走ってでも行たい場所

 タイトルに押し込むと長すぎるので短縮してしまいましたが、正確に言うと「走ってでもいいから早く行きたい場所」は、いつ頃からなくなってしまったんでしょうか。
バイクや車を乗り回している他の同年代の大学生のことは知らんが、今でも徒歩移動を主としている側からするとこれは割と身近に感じられる問題である。

「学校終わったら俺ん家集合な!」

”帰りの会”の後にそう呼びかけられ、「一番に家に着いてやろう」「もう来たの?って言わせてやろう」と意気込んで全力で走って帰っていた頃があった。
家に着くなりランドセルをリビングにほっぽり投げ、お菓子一袋と携帯ゲームを携えて自転車を飛ばした。
見慣れた街の見慣れた道を駆け抜けて行く。
通学路を逆走していく僕に「お前帰るの早っ」と投げかけてくる友達の声が聞こえる。

そこまでしてでも、友達の家に早く行きたかった。

走ることもめっきりなくなった。
するとしても、講義開始時刻に遅れそうな時にする小走りが限度だろう。

その場に向かうことにワクワクを感じるものであれば、好きなアーティストのライブや番組のイベントなどが浮かんでくるが、言いたいのはそういうこととは違う。
「すでにお金を払っている」という事実と、「誰のためでもなく、ライブを見てその間だけ全てを忘れて熱中したい自分のため」という根本の欲がそこにはある。
あの頃はそんな邪念もなくもっとピュアな動機を抱えていたと思う。


「走ってでもいいから早く行きたい場所」って、今後の人生で復活してくるんですかね?

多分、しないと思います。


#281  走ってでも行たい場所

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