見出し画像

公認会計士試験 短答合格へ向けた計画を立ててみた

こんにちは。せむです。
今回は10年前の短答合格に至った計画の立て方について書いてみます。

2013年5月短答に不合格。
原因を分析し、計画を立て実行した結果、2013年12月の短答式試験に全国1位で合格。

10年前の話の時点で今の受験環境にそのまま使えるわけではないと思います。
しかしながら、どのような観点から分析し、計画を立てているのかというプロセスの話は一部今の受験勉強にも使えるのではないか、との淡い期待から書いてみます。

本noteは以下の内容を前提として書いていきます。
2023年5月短答式試験の過去問題をベースに2023年12月短答式試験の対策を考えてみます。
最近のテキスト教材などは存じ上げないので、10年前の大原簿記専門学校で使用していた教材をベースにします。

このnoteをたたき台として、今の状況にアップデートしてください。

1.ゴールの設定

公認会計士・監査審査会が公表している「令和5年公認会計士試験受験案内」によると、「短答式試験の合格基準は総点数の70%。そして、その満点の 40% を満たさず、かつ原則として答案提出者の下位から遡って 33% の人数に当たる者と同一の得点比率に満たない者は、不合格とすることができます。」との記載があります。

試験時間及び配点は以下の通りです。
「令和5年公認会計士試験受験案内」より抜粋

足切りがあるので、科目のバランスを考えて得点する必要がありますね。
500点満点中の70%である350点をとるのが合格目標としてのゴールとなります。
70%がボーダーかどうかは実施年度によりますが、暫定的に70%を仮定します。

科目の得意不得意や試験の難易度を無視して全科目バランスよく得点することを目標とすると、財務会計論で140点、管理会計論で70点、監査論で70点、企業法で70点とることが目標となります。
勉強の進捗や自身の得意科目を考慮して企業法で90点を目指し、管理会計論で50点をとる目標などでもいいと思います。

2.リソースの把握

リソースとは勉強に使える時間です。

モデルは10年前である2013年5月当時の私ですが、以下の受験生を想定します。
大学3年生。必修単位を除き、一通り卒業単位取得済み。試験日まで受験に専念できる受験生。短答式試験に4回落ちていることから初学者ではない。

2023年12月10日に短答式試験実施予定であることから、2023年6月5日~2023年12月9日までの188日を勉強に使えます。
1日あたりの勉強時間は簡便的に10時間と仮定します。
リソースとして使える勉強時間は188日×10時間/日=1,880時間となります。

勉強時間の内訳は①講義&復習、②答練&模試、③自習の3つに分けられます。

①講義&復習に要する時間は以下の通り
 企業法の授業15コマ、監査論の講義15コマ、管理会計論の計算講義5コマ、管理会計論の理論講義5コマ、財務会計論の計算講義10コマ、財務会計論の理論15コマ。(正直コマ数覚えていないので適当です。ごめんなさい。)
 合計コマ数は65コマ。倍速視聴で1コマあたり1.5h。復習はその倍の時間として3h。
 講義&復習に要する時間は、65コマ×(1.5h+3h)=292.5h

②答練&模試に要する時間は以下の通り
 企業法:短答答練4回、短答模試1回
  (実施時間1時間で復習は倍の時間を想定で合計3時間)
 監査論:短答答練4回、短答模試1回
  (実施時間1時間で復習は倍の時間を想定で合計3時間)
 管理会計論:ステップ答練10回、短答答練4回、短答模試1回
  (実施時間1時間で復習は倍の時間を想定で合計3時間)
 財務会計論:ステップ答練10回、短答答練4回、短答模試1回
  (ステップ答練は実施時間1時間、短答答練と模試は2時間で復習は倍の時間を想定)

 所要時間はそれぞれ、
 企業法 3時間×5回=15h
 監査論 3時間×5回=15h
 管理会計論 3時間×15回=45h
 財務会計論 (10回×3時間)+(5回×6時間)=60h

 答練&模試に要する時間は(15h+15h+45h+60h)=135h

③自習に使える時間は以下の通り
 使える勉強時間から上記①②を差し引いた時間である。
 使える総勉強時間は1,880時間
 1,880時間はそのまま使わず、0.8を乗じた値を用いる。
 0.8の根拠はないが、管理会計論でいうところの理想水準と実現可能水準の話だと理解頂きたい。人間なので、疲労などで効率が多少落ちる。そのため使える勉強時間にバッファを持たせるのである。これは私の経験からくる0.8である。0.8がいいかどうか各自試して頂きたい。

