見出し画像

「大衆ビストロ ジルの奇跡」〜スタッフを大事にするから、いいサービスが生まれる。

娘が我が家に来る前、出産を控える妻と「二人の時間も取れなくなるからね」ということで、積極的にデートに出かけていた。

そんな2月の金曜日の夜に、妻が見つけた美味そうな店に足を運んだ。

その名も「大衆ビストロ ジル」。

目黒駅近の人気店なので、行ったことがある人も多いはず。

妻が「ビストロって付く店はだいたい美味い説」という大雑把な仮説をもとに見つけたお店。僕も食べログを見るに「コスパの良い、接客も元気なビストロ」だと予想していた。

しかし、この予想はあまりにも浅いものだった。一般男性(30歳)がお店のサービスに感動して涙ぐむとは…

・・・

金曜日の夜ということで、到着した頃にはすでに満席。店の外にも数組の待ち客がいる状況。

他の店に移ることも考えたが、せっかくだから、ということで僕らも待つことにした。

出産予定日1ヶ月半前でお腹も大きく、誰の目から見ても妊婦だと分かるうちの妻。

店内スタッフの方がそのことにすぐに気づき、即座に椅子やブランケットを用意してくれる。

「よく気が利くお店なのだなぁ」とその対応を見て感心する。

席が空き、店内に案内されるときも、できる限りまわりのお客さんのタバコの煙をかぶらなくて済む奥の席を通してくれた。最初に差し出されるお水も「お水に氷はいれないほうがいいですか?」と妻を気にかけてくれたり。思いやりを感じる接客に、こちらも嬉しくなる。

もちろんご飯も美味しい。人気店になるのも当たり前だと分かる。

しかし「大衆ビストロ ジル」の本領はそんなものではなかった。

メインの料理として、和牛のグリルを頼んだ。

とても美味しいのだけど、若干脂の量が多いお肉だったので、最近胃もたれしやすい我々は4キレぐらいお皿に残した。

そして、そろそろ食後のデザートでも注文しようかというタイミングでスタッフの方が声を掛けてきた。


「こちらのお肉、残されたのはなにか理由がありますか?お口にあいませんでしたか?」


・・・ほうほう。お客さんの行動を観察して、メニュー開発にでも活かすのだろうか。

「美味しかったんですけどちょっと油っこくて、残しちゃいました。下げてもらって大丈夫です」と僕らは伝えて、食べ残した料理を下げてもらった。

皿に残った料理の理由を聞いてくるお店は初めてだったので「謙虚なお店だねぇ」と妻と話していると、その10分後くらいに、僕たちが頼んだ覚えのない料理を先ほどのスタッフの方が運んできた。


「さきほどのお肉を、ちょっとサッパリ目にお料理し直したので、よかったら召し上がってください」


なんと、先ほどの残した4キレのお肉が、菜の花と合わせて炒められ、レモン風味の別な味付けの料理として運ばれてきたのだ。

これには夫婦で度肝を抜かれた。

しかも、とても美味しくて、すぐにペロリと完食。

普通なら、あの4キレのお肉は「残飯」としてゴミ箱直行だっただろう。

しかし、このお店はお客さんに残した理由を聞いた上で、ほんの数分の間に調理人に伝えて、別な料理にアレンジして提供し直してくれたのである。もちろん別料金などない。

流石に、これにはマジで感動してしまった。

そして、驚きと、嬉しさで感動して、その場で涙ぐんでしまった。


ここまでのサービス、1人数万円の高価格帯のレストランなら、わかる。

だけど、ここは食べて飲んでも一人5000円くらいしか行かない庶民派のお店なのだ。しかも、お客さんでごった返している一番忙しい金曜日の夜。

この業態と価格帯で、ここまで細やかなサービスができるお店って存在するのか?

感動的なサービスを受けた瞬間から、僕のマインドは「お客さん」から「経営者」モードに。

「こんなサービスを行える会社はどこだ?並々ならぬ経営努力があるに違いない!」と思って、すかさずスマホを取り出し、運営会社を調べた。


そして「ジリオン」という会社のHPを見つける。

目黒の店舗を1店舗目にしつつ、恵比寿、学芸大学、東京などにも数店舗展開している飲食企業だ。

そして、HPを読み進めると「やはり、理由があった」と思わせる経営指針が書いてあった。

JILLIONが重視するのはCS(顧客満足度)だけではありません。ES(従業員満足度)、FS(家族満足度)も含めた3つの指標においてすべて100点満点を取ること。それがJILLIONの使命だと考えます
JILLIONがやろうとしていることは、果たしてお客様の満足につながることなのか、働いているスタッフたちのやりがいや価値につながることなのか、スタッフの家族や友人、恋人にとってプラスになることなのか。だから、短期で収益を得られるような店や業態作りをすることはありません。中心になるのは、お客様やスタッフの価値につながり、喜んでもらえること。JILLIONで長く働いたスタッフが、サービス業のどんな会社へキャリアップしても活躍できる人間になれているか。料理人なら独立して自分の店を成功させることができる経営者になれているか。飲食業界ではなく、サービス業界の中でポジショニングされる会社。それがJILLIONの描く将来像です。

http://www.bistro-jill.com/company/

これを読んだ瞬間に、二度目の感動をしてしまった。

CS(顧客満足度)、ES(従業員満足度)に加えて「FS(家族満足度)」まで踏み込んでいる。顧客、従業員はもちろんのこと、その従業員の家族、恋人、友人までもを会社が慮っているのである。

社長の他のインタビュー記事を読み「労務管理/従業員育成がおざなりになりやすい飲食業界において、それらを最も重要視している会社」という言葉も見つけた。

会社としてスタッフを大事にしているからこその、あのサービスが生まれるのだ。

従業員が会社から大事にされていなかったら、目の前のお客さんを大事にできるわけがない。

飲食業に関わらず、あらゆる会社に大切なことだと思う。

目先の売上目標や小手先のサービス改善の前に、 どれだけ目の前のスタッフを大事にできているか。

それは何も「ただ優しくする」という意味ではない。

経営者、マネージャーが、現場のスタッフの人としての成長を願いながらサポートをしたり、家族と仕事のバランスを尊重してあげたり。

これらは一朝一夕でできるものではない。経営者の素養や人事制度しかり、組織文化の醸成にも長い年月が必要だろう。

そんなことを「ジリオン」が積み重ねてきたからこそ生み出すことができる「圧倒的なサービス」を目の前にして、僕はひれ伏すしかなかった。

そんなわけで、心も胃も満たされて夫婦デートを終えたのでありました。

いつかジリオンの社長さまにインタビューしたい…

p.s.このお店、毎度ぼくが体験したレベルの感動が必ずあるわけではないと思うので(笑)、まずは気軽な感じでお店にいってみてくださいね。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?