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エポニムって知ってます?

私は、ときどき、怪しげな数学イラストを描いています。

以前、ねこが「るんげくった!」と叫んでいる、とても怪しげなイラストを描いたんですが、「これって、肖像権か何かを侵害しているのではないだろうか」と心配になりました。

上記の文章は背景知識がないと、何もわからないと思うので、説明します。

常微分方程式の数値解法として「ルンゲ=クッタ法」というものが存在しています。この名称は、カール・ルンゲとマルティン・クッタという2人の数学者の名前が由来となっています。

つまり、お笑い芸人「おぎやはぎ」さんのコンビ名と同様の形式です。

ということは、ねこが「るんげくった!」と叫んでいるイラストは、「おぎやはぎ!」と叫んでいるのと同様ではないだろうか、と思ったのです。

芸人、映画監督である北野武さんには、女子体操選手のナディア・コマネチさんを由来とした「コマネチ」というギャグがあります。このギャグの存在に気づいたコマネチさんに対し、北野武さんは肖像権使用料200万円を支払ったことがあるのだそうです。

こういった事実を聞くと、「るんげくった!」にも、何か問題が発生しそうな予感がします。

しかし、そもそも「ルンゲクッタ」という言葉は、「おぎやはぎ」のようなユニット名ではなく、「コマネチ」のように個人を指す名前でもなく、一般的には「常微分方程式の数値解法」として使用されている言葉であると認識しています。

もしも、「ルンゲクッタ」という言葉を使ってはいけない場合、レントゲン(物理学者ヴェルヘルム・レントゲンの名前が由来)など、さまざまな言葉が自由に使えなくなることでしょう。

また、素人調べですが、数学の公式や定理、数学的事実などは、著作権はないと考えられているそうです。万が一、仮に著作権が存在していたとしても、ルンゲさんは約100年前、クッタさんは約80年前に亡くなっていることから、著作権は切れているだろう、と予想しています。
※素人調べなので、真に受けないでください。

そんな背景を考慮すると、「恐らく、『るんげくった!』は問題ないだろう」と思いましたが、法律の専門家に聞いてみない限りは、なんとも言えません。私は「るんげくった!」で、身を滅ぼすのでしょうか。

もしも、私のマイナーなイラストである「るんげくった!」が問題となるような事態があれば、それより前に、お笑い芸人の「オードリー」さんや「アインシュタイン」さんのコンビ名の方が先に、注目されることでしょう。

エポニム

「ルンゲクッタ」や「レントゲン」など、人名を由来とする言葉は「エポニム」と呼ばれているのだそうです。

恥ずかしながら、知りませんでした。

例えば「カーディガン」「サックス」「友禅」なども、該当するそうです。

確かに、上記の言葉を使うとき、人名として使用する機会は、あまりないですよね。

数学には「フェルマーの最終定理」「ガウス分布」「ガロア理論」「フーリエ解析」「アーベル群」など、挙げればキリがないほど、エポニムが存在しています。とはいえ、通常使うときは「〇〇理論」や「〇〇の定理」など、何かしらの言葉を続けることが多いと思います。

ジャーゴンだと思いますが、口頭では「$${\mathbb{Q}}$$ 上ガロアだから~」という言葉を聞いたり、私自身も言ったりしたことがあります。

その他にも、数学書の名前を、著者名だけで表現することも、少なくないと感じます。例えば、「楕円曲線論入門」を「シルヴァーマン、テイト」と呼ぶ人が多いですよね。

数学以外の分野でも、エポニムはさまざまあると思うので、探してみようと思いました。

そういえば、「お互いに勘違いしたまま、話が進行してしまうこと」を、「アンジャッシュ状態」や「アンジャッシュしてる」と言うことがありますが、これも100年後くらいに、エポニムとなっていたら、面白いですね。

参考文献

・諸外国における保護期間に関する議論の動向 | 文部科学省

・塾におけるテキストと著作権について | 牛田特許商標事務所

・たけし、コマネチさんに200万円支払っていた「気付きやがって」 | サンスポ