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伊藤つかさ 「クレッシェンド」(1984)

子役出身で、金八先生にも出演されていたとか。
年齢的な理由で夜の歌番組に出なかったのも記憶に残っています。おかげで「少女人形」をフルコーラスで聴くことは当時なかったと思います。
このアルバムは作家陣も豪華ですし、全体的に良作揃いの名盤ではないでしょうか。


1.「そよ風のスクランブル」

久しぶりの、好きだった人との再会。学生時代よりどこか大人びて見える相手にドキドキする気持ち。「焦る焦る焦ってしまう」 の部分、音楽で気持ちを表すってこういうのをいうんだな!と実感できます。心の中では挙動不審になりながらも、何ともありませんけどー?という顔をしてエスプレッソ飲む。かわいいですね。

2.「もう野ウサギじゃない」

この時期にしてはタイトルが攻めてる感じです。
避暑地の街で好きな人が働くホテルに泊まりに行く。
地元を離れ、ちょっと大胆な気持ちになったりもして。
「私はもう野ウサギじゃない」とは、これから積極的に迫っていくという決意なんでしょうか。
曲調は切ない雰囲気なのですが、さわやかな春の空気とともに恋のゆくえを妄想させますね。

3.「若葉のころ」

透明感ある歌声が、キラキラした時代を歌う。
音程等少し不安定な部分もありますが、若さを感じられますし清々しさは最高の曲だと思います。
サビがたいへんいいです。

4.「九月には」

「涙のTシャツ 風に乾く頃」は、過ぎ去ろうとする季節と恋を端的に表している歌詞ですよねー。
激しかった前の恋愛と比べ、9月からは穏やかな気持ちになれるという、優しい希望を感じます。
クラシックっぽい音色が清涼な余韻を残してくれます。

5.「涙のクレッシェンド」

イントロから昭和な雰囲気のアンニュイなバラードで、我々世代にはしっくりきますね。
それもそのはず、シングル曲でした。
初めての恋人と思っていた人から別れを告げられた悲しさを歌っています。
この曲は歌唱が安定しており、じっくり味わって聴けます。

6.「Love Processor」

ビッグバンド風というんでしょうか、ジャズっぽい管楽器がノリノリのポップな曲調。
ピンクのパソコンで情報をつかんで、彼のことをつかまえちゃうぞ☆てな感じの内容ですが当時パソコンってどんな存在だったのかなあ。
最新テクノロジーを使っても、恋はなかなか作戦どおりにいかないのです。

7.「緩いカレッジリング」

カレッジリングって最近聞きませんね。日本では普通に指輪として出回っていた感じかな?
伴奏がやけに元気あるんだけど失恋の歌なんですよね。相手と少し差のある恋愛を、あきらめの気持ち半分で思い返しているような内容です。

8.「先生のお気に入り」

曲、歌詞ともにたいへんいいです。
長い間想っていた家庭教師の先生が結婚してしまった。優等生ゆえに告白できなかった、という感じでしょうか。可愛がられていた間にできた思い出も、後ではつらいもの。
「先生」と呼びかけるところの声が力強くてハッとします。
勝手に裏切られたような気持ちになり、そんな自分自身に対するいら立ちのようなものすら感じられ、没入感が強いです。

9.「学生通り」

曲のゆっくりしたテンポが、過去を思い出している雰囲気を出してます。
記憶の中の人々は、時間が経ってもあの頃のまま…
歌手というのは巧拙にかかわらず、歌の主人公の姿を聴き手に見せてくれる存在だと感じます。
彼女もそのひとりですね。

10.「クレッシェンド」

イントロから期待させますし、序盤のファルセットにいきなり引き込まれます。
しっとり系の曲かと思いきや転調し、ねえママ教えてよ、と恋バナを要求するファニーな展開に。
子供と大人の境目にいる時期にしか表現できない、浮き立つ気分を歌っています。とはいえ、まだ恋は始まっていない!


こうして並べるとバラエティ豊かな曲ぞろいでした。
アルバムとしては5枚目にあたるのかな?歌い方が、だいぶこなれている感じもします。
伊藤つかささんの持ち味は囁くような可愛い声ですが、さわやかな曲も失恋の曲も彼女がヒロインという強い存在感があるように思います。
サラッと心地よくも聴け、また女優さんらしい表現力を読み取りつつも聴ける楽しい一枚ではないでしょうか。

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