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ハノイから世界を斬る1:在越日系企業の海外駐在員制度の終焉か?今後のベトナムでのビジネスモデルは?

 コロナ後、人材獲得のために契約形態として新たな制度化を取り込んでいる大手企業が多くなっている。海外人財においても同様である。駐在員の帰任問題(帰任後、退職してしまうケース)や海外人材不足の問題がある。今回は、このニュースを踏まえて、日系企業の駐在員制度の見直しから海外のビジネスモデルの今後の展望を予想したい。

コロナ過での現地日本人の出来事

 ベトナムは、いわゆる厳格ロックダウンが起きた世界の国の一つ。加えて、ワクチン確保に遅れた国である。その結果、現地日本人の不幸を目の前にしてきた。不幸なニュースのみならず、タイを中心に東南アジアにおいては、日本人の失態もニュース沙汰になっていた。もちろん、ベトナムにおいても同様である。

コンプライアンス強化と駐在員制度の見直し

 いわゆる法化社会の中で、コンプライアンス強化の流れは必然であろう。この流れの中で、賄賂文化が色濃く残っているベトナムにおいては、内部告発?から明らかになった公務員への賄賂報道が流され始めた。何千万円という金額の問題か?と思いきや、最近では、何百万円のケースも発生している。今後は、内部告発があれば、何十万円でもニュース沙汰になる時代が来るのかもしれない。

外国人の強制社会保険料値上げ

 加えて、2022年以降、外国人労働者は年金・死亡手当基金への加入が義務付けられた。年金・死亡手当基金の料率は、会社負担14%、本人負担8%の計22%。これにより、2022年以降は、外国人労働者の強制社会保険の料率が、会社負担20.5%、本人負担9.5%の計30%となる。以前は、計8%のみだったので、相当の負担額である。

今後の展望:在越日系企業の駐在員はどうなるのか?

 ベトナムは、日本からの出張が比較的簡単にできる地理的なメリットがある。便次第では、日帰りでも可能な距離。
 コンプライアンス強化として、大手企業中心に管理部門スタッフの存在感が高まっている。一方で、営業系及びマーケティング系のトップやマネージャーらの駐在員が減る可能性が高くなるだろう(出張単位に変更)。つまり、様々なリスクを減らすことを重視した企業を中心に、属性として管理部門のエリート女性や管理タイプの駐在員が多くなる可能性がある。
 製造業のトップやマネージャーとの接待ゴルフをする支援会社の姿は、減っていくかもしれないし、もう減ってきているようにも感じる。
 また、20代及び70代以上の労働許可証取得の厳格化の流れもある。20代の採用は、社会経験も少ないためベトナム人採用の優先の動き。70代以上は、保険会社から保険加入の許可が下りなく、労働許可証が取得不可となっている。

海外で日系企業の強み活かせる業界・文化は?そして、勝つためのビジネスモデルは?

 駐在人財の制度を改めることで、「すり合わせの文化」である日系企業の強みが一時的に消える可能性は否めない。欧米企業のビジネスモデルは、FMCG業界を中心にインド人をローカルトップにする組み合わせ文化のビジネスモデルであり英語という武器がある。インド人ネットワークが東南アジアのFMCG業界を牛耳っていると言っても過言ではない日が来るであろう。韓国企業は、別格規模の財閥企業への集中戦略であり、彼らと同じ業界で真正面から戦うのは得策ではない。現地人材獲得の予算は、日系企業が勝てる金額ではない。協業視点が重要であり、日本の商社と韓国財閥のコラボレーションは良く見受けられる(Samsungや新韓銀行など韓国企業の中にも親日系企業が存在する)。

 今後、海外において日系企業の強みが活かせる業界としては、「表の競争力」が強い中国企業・韓国企業のBtoC業界ではなく、「裏の競争力」が強いBtoB業界(素材など)が候補の一つ。元々、BtoC業界中心であったソニーは、BtoBの半導体事業が活発であるし、元々BtoCが強かった故、BtoBtoCの視点を持つことができる日系企業である。今後、「インテル・インサイド」のように「ジャパン・インサイド」という言葉が世界用語として確立してもおかしくない。BtoC業界であれば、健康・食品・ベビー向け・高年齢層向け・職人技術製品などが適しているかと思われる。逆に、マス向けの商材で日本ではブランド力が高いという企業は、ニッチ戦略での戦いがベターであろう。
 企業文化としては、「人を育てる」文化を大切にしている日系企業は、欧米企業及び韓国企業との違いを鮮明に出せる部分である。この部分に、お金以上の価値を感じてくれるベトナム人財は一定数いる。
 また、製造業側で海外に精通した人財を内製化で育てることの限界が出てくる予想が出来るので、日本は「商社」の存在感がより高くなると思われる。加えて、現地に精通している日系プロフェッショナルサービス(弁護士、会計士、ビジネスコンサルタント等)の価値が上がってくるかもしれない。現地でコンペとなれば、ローカル企業との戦いで価格競争で不利ではあるが、日本からの出張者が決裁者であれば、日系プロフェッショナルサービス側のタッチポイントの利点及び日本での信頼度によってローカル企業に勝る可能性が高い。

 チャールズ・ダーウィンの「生き残るのは最も強い者や最も賢い者ではなく、変化に最もうまく対応できる者だ」の名言を最後に残しておきたい。


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