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貴様本位

 窪美澄さんの『いるいないみらい』という小説を読んだ。(先日読んだ山本文緒さんの『自転しながら公転する』と一緒に買ったもう一冊がこの本でした。)

 子供がいるみらい、いないみらい。それを巡った5編が収録されている。

 自分の意見をどこまで突っ張るか、という問題。一度きりの人生なのだから、自分のやりたいように思うように、と。こと結婚や子供という話になった時にそこを突っ張り”過ぎてしまう”人がいる。許容の姿勢を見せることで満足して、妥協するなんて微塵も考えていない。片側が寄り添ってもことはうまく運ばないんだなと感じました。

 まず子供が欲しいかどうか、そう思う理由は何か。なぜできないのか、それはなぜなのか。非常にセンシティブで言いにくい部分もあって、一歩踏み出し始めてしまっている手前引っ込めにくくもある。
 この小説に書かれていることは誰にでもあり得る話で、それでいて目を背けている。自分はそうはならない、と思い込みたい。そしてそれが自分も例外ではないなと、思わされました。

 読んだことは全く後悔していません。読んで本当によかったです。窪美澄さんの小説の好きなところはここだ、と改めて確認できました。ページ数もあまり多くないのでぜひ。




 話は飛びますが、この世に価値観が合う人なんていません。何かしら違います。ただ一緒な気がしてるだけ、です。盲目的になって勘違いして、そのくせ価値観の違いを理由に使うのはただアホを晒してるだけにしか僕は見えません。違うものは違う。「違う」が理由にできてしまうくらいの気楽な人生がさぞかし羨ましいです。価値観なんてハナから違うという前提で、それを塗り替えてくれる、迎合できると思えるのが理想じゃないですかね。

#335  貴様本位

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