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【西武ライオンズ 今日の見どころ プレシーズン編】「走魂」と重なり合う「Hit!Foot!Get!」の記憶

●今年同様 走りにフォーカスした26年前のスローガン

今シーズンのチームスローガンが「走魂」に決まったと聞いて、ちょっとした懐かしさや既視感を覚えたファンは多かったのではないか。かつてライオンズには、今回と同じく走ることにフォーカスした名スローガンがあったからだ。それが1997年に採用された「Hit! Foot! Get!」だ。

この26年前の東尾修監督就任3年目だったシーズンと、今シーズンには共通点がある。どちらも前年のリーグ3位から巻き返しを図るシーズンだったこと。そして、チームの主力打者がFA移籍でいなくなったことだ。

森友哉がバファローズへと移籍した今シーズンと同じように、1997年は清原和博がジャイアンツにFA移籍して迎えるシーズンだった。

前年までに通算329本塁打していた不動の4番打者が不在となったことで、大量点ではなく、足の速い選手の出塁を得点に結びつけ、守りを固めることで勝利を目指す―。そうした目指すべき戦い方を打ち出したのが「Hit! Foot! Get!」だった。

●ライオンズ新時代の到来を告げたシーズン200盗塁

実際このスローガンのとおり、97年のライオンズは走りに走った。チームの盗塁数は、前年から51個増えてシーズン200に到達。リーグ2位だったマリーンズに83もの大差を付ける、ぶっち切りのトップとなった。

このシーズン200盗塁はライオンズの球団歴代最多記録であり、NPBで200盗塁したチームは、この年のライオンズが最後になっている。

この「Hit! Foot! Get!」の中心にいたのが、松井稼頭央その人である。背番号を「32」から「7」に変更したこのシーズン、ショートで135試合全試合にフルイニング出場。プロ4年目で初となるシーズン打率3割を達成する。

走るほうでは自身のキャリア最多にして、ライオンズの球団記録となるシーズン62盗塁を記録。初めて盗塁王のタイトルを獲得して、3年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献したのだった(ちなみにオールスターゲームで、スワローズ古田敦也相手に1試合4盗塁を決めてみせたのも、この97年だ)。

1997年 松井稼頭央 打撃成績 (丸数字はリーグ内順位)

この年のライオンズは、松井と1、2、3番の上位打線でトリオを組んだ大友進、高木大成も、それぞれキャリア最多となる盗塁を成功させるなど、じつに7人もの選手が二桁盗塁をマークした。

河田雄祐、清水雅治といったバイ・プレイヤーが揃って15回盗塁を企図して13回成功と高い成功率を誇り、「マルちゃん」の愛称で人気だった体重100kgを超える巨漢のドミンゴ・マルティネスが3度走って3度盗塁を成功させるなど、チーム全体に次の塁を貪欲に狙う意識が浸透していた。

1997年 ライオンズ盗塁数

この意識の高さは、盗塁以外の走塁面にも表れており、二塁打、三塁打の数も急増。前年と較べて本塁打の数は減ったものの、得点力は大幅にアップした。

また、機動力を全面に押し出した攻撃が、相手バッテリーの警戒を誘い、重圧となったからなのか。この97年シーズンは、鈴木健、松井稼頭央、マルティネス、佐々木誠の4選手が、パ・リーグの打撃ベストテンにランクイン。盗塁数同様、ライオンズ球団歴代最高のチーム打率.281を記録したのだ。

1996年、97年、2022年 ライオンズ チーム打撃成績

●期待される「Hit! Foot! Get!」の再現

この「Hit! Foot! Get!」のスローガンは、翌年以降も「夢へ(98年)」「栄光へ(99年)」といったサブタイトルとともに、東尾体制最終年となる2001年まで、5年連続で使用されていくことになる。

今回の「走魂」には、松井新監督自身が球界のスーパースターへの道を駆け上がり、ライオンズの新しい時代を切り拓いた97年のイメージが、反映されているのかもしれない。

あれから26年。「走魂」を宿したライオンズの選手たちがグラウンドを駈けまわり、「Hit! Foot! Get!」を再現してくれることを期待したい。


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