 バッファを持たせた自習に使える勉強時間は
 ③(1,880h×0.8)ー①292.5hー②135h=1,076.5h

ここで、この1,076.5hに実感がわかなければ簡単な数値を当てはめてみるのがいいだろう。
1科目あたりの時間に換算すると、1,076.5h÷4科目≒269h
企業法を想定すると、講義や答練以外で使える時間であるため、テキストの読み込みに使える時間である。
企業法のテキストが3冊あり、合計ページ数が1,200ページだとする。
1時間で30ページ読めるのであれば、テキストを1周するのに40h(=1,200ページ÷30ページ/h)かかる。
本試験までに269h使えるため、テキストを6.7周(≒269h÷40h/1周)回せることになる。

7回くらいテキスト回せれば、暗記できるのか?
あるいは10回はテキストを回したいのであれば、そもそもの勉強時間が足りないため、勉強時間を増やそうなどと意思決定ができる。
テキストを使った学習では、1回目より2回目以降は慣れの要素も出てくるため、一概に何回回せるか不透明であるものの、計画する上では1つの指標になるだろう。

3.科目の優先順位

ゴールとリソースの把握ができたため、次にやることは、リソースを割く際の優先順位である。
少ない勉強時間でより多く得点することを前提とするならば、配点の高い順に財務会計論が最優先となろう。
次に配点の高さの観点から見ると、管理会計論が1問あたり5点、7点、8点とあり、企業法や監査論の各5点と比較すると優先度を上げたくなる。
しかしながら、時間内に解き切るのが難しいのと勉強にかけた時間がそのまま点数に結び付く可能性を考慮すると、財務会計論の次に企業法、その次に管理会計論。最後は時間をかけてもなかなか点数に結び付きにくい監査論となろう。
これは私なりの優先順位であるため、最新のトレンドを把握している専門学校の講師に相談することをオススメする。
優先順位は 財務会計論>企業法>管理会計論>監査論

4.ゴールから逆算する目線

科目別の具体的な戦略や勉強方法について書く前に、捨てるという感覚を身に着けて頂きたく逆算する目線について触れる。

出題範囲に要旨について」の通り、試験範囲広いですよね。
全科目のテキスト類も数十冊、答練の束もたくさん。
これ全部覚えるのかと絶望とともに圧倒されますよね。
結論から言えば、核となる部分を抑えてしまえば全てを抑える必要はないです。
慣れるまでは中々この感覚が掴めず、私自身苦労しました。
だからこそ、受験期間が長期化し中々合格できない受験生だったのだと思います。

2023年5月の短答式試験を例に見ていきましょう。
解答やランク判定は大原の解答速報を参考にしています。

ABランクのみ正答した場合の科目別の点数は以下の通りです。
企業法:75点
管理会計論:79点
監査論:95点
財務会計論:172点
 合計 421点(84.2%)

Cランク捨てても十分合格できますね。
ABランクをすべて取りきるのは至難の業でしょう。
一発勝負の本試験会場で多少のミスもするでしょう。
70%の合格基準を考えた時に取らなくてはならないABランクだけで84%取れるのですから、約14%は落としても合格できるとの見方もできます。
引き算の発想です。

実際の2023年5月短答式試験の問題はリンクの通りです。
仮に2023年12月に出題される短答式試験の問題が2023年5月短答式試験と同様の問題だとしましょう。
実際に問題の横にテキストを置いて調べてみてください。
私も10年ぶりに短答式試験の問題を拝見しました。

企業法はCランクの数が多いですが、ABランクとされる問題の多くがテキストの内容をおさえていれば取れそうです。10年近く法改正がないことから、今の私でもCランク含めて正誤判定できました。
他の科目は割愛しますが、膨大なテキストから出題された箇所のみリストアップしてみましょう。全科目数千ページの内、これだけかと拍子抜けしませんか?1か月あれば十分対策できるほど少ないボリュームです。

しかしながら、現実は出題される問題が事前にわかるわけではない。
だからこそ、出題可能性の観点からリスクヘッジしてABランクを手広くおさえる
のである。
手を広げ過ぎないためにCランクは捨てるという感覚が必要になります。
合格基準、試験範囲、リソース、出題実績を鑑みて合格するためのゴールから逆算して計画を立てるのである。

