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私にとっての「日本」という海外と、「スタートアップ」という希望

こんにちは。そして一部の方は初めまして。Mariaです。

Twitter: https://twitter.com/wolfmaria07/

私はベンチャー投資という仕事をしています。女性かつ外国籍が珍しい業界であるからかも知れませんが、今まで色んな人に会う度に、「何故日本で、なぜこの仕事をしているのか」と聞かれる事がたくさんありました。長い休みなので、スタートアップ支援をするに至った自分の中の思いを、一度整理して書いてみたいと思いました。

普段は書かない事も赤裸々に書いたので、重い内容、かつ非常に長いノートになっておりますので、心と時間に余裕がある時に読んで頂けたら嬉しいです。笑


国家という枠組みに絶望した幼少期

自分の幼少期を一言であらわすと、「国家という枠組みに絶望した幼少期」になると思う。

会社のプロフィールには「日本で生まれ、韓国やアメリカ・中国で義務教育を受け、ドイツ、イギリスで暮らすなど、様々な時代と文化が自分の中で交差する様な幼少期を過ごして来た。」とそれっぽく書いている。これだとまるで親に恵まれた運の良い幼少期を過ごした人の様に見られるけど、それはある見方では事実であり、別の角度から見ると、事実では無い。

時は、まだまだ孫正義も、BOAも少女時代もBTSも台頭していなかった1990年代前後、韓国人の親の元で、私は日本に生まれた。
韓流がブームになって、K-beautyというものが流行る時代を生きる若い人には想像がつかないかも知れないけど、当時、韓国人というだけで相当いじめにあった。

例えば公園の砂場で遊んでいたら、仲良く遊んでいた子が韓国人という事実を知った途端に、口を聞かなくなり去っていってしまう。砂をかけてきたり、靴を隠されたりするのは日常茶飯事。保育園の先生が自分にだけ冷たかったのを、いまだに覚えてる。

「どうやら、自分はみんなと違うらしい。」

納豆や梅干しが一番の好物で、当時は韓国語が喋れなくても、どうやら世の中的には、どう頑張っても、その中には入れない仕組みの様だった。

仕組みの強さについて学んだのは、その後韓国に行ってからだった。

韓国でも、面白いくらい同じ様な待遇をされた。
日本語の方が上手だったり、日本から来た、と言う事実だけで何も知らない小学校の子供たちは、転校生に対してすぐ敵意を示した。「日本人、早く日本に帰れ」と毎日の様に言われ、先生には色んな細かい理由をつけてよく殴られた。(当時韓国では、先生が生徒を物理的に処罰することが稀な事ではなかった。今は変わっていると思う。)
まだまだ日本に対する反日感情が、今よりも残っていた時代だったと思う。自分は韓国人としても受け入れられなかった。

仕組みを理解するには幼過ぎたけど、その見えない常識やシステムがいかに強力で、社会的に人を殺す事が出来るのかを、とても小さい頃、身を持って知る事が出来た。

幸い、日本とはあまりにも違う韓国のカルチャーに、適応しきれなかったのは自分だけではなかった。母は衝撃を受けたらしく、私が修復不可能に傷つく事を心配し、親戚がいるアメリカにわざわざ留学をさせてくれた。

色んな人種の人がいて、多様性を重視するカルチャーが根付いてる移民の国。一部子供たちは相変わらず、何も知らないまま「中国人!」と差別的な発言をしたり、攻撃をして来たけど、それを「良しとしない」カルチャーが根本にあり、良しとしない大人たちがいたので、だいぶ生きやすかった。

ハンナ・アーレントのいう悪の陳腐さ、はその通りだと思う。悪意を持たず、深く考えずに間違った行動をする人はどこにも必ずいる。ただ、組織としてそれを良いとするか悪いとするかで、被害者の傷は浅くも、消えないくらい深くもなる。と言うことも学んだ。

多様性に対する受容性、人権に対する感受性をアメリカにいた2年でしっかり学べた。それは今でも、人と接する中で揺らぎない自分のプリンシパルであり、1つの自分の強みになっている気がする。

そして中学生の頃は韓国に戻り、無事友達が出来て日々楽しく過ごしていたものの、心の底からは、自分がまるで異邦人の様に感じていた。共感できるのは、クラスメイトよりも古典の中の主人公や、文化や時代と戦った歴史の中の人たちだった。

