の配車表と全く同じ形でスプレッドシート設計

  • 構築:AppScriptしこんで、社員の運用ステップを簡略化

  • 運用:ハンズオンセミナー、全体説明会、アフターフォロー

  • 保守:24H365H対応(私が走り回るだけ)

まで丁寧に浸透させるようにスケジュールを設定しました。
👇は現行/将来の業務フローを整理したもの。
(細かいので、読み飛ばしてOKです。)

現行の配車業務フロー。手書き多いよ…(´;ω;`)
今後の配車業務フロー。紙→スプレッドシートに変えただけ。ステップ数微減。

その後、産業廃棄物処理工場の管理者の了解を得て、5カ月程度かけて開発を行いました。
なお、その時のやり取りは

管「ここまで丁寧にやってくれたら、助かります。解体現場からの要望も応えられるし、古い産業廃棄物処理業も次のステップに移行できます!」
私「その他、要望ありますか?」
管「特にないです。」
私「後は運用スタートして、トラブルシューティングするのみ…やっと終わる!!」

そう思ってた矢先、事件は起きました。

急に後ろから刺され、ブレイキングダウンへ

それは運用開始1週間前のことでした。
急に産業廃棄物処理工場の管理者からこんな通達が回ってきたのです。(一部抜粋かつニュアンスそのまま、文言変えてます)

配車計画表の作成業務をした経験がない"もふもふライオン"さんがシステムの導入を検討することにより、業務の効率化よりも負担が大きくなります。
まずは業務を数年間経験してください。
業務経験を加味して、導入を検討します。

先日まで導入に了解していた産業廃棄物処理工場の管理者が急に手の平を返してきたのです。

私「えっ!?この前までポジティブにとらえてなかったっけ?ワイの幻聴だったのか!?」

配車業務経験うんぬんの話であれば、私も自分の手を動かせば終わり…でしたが、残念ながら、他の業務でトラブルだらけの状況で数年間の配車業務経験はハードルが高すぎると思いました。
産業廃棄物処理工場の管理者は、私が他のトラブル対処で配車業務ができないことも理解しての仕打ちだったのです。
そのため、通達を見た瞬間、頭の中の怒りのスイッチがパチンと入りました。

私「ふざけんなっ!ここまで計画練ってきて、お前の了解も取ってきただろうが…何のために丁寧に、丁寧に要件定義や設計してきたと思ってんだ!お前の要望も全て加味して開発したやないか!」
管「でも、あなた、業務経験ないですやん!20年近く働いてるベテラン級と同じ立場になってから出直してきてね」
私「お前、経験ないとできないとか言うなら、解体現場出ろや!現場責任者からの要望無視して、会社の利益損なう形になるけど、その分の穴埋めできるのか?」
管「…(沈黙)」

最終的に一方的にボコボコにしてしまいましたが、産業廃棄物処理工場の管理者も納得せず。
この戦いの後、社長(義父)に判断を委ねた結果、

配車業務を数年間やらなきゃいけない理由が不明。2カ月で十分。なお、配車業務を行った後はスプレッドシートを導入すること

という形に落ち着きました。
そして、2か月の経験がスタートすると思いきや…事務員が辞めたり、トラブル続きで後手後手。
産業廃棄物処理工場の管理者から教える時間もないということで延期となってます。
そして現在に至る。

どうだったでしょうか?ここまでDXをしようとして爆死した話でした。
おそらく、産業廃棄物処理工場の管理者は会社全体の利益になるということで了解はしたものの、自分の業務が変わってトラブルが起きた時のことを想定するとマイナスイメージしかなかったのでしょう。
これからも難癖付けられて、やってくれないのかもしれません。。。
そんなことを踏まえ、👇反省。

中小零細企業のDXが進まない理由を勝手に話す

データを活用した業務・経営を推進するDX。
「無理にやる必要はないだろう」と思ってる会社もまだまだいますが、その判断はまともな意思決定とは思えません。
人手不足で手が回らない状況なのはどこも一緒だと思いますが、嘆いても人が入ってくるわけでもなく…どの会社でも業務改善を余儀なくされているはずです。
ただ業務改善を行う上では「何が問題か」「何が効果的か」を仮説を立てるのが必要であり、そのためにはデータ活用が必要不可欠になってきます。
だから、DXを推し進める必要があるというのが私の自論ですし、どんな会社であれ、避けては通れない道だと思ってます。
しかし、多くの中小零細企業ではデータ活用をして業務・経営を推進するどころか、アナログ文化から脱却する気もないところばかり。昭和で時が止まってるように思える時も多々あります。

では、なぜ中小零細企業でDXが進まないのでしょうか?
その理由は自社に適したシステムがないわけでも、社員のシステム開発の知識が足りないわけでもなく、

DXを行う目的意識、そして「絶対成し遂げる」という覚悟が足りないから

だと私は思ってます。
中小零細企業の経営者から「DXしなきゃいけないと思ってるんだよね」と聞かれることがありますが、目的を聞くと「トレンドだから」「世間的になんとなく」と言ってる方がまだまだ多いです。
日々の辛いことを「DX」という魔法の言葉で片づけたいだけかもしれません。
また、目的意識があったとしても、本気で成し遂げようという思いが低い人も多く、

「DXで楽になるのはわかるけど、自分の業務を変えたくない…」

と無茶苦茶なことを考えている方も多く見受けられます。もはや意味がわかりません。。。

中小零細企業の経営者、そして情シス部門、業務運用者の皆様、DXなんて言葉遊びなんて、どうでもいいので、まずは「どうなりたいか?」「どうしたいか?」を腹を割って話しましょう…その結果、世間一般でいう「DX」なるものになると思います笑

中小零細企業のDXはハードルが高いけど、参入余地は高いのでは?

ここまでネガティブな話ばかりでしたが、その反面、私が感じてるのは

私「中小零細企業のDXは、伸び代の余地があるはず。誰も手を付けてないスキマ領域が多い!」

ということ。
今回、紹介したような産業廃棄物処理業界だけでも、ITの導入により、データを活用し、新しいビジネス展開を目指すことができます。
しかし、その課題認識は産業廃棄物処理業界の中にいる私だから、わかったこと。
他の業界の人であれば、わかるはずもありません。
楽観的かもしれませんが、今まで競合だった他社が顧客になるかもしれない…そんなことを考えてるとワクワクが止まらないのです。

爆死したことを糧に、今後も頑張りたいと思います(終わり方、雑)

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