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イヤホンで音楽が聞けない 《音楽と脳疲労》(プログレッシヴ・エッセイ 第1回)

イヤホンで音楽が聞けない。

最初は中学時代に親のいいつけで、
「耳が悪くなるからスピーカーで聞きなさい」
といわれたからだと思う。
が、中学なんて反抗期。
親のいうことなんか聞いていられない。
ウォークマンでイエスを聞きながら自転車に乗っていた。
なお、ウォークマンはカセットで、しかも親のものだった。
スネカジリのいくじなし反抗期である。

大学1年の頃、単身で1週間ニューヨークに滞在した。
毎日タワレコに行ってはCDを購入し、ずっと聞く。
気に入ったフレーズが出てきたらその場でしゃがみ込み聞き痴れる。
ハーレム近くを歩いていても、地下鉄の中でも、飛行機の中でもずっと聞いていた。
が、帰ってきてふと気がついた。
ニューヨークでの思い出はCDを聞いていることのみーーということを。

それからだろうか、徐々にイヤホンで音楽を聞かなくなっていった。
iPodが発売されても買わなかったし、今はスマホ用のイヤホンすら持っていない。

理由は2つある。
1つは風景・状況を感受できなくなるから。
音も風景・状況にとって大切なパーツであり、それを遮断するとニューヨークの思い出のように腑抜けた記憶になってしまうのだ。
もう1つはとにかく疲れるから。
音楽に集中してしまうために周りに対して注意散漫になり、なおのこと注意を払わなければならなくなる。


新聞に面白い記事が。

「脳疲労で認知症の可能性、集中と分散をバランスよく行ない予防を」

「集中」行為の一つに「好きな音楽を聞く」があった。
脳疲労していたのか。

では「分散」行為には何があるのか。
「過去の記憶を思い返す」
――中学の反抗期の頃、何やっていたっけか?
思い出せない……。

今日もまた、音楽を聞きすぎてしまったのかもしれない。

 

【参考資料】

「日本経済新聞」2023/1/17夕刊

「シニアサポーター 認知症の予防につながる生活習慣は」

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