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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」

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最盛期、年間200食ものパンケーキを食べていた、パンケーキのエヴァンジェリスト・トミヤマユキコさんが、いま注目する食文化「ネオ日本食」。ホットケーキ、ナポリタン、オムライス、焼き… もっと読む
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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」

進捗状況のご報告『ネオ日本食ノート』を応援してくださっているみなさま、いつも本当にありがとうございます。
 
 本連載を書籍にまとめるため、noteでの連載回数を減らしつつ、取材を続けているわけですが、今年度は大学講師業がかなり忙しくなってしまい、思うように作業が進んでいません。申しわけない思いでいっぱいですし、わたし自身とても悔しいです……とか言いつつ、すきあらばネオ日本食を食べていますし、先日

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」27

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」27

「ぎょうざの満洲」とネオ日本食をめぐるあれこれ——古市コータローさんインタビュー(後篇)

「ぎょうざの満洲」についてもっと知りたい。そう思って古市コータローさん(THE COLLECTORS)に会いに行ったわけだが、話は満洲から日本の外食産業、フードカルチャーへと広がっていった。B級グルメを好きになって30年はダテじゃない。首がもげるほど頷いたインタビュー後篇をお届けします!

コータローさんの

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」26

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」26

「ぎょうざの満洲」とネオ日本食をめぐるあれこれ——古市コータローさんインタビュー(前篇)

 前回の連載で「ぎょうさの満洲」について書いたが、わたしにとって満洲と言えば、やはり古市コータローさん(THE COLLECTORS)である。コータローさんがいなかったら、満洲との出会いはもっとずっと遅れていたし、ネオ日本食の見取り図も違っていただろう。
 すばらしいギタリストであるのみならず、バンドマン界

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」25

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」25

3割うまい!! とは一体どういうことなのか?――中野「ぎょうざの満洲」

 2017年最後の原稿を「餃子の王将」で締めくくった本連載が2018年最初の原稿で取り上げるのは、「ぎょうざの満洲」である。

 全国に中華料理のチェーン店は数あれど、個人的には、餃子の王将とぎょうざの満洲がツートップだと思う。なぜ餃子推しなのかわからないくらい他のメニューも気合いが入っているし、レストランよりは食堂や居酒屋

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」24

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」24

今日はネオい中華料理縛り――三軒茶屋「餃子の王将」

 中華料理のネオりっぷりについては、もはや説明するまでもないような気がする。ご存じない方のためにいちおう書いておくと、そもそも「中華料理」と「中国料理」は別物。中国料理が日本で独自進化したものを、中華料理と呼んでいるのである。この段階ですでにネオっているわけだが、それだけでは飽き足らないのか、日式中華、町中華といった呼び名まであったりする……日

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」BN

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」BN

1 私が好きな食べ物って「ネオ日本食」なのでは?——平井「ワンモア」のホットケーキ
2 わたしのホームタウン——三軒茶屋「セブン」のオムナポ
3 ネオ日本食の「聖地」——横浜「ホテルニューグランド(ザ・カフェ)」のナポリタン
4 ロメスパとサンドイッチで世界一周ーー大手町「リトル小岩井」 
5 サンドイッチのお花畑かここは?——新宿「サンドイッチハウス メルヘン 髙島屋新宿店」
6 ピザ欲じゃない

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」23

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」23

ネオらせに前のめりなメニューが嬉しい――大井町「東京洋食屋 神田グリル」のハントンライス

 ハントンライスは、石川県金沢市で独自進化した「地方系ネオ日本食」である。金沢に馴染みのないわたしは、はじめハントンライスと言われても、一体なんのライスかわからなかった。ハンガリーの「ハン」とフランス語でマグロを意味する「トン(thon)」を組み合わせた造語だと言われても、やっぱりよくわからない。ハンガリー

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」22

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」22

「お母さん」感あふれまくりのトルコライス――池尻大橋「三好弥」のトルコライス
 
 今回も「大人のお子様ランチ」ことトルコライスを調査したい。というのも、前回取材した奥渋谷「TORICO」のトルコライスがあまりに洗練されていたため、逆にめちゃくちゃ庶民的なトルコライスも食べてみたくなったのだ。まあるいお皿に炭水化物と揚げ物がどっさり載ったトルコライスを、古き良き定食屋って感じのところで食べられたら

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」21

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」21

オクシブで「大人のお子様ランチ」を食べる――渋谷「TORICO」のトルコライス

 トルコライスは、長崎県が生んだワンプレートディッシュである。名前の由来には諸説あるものの(フランス語で「3色」を意味する「トリコロール」が形を変えて「トルコ」になったとか)、トルコとは関係がない。

 基本的な構成は、「何らかのご飯、何らかのスパゲティ、何らかの肉」の3種(ここからトリコロール→トルコ説が出できたの

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」20

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」20

コンビニドリアのベスト3を考える(風邪ひいてるけど)——「セブンイレブン」「ファミリーマート」「ローソン」のドリア

 サイゼリヤのドリアを全種類食べて「しばらくドリアはいいかな〜」と思った矢先に風邪を引いた。寒気がするし、喉も痛い。なにより頭がぼんやりして、仕事にならない。しかし〆切は容赦なくやってくる。というか、この連載の〆切がすぐそこまで迫っていた。こんな体調で、ネオ日本食の取材に行くとか、

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」19

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」19

広がるドリアの世界——「サイゼリヤ 西早稲田店」

 横浜のホテルニューグランドで初代総料理長を務めたサリー・ワイル(1897-1976)は、スパゲッティ・ナポリタンを考案したネオ日本食界の偉人なのだが(詳しくは本連載③をご参照ください)、実は彼発信で広まったネオ日本食がもうひとつある——ドリアだ。

 ドリアはグラタンの親戚っぽいので、同じようにフランスの郷土料理が発祥なのかと思いきや違う。海外

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」18

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」18

 「かつ丼を冷やす」という発想の妙!――渋谷「かつ吉」

 冷やし中華からはじまった、わたしの「冷やしネオ日本食」研究。毎年必ずやってくる暑い夏をどうにかしようとした料理人たちが、めくるめく「冷やしの世界」へ誘ってくれるに違いない……とか思っていたのだが、現実はちょっと違っていた。意外に思うかも知れないが、そもそも冷やしフードって、あまり定番化しないようなのだ。冷やし中華みたいな超ロングベストセラ

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」17

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」17

冷やし中華インスパイア系の冷やし麺を食べに――池尻大橋「鶏舎」「ソウルフードバンコク」

 日本のフード界は夏場に麺を冷やしがち。蕎麦や素麺によって育まれた冷やし麺の文化が「冷やし中華」を生んだ――そのことについては、これまでの取材でよくわかった。しかし、ただ冷やし中華を発明しただけで満足できないのがこのネオらせ大国・ニッポンである。街を歩けば、冷やし中華の応用編みたいなメニューをそこらじゅうで見

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トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」16

トミヤマユキコ「ネオ日本食ノート」16

冷やし中華の元祖を食べる――神保町「揚子江菜館」

 前回、「日本の夏は『冷やし中華はじめました』の張り紙によって始まる」とか書いておいてあれだが、発祥の地とされる店では、一年中冷やし中華が食べられるという。はじめないし、終わらない。そんな冷やし中華もあるのだ。
 神保町駅のA7出口を出て、すずらん通りを入ってすぐのところにその店「揚子江菜館」はある。学生時代から神保町には何度となく来ているし、す

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