武隈 祥太（たけくま・しょうた）

投手　左投げ・左打ち　1989年11月24日生まれ
ライオンズ在籍：2008～22年
通算成績：365試合 21勝15敗 1セーブ 68ホールド　防御率3.82
背番号：48（08～22年）
当日所属：TEAM SEIBU

通算176勝をあげた技巧派サウスポー星野伸之を輩出した旭川工高の出身。高校に入学してから、身長が20センチ近く伸び、球速も約20㎞/hアップ。全道大会の出場もなかったが、しなやかな腕の振り、右バッターの内角に正確に投げ切るコントロールで、複数球団のスカウトが関心を寄せていた。ただ、本人は高校で野球は辞めて、工業系の会社への就職を志望していた。

そんななか、高3夏の旭川地区大会の1ヶ月前に、ノックの打球を捕り損ね、左手ひと指し指を骨折してしまう。懸命の治療で、なんとか本番には間に合わせ、旭川東栄高戦では16奪三振の好投もみせたが、不完全燃焼で最後の夏を終えることになる。すると、心境の変化があったのか。大会後も走り込みやウェイトトレーニングを継続。プロ志望届を提出すると、07年の高校生ドラフトでライオンズから4巡目指名される。

この年3月に、野球協約で禁じられているアマチュア選手に対する金銭供与が発覚。ライオンズは高校生ドラフト上位の指名権剥奪の処分を受けていた。そのため4巡目ながら、この年ライオンズが最も高い順位で指名した高校生が武隈だった。

入団当初から「マイペース」「何事にも動じない」との評判で、マウンド上でも飄々と投げる実戦向きなタイプだと言われていた。2年目に1軍デビュー。　3年目にはプロ初勝利と、着実に成長曲線を描いていく。

プロ5年目の12年、初めて開幕1軍でスタートすると、中継ぎで自身最多の登板数を積み重ねていた。そんななか7月に入ってすぐ、西口文也が右肩痛、岸孝之は打球が当たった左ヒザ裏の違和感、石井一久は左ヒジ痛を訴えと、わずか5日間で3人のローテーション投手が登録抹消されてしまう。

この緊急事態に、抜擢されたのが武隈だった。2年ぶりプロ2度目の先発だったが、松田宣浩、多村仁志、内川聖一、小久保浩紀と並ぶ福岡ソフトバンクホークス打線をノーヒットに抑えるピッチング。8回表1死から、長谷川勇也にレフト前ヒットを打たれ、大記録はならなかったが、次の高谷裕亮をセカンドゴロに抑えたところで交代を告げられると、ダッグアウトへ戻るサウスポーに、大きな拍手が送られた。

14年以降は1軍に定着。16年にはチーム最多の64試合に登板するなど、バックスピンの利いた真っ直ぐと、バッターの右・左に関係なく投げ込めるチェンジアップを武器に、ワンポイントからロングリリーフまで、本人が「便利屋」と称する幅広い役割を任される。

武隈は人知れぬ記録を持っており、13年4月29日の東北楽天ゴールデンイーグルス6回戦で救援勝利してから、18年4月8日のオリックスバファローズ3回戦まで、西武ドーム（現ベルーナドーム）で、6年に渡って12連勝しているのだ。このホーム球場12連勝は、ライオンズが埼玉に移転して以降の球団最長記録となっている（福岡時代には、河村久文が平和台球場で18連勝している）。

17年にシーズン55試合に登板したのを最後に、左肩の違和感、ヒジの炎症、股関節痛と、万全な状態でフルシーズンを戦うことは少なくなってきた。それでも21年には、4年ぶりに40試合に登板する。

6月8日には2死満塁のピンチに登板して、佐野恵太（横浜DeNAベイスターズ）を一ゴロにうち獲ると、7月7日は1死満塁から王柏融（北海道日本ハムファイターズ）を三振に。10月9日イーグルス戦では無死満塁で登板して、鈴木大地を浅いセンターフライ、茂木栄五郎、渡辺佳明を連続三振と、無失点に抑えてみせる。

得点圏に走者を置いたときのシーズン被打率は.147と、“困ったら武隈”と呼べるくらいの火消しを続けた。

22年3月に痛めた左肩が回復せず、引退を決断。事前には公表せず、10月2日のシーズン最終戦の試合前に、センター後方のLビジョンのオリジナル映像で発表。そのままサプライズ登場すると、セレモニアルピッチで最後の1球を投じる。とてもマイペースなやり方で、15年間のプロ野球人生を締めくくった。

その「背番号48」と、登場曲「Life pallet／ナオト・インティライミ」は、武隈のことを尊敬してやまない今井達也に引き継がれている。

「LIONS CHRONICLE 西武ライオンズ LEGEND GAME 2024」
3月16日（土）12:00開場／14:00試合開始
会場：ベルーナドーム
配信：パーソル パ・リーグTV
放送：BS朝日（翌日録画放送）