例えばヘッセの荒野の狼に出てくる、下の箇所が自分はとっても好きだった。

 彼はあるとき、中世におけるいわゆる残虐行為について話しあったあとで、私にこう申しました。
「あの残虐行為は実際は残虐行為ではありません。中世の人間はわれわれの今日の生活の全様式を見たら、残虐なとか、恐るべきとか、野蛮なとかいうどころでなく、嫌煙するでしょう。各時代、各文化、各風俗、各伝統は、それぞれその様式、それにふさわしいやさしさときびしさ、美しさと残虐さを持ち、ある種の悩みを自明のものと考え、ある種の災悪を辛抱強く甘受します。人間の生活がほんとの苦悩、地獄となるのは、二つの時代と二つの文化と宗教とが交差する場合にかぎるのです。古代の人間が中世に生きなければならないとしたら、そのためみじめに窒息したでしょう。同様に野蛮人がわれわれの文明のただ中に生きるとしたら、窒息するにちがいないでしょう。
                  ーヘルマン・ヘッセ 荒野の狼

「人間の生活がほんとの苦悩、地獄となるのは、二つの時代と二つの文化と宗教とが交差する場合にかぎる」ーまさに自分がその二つの時代と二つの文化が交差する場合に一人で生きていると、少し大げさに考えたりした。

10代の頃は、ずっと悶々と悩み続けた。20代になり、インターネットやグローバリゼーションの追い風のおかげで、国家という枠組み自体を気にせず、インフラや秩序として自分も外部世界も認識が変化するようになってから、生きやすさがだいぶ増した。それにしても、自分がこれから住む国を選ばなければならないという問題は、自分の20代前半を大きく支配した。

色んな国で暮らした末にたどり着いた日本は、ー特に今の時代の日本という海外はー良い意味でドライで、その認識を持ったまま過ごしやすい国で、成人になった自分はまるで居場所を見つけた様な気がした。

ただ、ある文化では正しい事ー例えば、物事をズバリいう事は日本ではアグレッシブで時には不適切な事であり、ドイツでは当たり前な事だったりするーは、他の文化では望ましくない事で、正義や常識は文化や組織の数ほど存在する事に早くから気づいていた為、特定の常識や正義、価値観が絶対的なものであると主張される事は、耐えられないと感じてしまう自分がいた。
そしてこんなにも洗脳し難い、すべてのことを疑問に思う習慣を身につけた20代の若者には、天職と思える職場は「大手」や「安定した職場」の中からはなかなか見つけられないものの様に感じた。

ハッカーという希望

「どうしてハッカーは言論の自由を気にするんだろう。私が考える一つの理由は、ソフトウェアの世界では革新が何よりも重要であり、革新と異端は実質的には同じことだからだ。良いハッカーはすべてのことを疑問に思う習慣を身につけている。ーPaul Graham」

初めてポールグラハムの本を読んだ時、孫さんのバイオグラフィーを読んだ時、Facebookのモットーを目にした時、そう、いわゆるハッカーの思想(スタートアップの考え方)に触れた時、「古典の外にも、自分と同じことを考えている人がいる!」と、とてもテンションが高くなったのを覚えている。

そして彼らの言葉が、遠い未来には古典になるに違いないと考えた。
どの時代・文化・地域にも、社会的、文明的課題が山積しているけれど、その中で疑問を持ち、新しい技術や思想で既存のものとぶつかり、人類を前進させてきたのは、今の時代で言えばハッカーであり、昔で言えば思想家や科学者などの一握りの変わり者である、という仮説を自分の中に持つ様になった。

その様なイノベーティブなリーダーは、皆文化的・時代的な常識を超えてその先を見据えた、過去の世界を変えた偉人とも共通した視点で物事を語る。常識的な範疇に収まっておらず、変わっている。
そして「今」の常識や枠組みからはみ出た人が、実績を出すまでにどの様な扱いをされ、どの様な思いをするのか、痛いくらいよく分かっている。その革命的なイノベーターの信念を信じて支える、最初の一人でありたいと強く思った時、自分は一生、ハッカーと共に、スタートアップの近くで生きるのだろうと確信した。

それが自分がスタートアップに魅了され、チャレンジする最初の一人を応援したいと思った理由だった。

Hard Things

そして私は運よくHRから、ベンチャー投資という、全く新しい仕事についた。予想通り、今までの人生を振り返って一番充実していて、生き甲斐を感じている。でも、エリートコースを歩んできていない自分が、投資銀行や外資コンサル出身の人が活躍するイメージのVC業界にジョインする事は、学生時代は想像もしてなかった。もちろん、楽な時間ではなかった。素晴らしい人々に恵まれたありがたい環境ではあったけど、あまりにも自分のバックグラウンドが違っていた。

この長い文章を読んでくれている優しいあなたなら想像できると思う。例えば、あなたが家族を離れて一人海外で仕事をするとする。文化的・言語的ハンデを抱えたまま、同じ性別の戦友がほぼいない業界/職場で、以前やった事ない全く新しい仕事をすることになったとしたら。マイノリティとしてどの様な経験をすることになるのか。どの位の期間で適応して、どういうやり方で、エリートなネイティブやマジョリティに負けないくらい、抜きん出た実績を出せるのか。日々孤独に、悩まないといけないということ。