Cランクが気になる人は簡単な期待値計算をしてみよう。
短答式試験を明日に控えている時間が濃密な状況を想定します。
1時間の勉強をする。出題可能性Aランクは80%、Bランクは60%、Cランクは30%とする。
 期待値計算をすると、
  Aランク:1h×0.8=0.8
  Bランク:1h×0.6=0.6
  Cランク:1h×0.3=0.3
1時間勉強して得点に結びつく可能性が高いのはA>B>Cランクとなる。
少ない勉強時間でより多く得点することを前提とするならば、まずはAランク。そしてBランクだろう。
また2023年5月短答式試験の解答を見てもわかる通り、Cランクを得点できなくても十分合格できることが自明である。Cランクは一切を手を付けず、ABランクの精度を上げるために時間を割くことが優先度が高いと判断できる。換言すれば、勉強時間をかけた分だけ得点に結びつく可能性の高さである。
出題されなければ、いくら勉強しようが得点にはつながらない。

回りくどい期待値計算をしたが、不安な場合の心理状況として漠然としているから不安になる。その場合は何に不安を抱いているのか、文章あるいは数字として具体化してあげれば不安が和らぐだろう。これは心理学的なテクニックなので、参考までに。

5.科目別の勉強方法

①企業法(監査論)

監査論も企業法と大まかな勉強方法が同じであるため、監査論の勉強方法は割愛します。このセクションを参考に監査論の勉強計画も立てられると思います。

「1.ゴールの設定」より、70点とることが目標。2023年5月短答式試験の過去問ではABランクおさえれば、75点とれることが判明している。
「2.リソースの把握」より、講義&復習で67.5h(=15コマ×4.5h)、答練&模試で15h(=5回×3h)。その他自習に使えるのが269h
「3.科目の優先順位」より、財務会計論の次に優先度高いため、気合入れましょう。勉強した分だけ得点できる可能性の高い科目だからです。よほどの難易度でない限り基本的にコスパのいい科目です。

大まかな方向性は上記の通り、決まりました。
次は勉強する際に必要な戦略と戦術について考えていきます。

科目別の勉強方法の記載にあたり、戦略と戦術を以下の意味で用います。
一般的な使用法ではない気がしますので、各科目の記載時に再掲します。

 戦略:①合格にはどのような力を身に着ければいいのか、②どの論点(例:機関などのまとまり)を優先するか、である。
 戦術:どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動、である。

戦略についてですが、雑な表現をするなら合格基準をクリアするために出題範囲をおさえればいいですね。
ふわっとし過ぎて、しっくりこないですね。

「4.ゴールから逆算する目線」でも触れた通り、具体的にブレークダウンしていきましょう。
7割の点数獲得のためにABランクをおさえることが確定しました。
テキストのABランクだけでもかなりのボリュームがあります。
2023年5月短答式試験の過去問分析のABランクでも多少は捨てても合格できることが判明しています。ABランクの論点の中でも優先順位をつけられそうですね。

本来は過去5年の過去問分析をしたいところですが、参考に単年度2023年5月短答式試験の過去問分析をしてみましょう。
 ・出題形式は各5点で20問出題
 ・ア~エの選択肢から正しいものの組み合わせを6択より選択

上記より、「戦略①合格にはどのような力を身に着ければいいのか」という観点からは、選択肢の正誤が正しく判断できる知識を身に着ける必要があると判断します。

次に論点別に出題実績を分類してみます。
20問の内訳は以下の通り。カッコ書きはCランクの出題である。
設立3問(2問)、株式3問、機関6問(1問)、配当1問、社債1問、持分会社1問、組織再編2問、商法1問(1問)、金商法2問(1問)。

「戦略②どの論点(例:機関などのまとまり)を優先するか」という観点からは出題数の多い機関が最優先。その次は株式になります。
その他、数年単位の過去問分析を踏まえ、機関の内、株主総会に関わる論点からの出題が多いなどの傾向が掴めると思います。
できる人は自力でネットから過去問引っ張て来て分析してもいいですし、有料の過去問集に課金してもいいと思います。
上述の過去問分析の前提として過去の傾向が今後も続くことを想定していますが、必ずしもそうなるとは限りません。ですので、講義などで今年この論点がアツイですといった情報があれば適宜キャッチアップして学習戦略に反映していく必要があります。この情報価値は計り知れないことから、貴重な情報に対する対価として専門学校に高い受講料を課金するイメージですかね。

