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書道家がおくる異世界書道ファンタジー 『書道がやりたいだけなのに!』 週刊少年マガジン原作大賞 【企画書部門】

タイトル『書道がやりたいだけなのに!』


〈キャッチコピー〉

書道がやりたいだけなのに、なぜかことごとく魔法になって――芸術禁止の国で弟を探す、異世界書道ファンタジー!

(50/50)

〈あらすじ〉

 書道家を志す明るい青年、伊墨いずみ

 彼は双子の弟の学費のためにバイトを掛け持ちしていたが、そこで書道家の命である右腕を負傷。
 弟と口論になっている間に、異世界に召喚されてしまう――なんと『食材』として。

 そこは悪魔の住む魔界。
「芸術は犯罪」として禁止された国であり、芸術家はアトリエを爆破され投獄される恐ろしい所。

 召喚後、右腕が治ったことに歓喜するが、一緒に居たはずの弟が居ない。
『食材しか召喚できない』ポンコツ召喚士は「どこかに落として」しまったという。
 
 伊墨の書道を見た悪魔は、なぜか『残虐な呪術師』と勘違いして恐怖する。

 書道がやりたいだけの伊墨が、
 
弟を探しながら筆一本で世界を救う、異世界書道ファンタジー。 

(300/300)

〈第1話のストーリー  (要約) 〉


 書道家である十八歳の青年・白夜伊墨びゃくやいずみ
 牢獄に入れられた彼は、涙目で引きつった笑みを浮かべて震えていた。

 目の前には恐ろしい悪魔が仁王立ちだ。

「藝術はわれらを堕落させる! 汚らわしい藝術家は獄中で一生を終えるのだ! 

 しかし人間、貴様はすぐ出してやる。

 なぜなら……貴様は今夜の晩餐に並ぶからだ。
 よかったな人間、はっはっは!」


 伊墨には双子の弟・幻弥きょうやがいる。
 高校卒業後、両親を突然亡くし、伊墨は進学を辞退。

 医学部に進む自慢の弟の学費を稼ぐため、工事現場でバイトを掛け持ちしつつ、持ち前の明るさで夢だった書道家としての活動も続ける。

 弟との仲がなぜか拗れてしまったことが悩みの種で、弟が昔くれた筆ペンを常に持ち歩く。

 ある日、工事現場で先輩をかばいケガを負う。書道の作品依頼が来たところへ、右腕を骨折。

 幻弥が駆けつけ、口論になる中、突然魔法陣が現れて二人は異世界に飛ばされる。
 時空を渡る間、伊墨の首根っこを掴んでいた幻弥に「離せ」と反抗。
 異世界に着いたとき、幻弥はいなかった。

 
「あれっ? おいしい食材を二つも呼び出したはずなのに。もしかして、君……人間?」
 伊墨を呼び出したのは、召喚士の少女・アトラ。
 食べ物しか召喚できない残念な召喚士であり、伊墨は『食材』として魔界へ召喚された。悪魔にとって人間は食材らしい。

 年齢がやや若返り、右手の骨折も治っていた。
 書道ができると喜んだが、弟が居ない事に気付き、アトラを問い詰めると。
「ごめんね、落としちゃったかも!」
 
 弟を探そうと、伊墨は弟の似顔絵を描き始める。
 すると、なぜかアトラは極端に焦り、すぐに消せと詰め寄る。
 
 そのとき「魔界藝術犯罪取締局」の職員が現れた。
 魔界は「藝術=犯罪」として取り締られる世界だった。なぜか『書く』藝術だけが禁止だという。

 投獄され、伊墨たちは獄中で目を覚ます。

 弟とはぐれた事に責任を感じつつ、弟との口論を思い出し、モヤモヤを隠せない。
 アトラの制止を無視して、牢の壁にぶつけるように毛筆で文字を書く。
 芸術は爆発、という師匠の言葉を思い出す。
 召喚時に掴んでいた筆と、牢のバケツにあった赤黒い液体を使い、大きく「爆」を二つ書くと、スッキリと満足気だ。上手な方を丸で囲う。

 するとその文字が光り、文字部分が壁ごと爆発。
 驚きつつも二人は脱獄する。


 脱獄後の現場。
 藝術犯罪取締局の局員は、なぜか震え出し、絶句する。
「今すぐ局長に連絡しなくては!」

〈第2話以降のストーリー  (要約)〉

 魔界藝術犯罪取締局の職員である悪魔は、
 脱獄現場を見て驚愕していた。

「用いられたインクは魔族の血、この荒々しい文字……。
これは呪術魔法に違いない! 

