電話。

今夜は、明日からの出張の準備をしなくてはということで頭が一杯で、帰宅後も気ばかり焦り、肝心の作業はなかなか捗っていなかった。

そんなタイミングで貴女からのメール。
お互い電話は好きじゃないから連絡手段はメールを使うことが殆どだ。
電話は問答無用で相手の貴重な時間を支配してしまう事がお互い好きではないのだ。その点、メールなら都合の良い時に読んでくれればいいという共通認識がある。
今までも、職種こそ違え、お互い仕事上の悩み等の相談とか気軽にグチも言い合える仲。
なにやら不穏な気配を感じつつ読み進める。
やはり、なにかひどく落ち込んでいる様子だ。
いつもだったら深夜だろうが直ぐ愛車を飛ばして体一つで駆けつけるんだけど、あいにくと明日は早朝から移動だから、ちょっとキツイ。
スケジュールは知っている筈だし、いつも気遣いしてくれるのに、このタイミングで感情的なメールをしてきたのも気になった。
「さて、どうするか」
と大事なことを考える時は、まずコーヒーを一杯飲むのが私の習慣だ。
「電話してみるかな・・・」
そう思い普段はあまりしない電話をかけてみる。
「ごめんなさい。明日の準備で忙しいはずなのに。ホントは出張から帰ってきてから相談しようと思ってたんだけど。」と、か細い声で謝罪の言葉が聞こえてきた。
「そんな事いいから。まずは話聞くから話してよ」
しばらくの間、ずっと耳をかたむけていた。
そして、自分の気持ちを思い切り吐き出してスッキリしたのか、予想以上に長くなってしまった事に自己嫌悪をおぼえたのか、先程よりはっきりとした口調で謝罪の言葉が聞こえてきた。

「だいたい分かった。とりあえず、出張中も空き時間とかに、俺なりの考えをまとめておくから。そしたら、また連絡するね。それでいい?」
「ありがとう。」という言葉を聞きながら、電話の向こうで何度も頷いている姿が想像できた。
「お互いさまさ。おやすみ。」と返して電話を切った。
さてと、少しでも横になって体を休めようかな。
「あ、まだ準備終わってないや・・・。」と我にかえった。

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