戦略が固まったので、戦術の話をしていきます。
「戦術:どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動である」

10年前の大原では企業法の使用教材として、テキスト、肢別問題集、答練の3つがありました。
戦術の話については正直なんでもいいと思っています。
例えるなら、東京駅に行くのにどの路線を使おうか、という類の話しだと考えているからです。それでも悩むのであれば数ある合格体験記の内、真似のしやすそうな物を取り入れてみればいいと思います。
私自身、なかなか合格できなかった時期は戦術である勉強方法の改善に焦点を充てていました。色々な勉強方法を試しましたが、戦略が間違わなければ合格できると感じました。
高学歴の受験生と低学歴の自分を比較した時に、講師の説明の理解の速さなどの個人差はあれど、戦略が間違っていなければ遅かれ早かれ合格に至ります。時間はかかるけど、各駅停車の電車も目的地に着くでしょという発想です。だからこそ目的地の設定である戦略の策定に時間を割くのだ!
残酷な話として、近年の研究では、遺伝要因で知能指数に致命的な欠陥のある人間が少なからずいるらしいです。うるせーばーか!やってみなきゃ分からないだろう!というのが私の持論です。超人的な天才に勝てなくても、努力の仕方さえ間違えなければ、凡人でもそれなりの結果を出せると感じます。

話を戻します。

なかなか合格できなかった頃は、テキスト、肢別問題集、答練の3つを使っていました。
「4.ゴールから逆算する目線」で触れた捨てる感覚がわかっておらず、戦略もお粗末なものでした。大原のカリキュラムを消化すれば合格できるだろうという思考停止でした。ゴール設定もそうですが、戦略策定がしっかりとできていませんでした。
肢別問題集をやるとわかるのですが、初学の頃、1周するのに3カ月かかりました。肢別問題集をやることが合格に近づくのであればやるべきなのですが、戦略を踏まえるとやらなくていいなと思いました。
また短答式試験に4回落ちた要因として本試験で7割得点できるものの、ケアレスミスで15点落としている状況でした。ケアレスミスの具体的な内容としては答えを見ると理解している(と思っている)内容なのになぜか得点できない、という状況です。もっというと、テキスト内容の大枠は頭に入っているものの、主語や末尾の~しなければならないなどの表現の暗記があやふやで正誤判定ができず得点に結びついていない状況でした。

このような不合格の経験も踏まえ、前述の通り戦略は以下の2つを設定しました。
「戦略①合格にはどのような力を身に着ければいいのか」という観点からは選択肢の正誤が正しく判断できる知識を身に着ける必要がある。
「戦略②どの論点(例:機関などのまとまり)を優先するか」という観点からは出題数の多い機関が最優先。その次は株式になります。

戦略をもっと嚙み砕いて表現すると選択肢を見て○×がわかればいいので、そのための勉強としてテキストの暗記精度を高めればいいと判断しました。
日々の具体的な勉強計画に落とし込むにあたって、まずは機関の分野。過去の出題実績や出題可能性からも重点的に対策すべき。機関の次は株式などその他の出題可能性の高い論点から順に対策を進めようと考えました。

戦術は「どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動」です。
使用教材はテキストと答練に絞りました。肢別問題集は捨てました。
大原の受験経験者向けの講座では2023年6月~2023年9月頃まで講義があった気がします。
まずは講義を受ける。重要な箇所にはテキストにマーカー。見やすさの観点からオレンジマーカー一色を用いました。
過去問分析した結果は、テキスト該当箇所に緑のボールペンで「R3出題」などメモして普段の勉強から出題実績を意識できるように情報を集約しました。出題実績があるのであれば、また出題されるかも?という注意喚起にも一役買っていました。

また、本試験でのケアレスミスの対策も考えました。前述の通り、ケアレスミスは具体的な内容としては答えを見ると理解している(と思っている)内容なのになぜか得点できない、という状況。もっというと、テキスト内容の大枠は頭に入っているものの、主語や末尾の~しなければならないなどの表現の暗記があやふやで正誤判定ができず得点に結びついていない状況でした。