 あの者は呪術師だったのか? すぐに連行しろ!
 いや……丁重にお連れするのだ」


 外に出た伊墨は、幻弥を探したいとアトラに言う。
 しかしどこにいるのか見当もつかない。

 アトラはさっきの魔法は何だったのか、あれは藝術ではない、と問い詰める。
 伊墨は普段は明るく、よく笑う、やや天然の上品な顔をした男子だが、書道のことでは人が変わるため「書道も藝術だよ! 今から教えてあげ……」と言い返し、アトラに口を塞がれる。

 辺りを歩く悪魔たちの注目を集め、また逃げる羽目になり、アトラに叱られて反省する。

 お腹が空くと、アトラが食材を召喚した。
 しかしなんと、アトラは食材を出せても料理ができない悪魔だった。

「火があれば、何か作ってみるよ」と言う。
 しかし、アトラが指先から小さな火を出すと、「プシュ……」と情けない音を出して一瞬で消えてしまった。

「わ、わたしは召喚士だからね、一般的な魔法は専門外というか! あっ、それとこの食材は高級なんだけど確か、一部に毒があるね。致死性の」

「何でそんなの出すんだよ? 困ったな、ほかに食材は……」

「ほかに食材……」
 アトラが伊墨をじっと見る。
 その目が危険だったので、伊墨は焦って話題を変えた。

 近くの酒場で食材を提供することで、料理を無料で食べられることになった。アトラの出した食材は高価なものらしく、シェフからは喜ばれた。
 
 そもそもなぜ自分たちを召喚したのかを尋ねると、アトラは「藝術が違法だっていう法律を変えたくて、旅をしていた」と言う。旅の途中でお腹が空いて、魔王を倒せるくらい、強くなれる食材がほしい、と思いながら召喚したのだという。

 すると、なぜか、「悪魔よりずっと弱い生物」だとされる人間を召喚してしまったらしい。
 魔界で人間を見たことのある者はほぼ居ないらしく、周りにいる悪魔たちも、伊墨が人間だとは気付いていないはずだという。
 牢獄で伊墨が人間であるとバレたのは捕えられた時に身体検査をされたからで、人間だということは秘密にしろと言われた。

 アトラは打ち明ける。
 自分の妹が、絵を描いたことで、取締局に不当に殺されてしまったこと。
「ただ絵が好きなだけだったのに……! 好きなものを自由に表現できる世界に変えたいの。ねえ、伊墨。あんな魔法が使えるんなら、一緒に世界を変えない?」

 伊墨は気の毒に思うが、過去を思い返して自信を無くす。

 工事現場で先輩を助けようとして、大切な右手を失いかけたこと。
 弟のために働いているのに、駆けつけた弟からは「余計な真似をするな」と本気で怒られたこと。

「気の毒だけど……おれは自分の弟一人助けられないような、ちっぽけな人間だ。昔から俺よりずっと優秀だった弟なら、わからないけど……。 

 魔界の法律を変えるなんて、できっこないよ。おれはただの駆け出しの書道家だし、さっきの壁のことは偶然だ」

 そのとき、酒場でトラブルが起きる。床に手をつき、客のこぼした酒を雑巾で拭いている紳士的な悪魔がいた。
 アトラが言うには、あの紳士も元は有名な画家だったが、五年前に『藝術が違法』となって職を失ったのだという。

