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良くないところ。そういうところ。

 バイト先の同学年の女性の先輩と久しぶりにシフトが被ったので、「内定式どうでした?」というような会話をした。自分はまだ催されておらず話せることがなかったので聞き手に回るしかなかったのだけど、先輩は内定式と懇親会の後に飲み会があったらしく、帰宅が終電ギリギリになったと言っていた。本当はすぐ帰るつもりだったけど、インスタのDMで誘われて二次会まで行ったそうな。

 インスタ。

 「あ、もうそういうの交換してんすね」と聞いたら、“偶然席が近かった人と交換したら、そいつが奉行タイプだった”と迷惑そうに言っていた。
 「社会人になってもインスタってみんな続けてくもんなんすかね」と聞いたら、「いや、そうでしょ(意訳)」と言っていた。

 (僕はラジオ垢としてのアカウントしか持っていなくてめんどくさいので)「自分インスタやってないんですけど、やっぱこれからもそんな感じが続きますよね」と言ってみたら、先輩は「インスタやってないの驚きなんだけど」と宣っていた。

 内定式後の飲み会の話をもう少し聞きたかったのでその後も色々聞いてみていたら、「終電ないって言ってんのに、近くで話してた男がめんどくさいこと言ってきて結局家の最寄りまでは電車に乗れなかった」「ワンチャンを狙われてた気がする」と言っていた。その場では言葉を濁しましたが、「性欲が全面に出てる男、マジで見てられなくて恥ずかしい」というようなことを言った。

 その後、先輩が「〇〇さんって女の人に声とかかけられなそうですよね」と聞いてきた。図星でしかないので、「絶対無理ですね〜」と言うしかなかった。「気になる女の人とかいたらどうしてたの」と聞かれ、正直に「なんか、勇気が出るよりも先に好意の方がなくなっちゃってそのままって感じです」と言った。「それは良くないよ」と言われるともう論破なので、「そうっすよね〜」と僕は白旗を挙げた。

 その後一通り先輩の小説みたいな修羅場恋愛エピソードを聞いて、「1人ってやっぱ楽だよね」「恋人いるとめんどくさいことにもなるけどいいこともあるよ」と先輩は最後の方に言っていた。

 その後もう一回インスタの話になり、その流れで僕は「まあ、じゃあ帰りにインスタのアカウント作るとこから始めようと思います」と言った。



 ここで、この日の全部の話をひっくるめて、「じゃあ後でインスタ始めるんでそしたら交換しましょうよ」と言うべきだったのでしょうか。

 インスタやってない。女の人に自分から声をかけれない。正欲に突き動かされてたり、欲が全面に出てる男が恥ずかしい。自分の考え方の芯を貫くなら「インスタ交換しましょうよ」とか言わないでいるのが正解です。ただ、一般的な人はここでどうするのかが気になってしょうがない。



 ちなみに、バイト先の後輩らに「インスタとかやってんすか?」と聞いてみたらやってる率100%でした。
 何人かに「LINEよりインスタの方が交換しやすいのってなんでですか?」とか聞いてみたけど、要約すると「SNSっぽいから」「LINEはハードルが高い」とのことだった。


 僕が他人に「LINE交換しましょう」と言ったことはないと言って良いと思います。
 男子高校だったが故の変な歪みを言い訳にしてるだけですが、なんかの授業で同じグループだった女の人からLINEで「ペアいないから一緒にやろうよ」と誘われた時、「利害が一致してれば異性でも声かけて良いんだ」と妙にしっくりきたことがあります。でも、それを踏まえてもやっぱり自分からは言えなくて、前述のバイト先の先輩にも「LINE知ってた方が絶対良いから交換しようよ」と言われました。何度か自分もそれを言えそうな日が2回くらいあったけどちゃんと言えなかった。あの時学んだはずなのに、別に身についてはなかった。


 こあの日の話の流れで、ちゃんと「じゃあ後でインスタ始めるんでそしたら交換しましょうよ」が言えないのは、もう、自分の人生のハイライトと言って良いと思う。自分の人生をギュギュッとしたら、多分、「じゃあ後でインスタ始めるんでそしたら交換しましょうよ」が言えないような人生ってことで良いと思う。



バイト先の先輩との

「〇〇さんって女の人に声とかかけられなそうですよね」
俺「絶対無理ですね〜」
「気になる女の人とかいたらどうしてたの」
俺「なんか、勇気が出るよりも先に好意の方がなくなっちゃってそのままって感じです」
「それは良くないよ」
俺「そうっすよね〜」

という会話のことを、バイト終わりに酒を飲みながら無駄に考えてみた。
 自分は、「女の人のことを長きにわたって好意的に思うことのなかった人生」を22年弱生きてきて、その記録を伸ばしていく。そういう人生を歩んでいるんだと。
 そう思ったら笑えてきた。
 でもそれを甘んじて受け入れて生きていく。




#390  良くないところ。そういうところ。

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