ですので、「発起人は、設立しようとする株式会社が公開会社である場合にうは、3人以上でなければならない」といった記述があったときに「3人以上」という人数の記載の暗記の精度が低いのであれば該当箇所にフリクションの消える青ボールペンで波線を引いて注意喚起しました。普段のテキストの読み込み時にフリクションで波線引いた箇所を特に注意することでケアレスミスを少なくし本試験での点数向上に寄与できたと思います。暗記できたらフリクションなので消していきました。

これは答練も同じです。答練は練習なので点数は気にせず、どれだけ暗記しているのかという文字通りの練習に使いました。実体験ですが、目的を見失うと模試で全国1位をとろうが、本試験で不合格という事態を招きます。暗記の精度が低ければ、テキストの該当箇所にフリクションで波線です。合わせて答練期に入ってから付箋をはり、暗記の精度が低い箇所を重点的に回せるような工夫をしました。
テキストの内、監査役制度の趣旨などの理由付けは論文式試験では重要な知識ですが、短答式試験においては不要ですので、フリクションボールペンで×をつけて読まなくていいように工夫しました。テキストを開いた時に短答式試験の合格に不要な論点に目を通す時間が惜しかったので、一切見ない仕組み作りをしました。

勉強の進捗などにより、残り時間から逆算して暗記にどれだけの時間が使えるのかというのは常に意識していました。

269hで最終的にはテキストを80回転したと思います。脳筋なので、80回くらい回せば嫌でも覚えるだろうという頭の悪い発想です。
最初の復習時はテキストへの書き込みといった情報の集約も同時並行で進めたので時間がかかりましたが、5回6回と回すうちに慣れてきて最終的には1時間でテキスト500ページをパラパラと眺めました。

試しに1日勉強してみた結果、1時間で30ページ進んだとする。単純計算で全1,200ページなので1日1時間の勉強で40日かかる計算。回転数を上げるために1日の勉強時間を増やすか1日あたりページ数を増やすこととなるので、リソースとの兼ね合いから相談になろう。回転数に拘っている理由はテキストをたくさん回せばそれだけ暗記の精度も上がるだろうという仮定を置いてます。小手先の暗記のコツに頼るよりわかりやすいので回転数を上げる勉強をしていました。

ゲームのように経験値が定量化され、レベルアップまで残りの経験値100というように現実は上手くいきません。当初暫定的に計画した戦略・戦術通りに順調に勉強が進まなければ、他の科目の時間を減らして企業法に充てるなどの微調整も必要でしょう。だからこそ、リソースの計算時にバッファを想定して計算したのである。

参考に私の具体的な勉強法を戦術レベルで書いたが、本試験での点数が最大化できるのであれば、細かい勉強方法はなんでもいいだろう。私はテキストメインに学習し、暗記の精度を粛々と上げた。

上記の計画の見直しなどを踏まえて、2013年12月短答式試験に全国1位で合格した。
 点数は企業法90点、監査論100点、管理会計論65点、財務会計論200点の合計455点(91%)。

②管理会計論(理論と計算)

「1.ゴールの設定」より、70点とることが目標。2023年5月短答式試験の過去問ではABランクおさえれば、79点とれることが判明している。とはいえ、学習している方ならわかると思うが、かなり厳しい点数目標ですよね。私自身なかなか得点源にはできなかった。足切りもあるので負けない点数の意味合いで60点を目標にした。全国1位で合格しても管理会計論は65点しかとれなかった。
「2.リソースの把握」より、自習に使えるのが269h
「3.科目の優先順位」より、監査論よりは優先度を上げる。1つの目安として優先度の観点から監査論よりは時間を割く程度の発想です。

①企業法(監査論)のセクションと重複する内容はこのセクションでは割愛する。簡潔に戦略と戦術について触れていく。

戦略:①合格にはどのような力を身に着ければいいのか、②どの論点を優先するか、である。
戦術:どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動、である。

管理会計論は理論と計算に分けられる。後述するが、試験時間の制約もそうだが、管理会計論は得点しづらい性格があるため緻密に戦略を練った

2023年5月短答式試験問題を論点毎に大まかに分解すると以下のようになる。Cランクを除いたABランクのみで点数を集計している。
 理論:原価計算基準15点
    上記以外  25点
 計算:原価計算(個別原価計算など)     23点
    上記以外(CVP分析や意思決定会計など) 14点
  合計 77点