 しかしそこへ、酔った大柄な客が、床を拭いている紳士に躓く。「元・芸術家風情が」と怒って、床を拭く紳士の右手を踏みつけようとした。

 瞬間、自分の右手を骨折した時の光景が頭をよぎった。

 思わず紳士の前に両手を広げて立ちふさがっていた。

「手は! アーティストの手は……踏んじゃいけないと、おも……」
 チラリと目を開けてみると、激怒した悪魔が見えて、後悔している間に胸倉をつかまれ、震えあがる。

 その時、「見つけたぞ!」と声がした。
 藝術犯罪取締局職員が五名現れる。

 伊墨を掴み上げていた悪魔が嬉々として伊墨を差し出そうとする。

 アワアワと焦るアトラは何もできない。

「一緒に来て頂きましょうか」
 伊墨は、今度は一人きりで連行された。


 たどり着いた先は、「藝術犯罪取締局 支局」の建物の中。
 局長を前に、伊墨は恐怖に震える。

 すると局長は、「待っておりました、呪術師様」と、伊墨の前に腰をかがめて手を取ったのだ。

「……は?」

 局長は伊墨が脱獄した牢を見て、分析した局員の話を回想する。

 どうやら、おかしな勘違いにより、伊墨は『失われた古代魔法を操る恐ろしく強い呪術師』だと思われているようだった。ちなみに局長は、伊墨が人間だとは知らないらしい。

「いや、我々は当初、あなたがあの悪しきアーティストだと思ってしまいましてね。しかし……あの牢から脱獄した手腕、お見事でした! 上品な顔をされながら、相当強い悪魔でいらっしゃるのですね!

 あなた様が使われた魔法は特別なもの、それも古代の呪術とお見受けする! 魔界における呪術は魔法の上位にあたり、使える方は大変貴重です。

 いや、申し訳なかった! アーティストなどと勘違いしたが、あなたは全く! アーティストなどではない。壁の呪文はまさに藝術とは程遠い! 大変失礼しました」

 伊墨の雰囲気が黒く変わった。

「藝術とは程遠い……僕のは……アートじゃないと……」

 そこまで言われては、師範を取りいくつかの書道大会で優勝した伊墨のプライドが許さない。

――見て判断してもらおう。

 局長が飲んでいたワイングラスを奪い、中身のドロドロした紫色の液体に筆をつけると、伊墨は局員の羽織っていたマントを「お借りしますよ」とはぎ取って、『龍』という字を書き始めた。

「できた! なかなかいい作品じゃ……」
 
 マントを広げ、自分でその出来に満足した伊墨は、純粋にニコッと笑ってそのマントを局長に見せ、ポンと手で叩いた。

 その途端。

 『龍』の字が青白く光る。
 ゴオ……!
 と音を立て、文字から龍が飛び出し、火を噴いた。

「あ、……あれ?」
 
 驚いたのは伊墨だ。

 局長はとっさに防御魔法を展開したものの、それでも体が真っ黒だ。

 マントをはぎ取られた悪魔が、勘違いをして身を震わせる。
――ひいいい! きょ、局長ほどの位の悪魔を一撃で。悪魔の中の悪魔だ……しかも、あんな恐ろしい呪術を『作品』と呼んで、笑っているだなんて……。

 身体中の煤を払い、咳払いをしながら、局長は伊墨に「魔界の魔術学院に通ってくれ」と言う。
 呪術や、ある程度のレベルの魔法を使える者は入学が必須なのだそうだ。さらに「従者も連れていっていい」という。

 自分は人間だから行きたくない、と言おうとしたが、人間、という言葉を聞いた局長の目があまりにも恐ろしく光ったため、やめることにした。

 伊墨は「従者ではないが学院に通わせたい人がいる」と言う。幻弥のことを話すと、弟であれば問題ないという。だが、行方不明だと話すと、見つけるのは非常に困難だと言われてしまう。

「ご存知の通り、我々悪魔は自らの利益や興味のないことへの関心が薄い。他人の行方不明者を見かけたところで、わざわざ手を貸す者などほぼ居ないでしょう」

 伊墨は弟を、できる限り早く、自分の手で見つけ出そうと決める。

 こわがる伊墨は悪魔の魔法学院へ入れられる。
 しかし、学院でアトラと再会。「伊墨が連れ去られても何もできなかったことを悔しく感じ、法律を変えるためにも強くなると決めた」のだという。

 勘違いを重ねつつ、
 伊墨は隙を見ては学院を抜け出して、
 筆一本と、ダメな召喚士と共に、喧嘩別れした双子の弟を探して旅をする。

 


以上


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