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『雌蛇の罠&女豹の恩讐を振り返る』 (23)男が女に負けるのって何故屈辱なの?

エキシビションとはいえ、プロでキャリアを積む男子キックボクサーを、当時中学2年14才の少女がリングに沈めてしまった光景はあまりにも衝撃的であった。

あれから2年、、天海瞳は高校1年の16才になっていた。NLFSの練習生はその技量に応じて16〜18で正式デビューさせていた。今回が正式な瞳のプロデビュー戦である。
相手は梶村誠。20才の若者で、彼も又デビュー戦となる。梶村は子どもの頃からキックボクサーに憧れ必死に努力し目指してきた。その努力は実り、この日、念願のプロデビュー戦を迎えたのだ。
しかし、相手はまだ高校1年のムエタイ少女であり、その少女は2年前にエキシビションながら男子キックボクサーにKO勝ちしていることは知っていた。最初は女子選手と戦うことに難色を示していたが、新人がジムの方針に従わないわけにはいかない。彼は渋々ながらも応じた。

梶村誠はどうしても、デビュー戦の相手が女子選手だと云うことを、彼のデビュー戦を楽しみにしてきた両親に言うことは出来なかった。そんな両親をリングサイドに招いたのだが、選手紹介の時、息子の相手が女の子であることを知ると目を丸くしている。梶村はこんな父と母の前で女の子に負けてしまう不様な姿は絶対見せられないと思っていた。子どもの頃から、この日の為に必死に頑張ってきたのだから。
試合は55㎏以下級、3分3R、キックボクシングルールだが、肘、首相撲からの膝も認められている。ゴングは鳴った。
女子には絶対に負けられないというプレッシャーなのか? 動きの鈍い梶村誠に襲いかかる天才ムエタイ少女、天海瞳。

この試合の模様は本編『女豹の恩讐』
(41)残酷な光景。にあります。

瞳の気迫と集中力は尋常ではない。
プレッシャーで緊張している相手なんかお構いなしにゴングと同時に攻め立てるとあっという間にコーナーに追い詰めた。
ジャブ、ストレート、アッパー、多彩なパンチから強烈なローキック。防戦一方の梶村も何とか応戦しようと前に出ると、そこへカウンター気味の肘が待っていた。梶村は眉間を割り流血。
そこでレフェリーが大きく手を振り試合ストップ。梶村誠はそのままレフェリーにもたれかかるようにして倒れ込んだ。
開始早々僅か53秒、梶村は女子選手に屈辱の秒殺TKO負けを喫してしまった。

何という残酷な光景だろうか?

屈辱の梶村誠。
彼は子どもの頃からキックボクサーになりたくて必死に頑張り夢を果たしたのだ。
そのデビュー戦で、自分より4つも年下の少女相手に何も出来ず秒殺KO負け。リングサイドでは息子のデビュー戦を楽しみにして
いた父と母が見ている。そんな両親の前で女の子相手に血海に沈んだのだ。

かつて、堂島源太郎は妻や子の見ている前で女子格闘家(NOZOMI)に倒された。男である自分が少女に首を絞め上げられ無抵抗になっている姿を家族に見られている。
どんなに屈辱だっただろうか?
 これは見ている家族だって同じことだ。
特に父から “男は強くあらねばならない” と、強く言い聞かされてきた息子の龍太にしてみれば、一生を左右しかねない大変なトラウマになったことは想像できる。

梶村誠のキックボクサー人生は、その後どうなったのだろうか? 女子に敗れた屈辱をバネに頑張っていれば良いのだが、、。
女子高生選手相手に為す術なく倒されてしまったのだから自信喪失して当たり前。その悪夢から立ち直るのは容易ではない。

NOZOMIの提唱する『格闘技ジェンダーレス』という考え方は果して残酷なのか?
それは、所謂フェミニスト視点からの考え方なのだが、女性であるNOZOMIには女に負けてしまった男の屈辱は理解出来ない。
家族の前でそのお父さんの首を無慈悲に絞め上げる。自分の門下生(天海瞳)は、前途ある若者の夢をその両親が見ている前で打ち砕いた。心が痛まないのだろうか? 彼らの人生を思えばあまりにもむごい。

否、そういう社会通念がおかしいのか?

”男が女に負けるのって何で屈辱なの? 男も女も関係ない。そんなの長い歴史の中で虐げられてきた女性の苦悩に比べれば取るに足らないこと。女が男に勝っても違和感のない世の中にならないと、男性だって変なプレッシャーがあって大変でしょう? 私は格闘技を通じてそれを訴える“


現実にはこんなことあり得ないですよね?
小学生〜中学低学年レベルや、成人でもトップ女子vs並男子なら、女子が勝つことも珍しくないでしょうが、NOZOMI云うところの「格闘技ジェンダー・レス」は現実的ではないと思います。男女間での平等と区別は分けて考えるべきか否か? それに “女に負けたら恥ずかしい” という気持ちは男性側の女性蔑視の気持ちから発しているのは間違いないと思われますが、実際どうなんでしょうね? いくら男女平等の世の中になってもそれは無くならないと感じます。

何度も述べるように、この物語は、女に負けることが悦びであるM性強い私の妄想が生み出したフィクションであります。


閑話休題。

天海瞳、衝撃のデビューから一年後?
高校3年(18才)になった堂島龍太のもとに、
格闘技興行会社Gよりオファーがある。
龍太は高校では柔道で全国大会ベスト8以上の実力をつけ、KG会空手U18でも全国トップクラス。並行して、父の所属していたキックボクシング(格闘技)ジムでは、継父となった今井にキック、岩崎にグラップリングの指導を受けていた。Gからのオファーは、ジムを通じて龍太のもとへきた。遂にプロデビュー。これで、打倒NOZOMIへ一歩近づいたことになる。格闘技オールラウンダーに育った龍太は格闘技関係者の間では少し知られる存在になっていた。

高校生MMA甲子園?
これは、全国から総合格闘技に興味ある高校生8人を一同に会して、ワン・ナイト・トーナメントを行うもの。
(昔、K-1やプライドがやっていたワン・ナイト・トーナメントのようなもの)

優勝するためには、一晩で3人と戦わなければならない過酷なもの。
それでも龍太は自信満々で気合が入る。

「一回戦の相手はNLFS所属で、韓国からやって来た柳紅華。16才少女に決まった」

龍太はそう告げられた。

NLFS所属? 高3年男子の自分が、高1の女の子と戦うのか、、、。

続きます。




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