経験者ならわかりますが、管理会計論で7割とるのきついですよね。苦手でもせめて6割はとりたい!という受験生が大半だと思います。私も本番では65点となんとか耐えた得点でした。
短答に4回落ちた時は50点でいまいちな成績でしたので、なんとか+10点とれるような計画を立て悪戦苦闘しました。
かつての受験仲間で管理会計論が得意で9割叩き出している宇宙人がいましたが、そういう人と同じ土俵に立とうとしてはいけません。

私の実感として管理会計論は時間をかければ得点が最大化できる論点とそうでない論点があるように思います。
理論・計算ともに原価計算分野は比較的勉強した分だけ得点を最大化できる性質があると感じました。

+10点とるために上述の2023年5月短答式試験問題の内、コスパのいい箇所は理論・計算ともに原価計算分野が最優先。
理論・計算ともに原価計算分野以外は原価計算分野よりも優先度が劣るものの最低限の基本問題はとれるような戦略を考えました。

2023年5月短答式試験のABランクの原価計算分野のみだと38点。足切りですね。原価計算以外の点数で39点あるので、半分くらいとりたいですね。そう考えると、38点+(39点×0.5)=57.5点
6割を目指すならいい感じでは?私ならこの目標をたてます。

戦略:①合格にはどのような力を身に着ければいいのか、②どの論点を優先するか、である。

「戦略①合格にはどのような力を身に着ければいいのか」という観点。
 理論:選択肢の正誤が正しく判断できる知識を身に着ける必要がある。
 計算:出題形式から問題文で求められている数値をいち早く把握し、効率的に解けるようになる必要がある。

戦略①の理論は基本的に企業法のセクションで記載した考え方と同じですので、ここでは割愛します。

「戦略②どの論点を優先するか」という観点
 理論・計算ともに原価計算分野を最優先。
 その次に基本的な問題に対応できるよう理論・計算ともに原価計算以外の分野を優先。

戦術は「どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動」です。
理論:基本的な使用教材はテキスト。テキスト巻末の原価計算基準を切り取り、回転用教材として使用。
計算:基本的にテキストの例題。その他答練。

原価計算分野の理論は原価計算基準である。47個しかないので暗記。
過去問分析をすると頻出の基準とそうでない基準がある。47個しかないので全部覚えてもいいと思うが、出題実績の多い基準から優先して覚えてもいいだろう。

計算の戦略は以下の通りであった。
「戦略①合格にはどのような力を身に着ければいいのか」
 計算:出題形式から問題文で求められている数値をいち早く把握し、効率的に解けるようになる必要があると判断します。

原価計算分野及びそれ以外の例題もそうですが、前提として多少苦手であってもテキストの例題の内容はしっかりと理解できており、解答を算定できることが前提となる。例題で躓いている人はまずは例題をしっかりおさえよう。何事も基本は大事です。
短答の過去問を問いて時間的に厳しいことがわかります。
理論問題は原価計算に限らず、すべての問題に着手できると思いますが、計算問題が鬼門です。

どうするか?

短い時間の中で確実に点数を積み上げ、6割得点するためには大きく2つのポイントがあると思います。
1つは得点すべき問題の見極め。2つ目は得点すべき問題を見極めたら確実に得点できる計算力を身に着けること
です。

この戦略を遂行するためにテキストの例題の解き方を工夫しました。
最初は費目別計算がどのような計算なのかなど理解しながら、計算を積み上げて答えを出す解き方。これは多くの人が実践していると思います。
ここからは、後述する財務の計算でも話しますが、少し特殊な解き方をします。(周囲の受験生から指摘され、特殊だと気づきました。)
 例:総合原価計算 累加法による工程別総合原価計算
 例題の解答欄を見て、第2工程の期末仕掛品原価の算定だけしてみる。完成品原価だけを算定してみるなど解答から逆算する形の計算方法に慣れる練習をしました。
2023年5月短答式試験の問題5にて完成品単位原価が問われています。例題でまずは基本を身に着けたら、今度は解答から逆算する形で完成品原価を算定するにはどのような資料があれば出せるのかという解き方です。
簿記検定のように問題の頭から仕訳をきって、その結果をT勘定で集計などするやり方に慣れてると最初は面食らうと思います。この解き方を身に着けることで、解答に必要なプロセスが可視化できるので初見の問題にも対応でき、とるべき問題と捨てるべき問題の取捨選択ができるようになりました。