多分、自分は相当試行錯誤をして、ここには書ききれない位日々もがいている。でも、これからもどんなハードシングズが訪れてもへこたれない自信と覚悟だけはある。

この既存の枠からはみ出てしまった、メインストリームからは程遠い、ある女性の異邦人が、強い想い一つで不可能に見える色んな事を乗り越えて、実績を残す事は、無理ゲーであり、一つの革命だと思う。
私の試行錯誤やチャレンジに、希望を感じてくれる女性や、外国人や、それ以外の全てのマイノリティのアイデンティティを持つ人がもしいるとしたら、自分が感じた希望を伝えられる様に、負けてはいけないと日々思う。

最後に、ある本で紹介されてた、自己実現を叶えた人たちに共通する15個の特徴をマズローがまとめたものを紹介したい。自己実現を叶えた=起業家(イノベーター)ではないけど、相当メインストリームから離れているという点で、共通項があると思う。

1)正確に現実を知覚し、未知や曖昧さを好む。
2)自然・環境・他人を受け入れる受容性がある。
3)行動が自発的かつ自然体で気取りや作為がない。
4)普遍的かつ社会的な課題が興味の中心にある。
5)孤独を好みプライバシーへの欲求が強い。
6)物理的・社会的に外部の環境から独立している。
7)認識が絶えず新鮮で様々なことに感動する。
8)神秘的な体験に価値を感じる。
9)人類全体に対して役に立ちたいと考えてる。
10)少数の人間との深い結びつきを重視する。
11)民主的な性格で他者への偏見が薄い。
12)手段と目的が明確に区別でき、目的を重視する。
13)哲学的で悪意のないユーモアセンスを持つ。
14)健康的な子供に近い創造性と独創性を持つ。
15)特定の文化に組み込まれることに抵抗する。

高次な自己実現を叶えた人が増える事は、世の中がより寛容で偏見のない場所になる事に繋がり、人類の道徳的前進にも繋がる、そんな気もする。

オープンなマインドをもち、従来の不合理な常識を疑い、世の中をより良くするモノや文化を作り出す。そんな希望を作り出している人たちを、枠からはみ出た者として私は一生、全力で応援したい。

そして時代や国家という枠組みを超えた、大きなビジョンを実現するイノベーターを生み出したいと、心から思っている。

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執筆活動頑張ります。

革命を起こしましょう。
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Maria

ベンチャー企業に投資をするファンドで働いてます。Mariaです。資金的支援と経営支援でイノベーターの背中を押すことで、人類を前進させたい、文明と人類の課題の解決に貢献したいと思っている、至って普通のOLです。

VC日記

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コメント4件

長年組織に馴染めずうつ病になってしまった自分ですが勇気をもらいました。
恐らく親子くらい歳が離れてると思いますがw心から感謝します。
ありがとうございます😊
良い記事でした。刺激を受けました。私もKorean born in Japanでした。今は外資コンサルティングをへて、リクルート経営企画と新規事業開発を経て、複数会社を作り、複数は譲渡し、今に至ります。なお、在日韓国人としての経験は非常に今のキャリアに活きています。それはなぜか多面的なモノのみかたをするから。

いじめはなかったですが、子供の頃から『韓国人?韓国語しゃべれないの?では日本人だね』という言葉を100回は聞かれました(笑)そして、その後に外国人や帰国子女の多いコミュニティに入った後には、そういったことを言われなくなりました。

人は『国籍』『外見上の出身地』『思考の様式』『文化、宗教』『利用言語』に無数のパターンがあるわけでないのです。日本人だから日本語がしゃべれる、日本人の顔だから日本国籍ではない(アメリカ国籍である)とか、様々なパターンが無数にあるのです。
(続き)
そして、在日韓国人はそういった無数なパターンがあることの理解する機会と、それらのパターンに無思考無自覚な大多数のかた(もちろん、全員ではない)にくらべて、多面的に物事を考える機会に恵まれていたなと感じています。

そして、プロフェッショナルであるからこそ、案件の検討も執行エグゼキューションも、多面的に考えて進める事が、大事だと思います。

だから、私は『韓国人?韓国語しゃべれないの?では日本人だね』という言葉をたくさん聞いた経験が今のキャリアに活きているのです。人間の一面性だけとらえるこの質問が、逆に私に多面性を見よ、と諭すのです😁
あまりにも境遇が似てて心にきました。
私も思春期は何度か悲しい目にあい、結局その呪縛から解放されたのは大学生の時に行ったシアトルへの交換留学だったと覚えています。

しかし境遇は似ててもアクティブ差が違いますね。
私は最近行きたい業界に転職できたにも関わらず燃え尽き症候群気味です。
良い気付け薬になりました。ありがとうございます。
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