かなり昔のテレビ番組であり記憶も曖昧なのですが、最後は上四方固めだったと思う。そのまま20秒抑え込めば一本。

稽古とはいえ兄は妹に敗れた。

私は、その妹に抑え込まれ足をバタバタさせている兄の姿を見て、被虐心を刺激されいつまでも残像として残っている。
(この男の子、みんなの見ている前で女の子に負けた。しかも、それが自分の妹なんてどんなに恥ずかしくて屈辱だろう…)

勝負あった後、妹は兄から離れ嬉しそう。
兄はこの事態が信じられないのか？ 両手で顔を覆いしばらく立ち上がれない。
それでも “礼に始まり礼に終わる” 武道であり、終わりの一礼を交わすのだが、嬉しそうな妹とは対象的に兄は顔が真っ赤だ。
両親の元に駆け寄る妹だが、父がその肩をポンと叩くだけで、二人とも複雑な表情をしている。普通なら、年上の男の子から一本を取ったのだから抱き上げて大喜びしてあげたいところ。でも、相手は兄でありこの両親にとっても我が子ですから。

一礼後、顔を真っ赤にした兄が、審判をしていた道場生に何かを訴えている。そのまま道場主の方に駆け寄った。その声は聞こえてこないが、道場主は何かを諭しているのか慰めているのか？ 兄は俯いたまま道場主から離れると道場の片隅で嗚咽。両親と妹の方へは顔も向けない。
ナレーションは、兄は妹ともう一回やらせてくれと懇願したのだが、それは赦されなかったという。一度ならず二度までも妹の内掛けを防ぎ切れず、何度やっても同じ結果になる可能性が高い。これ以上、兄に屈辱感を持たせたくないと判断。

このあとの光景が本当の地獄。

道場の片隅で嗚咽している兄の元へ、妹は恐る恐る近寄っては何か声をかけようとしている。兄は妹を見ると顔を反らし、嗚咽から押し殺したような声で泣き出した。妹が困惑している。自分より絶対的に強かった兄に勝ってしまった妹の戸惑い。
兄も自分より弱く庇護してやる立場だった妹に負けてしまったのだ。兄を泣かせてしまった妹の表情を見て、私は更に被虐心を刺激された。しかし、あの兄の屈辱感を思うと何とも複雑な気分に。

そして、あの信じられない光景が。

母は妹に負けてしまった兄をおもんぱかりどう声をかけていいか？ 複雑な表情をしたまま近寄ることが出来ない。
そこへ負けた兄の方へ父が近寄ると、しばらく泣きじゃくる息子を眺めていたが、徐に残酷な一言を放った。

「なんだ、おまえは、、男のくせに女の子に負けるなんてだらしない奴だ。妹に負けて泣いてるなんて、もう、兄としての資格はないな。恥ずかしい！」

父はそう言うと、慰めもせず兄の頭を小突いて不機嫌そうにその場を離れた。
これ、今の時代(でなくても)では、絶対に言ってはならない一言ですよね？
どんなに傷ついたことか？ 彼の将来はどうなるのか？ その後が気になります。

ナレーションは「頑張れ、負けるな兄！」
そんなような声で終わったと記憶。
何の慰めにもならず違和感がありました。

次回はまた女装に戻り、ある男性にイジメられたSM経験を書こうと考えています。