具体的な本試験の時間配分と解き方を参考に書きます。

1時間の内、最初の10分でまずは問題を眺める。
理論を15分程度で片づけたあとは計算に35分使う算段です。
理論問題はすべて着手するのでいいのですが、問題を眺める時に計算問題はボリュームなどを加味して左上にABCランクを暫定的にメモしていきます。
忘れましたが、統計的に管理会計論は3だか4だかが正解の確率が高かった記憶があるので、Cランクのメモと合わせて解答用紙のマークを先に塗りつぶしていました。
こうするとABランクの計算問題が5問程度残るので気持ちが軽くなります。35分で5問解けばいいのかと。1問あたり7分使えます。なので、まずはAランク、次にBランクで焦らずフィニッシュです。

上記の本試験の時間配分と解き方は実践に移すのは難しいので、短答答練と模試で練習しました。
メモしたABCランクの判定を誤る可能性もあるので、このメモと答練の解答にあるランクを見比べてランク判定の精度を上げました。
あとは計算問題の上の空白に着手した時間及び解き終わった時間をメモして時間感覚を養いました。
時間の目安として3分程度で解ける問題はAランク。5分程度で解ける問題はBランク。5分以上かかりそうな問題はCランク。
Aランクで3分程度で解けると判断した問題をしっかりと3分程度で解き切れたのか。事後的に時間メモを参考に解答にどれだけの時間を要したのかの分析も行いました。想定より解答に時間がかかると最初のランク判定の意味がなくなるからです。想定より時間がかかった原因分析も併せて行いました。
余談ですが、得点できるなら下書きの書き方などはなんでもいいと思います。単なる手段に過ぎないので。私は自分の書く文字が汚すぎて数字の見間違いで15点近く失点していたので、下書きをやめて電卓のみで計算します。メモリ機能とGT機能を使えば最大で同時に2つの計算ができますし、電卓は計算ミスもしません。総合原価計算の期末仕掛品原価と完成品原価の算定を同時に行うケースは多くありませんが、この時だけメモリ機能とGT機能で同時並行で計算します。電卓の操作ミスもなくしたかったので、手元を見ながらゆっくりと計算しました。解答の出し方が合っているのに打ちミスで失点とかしょうもないですからね。ブラインドタッチで電卓操作早い人もいますが、私は打ちミスが多くマネできませんでした。解答までのプロセスを最短距離で行けば、電卓操作が遅くても十分戦えます。

③財務会計論(理論と計算)

「1.ゴールの設定」より、140点とることが目標。2023年5月短答式試験の過去問ではABランクおさえれば、172点とれることが判明している。
「2.リソースの把握」より、自習に使えるのが269h
「3.科目の優先順位」より、配点は200点と他の科目よりも高いため、最優先科目。2012年当時の大原では財務ができれば短答は受かります!を信じて勉強した結果、財務で200点とるも管理会計論で足を切り不合格になったこともあるので、バランスよく勉強しましょうね。

財務会計論の理論については、①企業法(監査論)・②管理会計論のセクションと重複するため、このセクションでは割愛する。
簡潔に戦略と戦術について触れていく。

財務会計論の計算については、管理会計論の計算と重複する内容もかなりあるが、財務会計論の計算の特殊性に鑑み重複しない範囲で書いていく。

戦略:①合格にはどのような力を身に着ければいいのか、②どの論点を優先するか、である。
戦術:どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動、である。

戦略①は管理会計論の計算と同じですが、再掲します。
計算:出題形式から問題文で求められている数値をいち早く把握し、効率的に解けるようになる必要がある。

財務会計論の計算も管理会計論の計算と同様、上記の戦略遂行にあたりポイントが2つ。1つは得点すべき問題の見極め。2つ目は得点すべき問題を見極めたら確実に得点できる計算力を身に着けること。

この2点を徹底して対策した結果、本試験でなかなか6割以上の点数がとれない状態から一気に8割9割安定してとれるようになった。
例題の解き方などは管理会計論の計算と同じであるため、ここでは割愛する。

戦術は「どの教材を使って、どのように読み込むのかという日々の行動」です。
計算:基本的にテキストの例題。その他答練。受験経験ある者は総合問題対策として過年度のよさげな総合問題を使うのもいいだろう。

財務会計論が好きというのもあるが、初学から比較的財務会計論の成績はよかった。しかしながら、最初の短答式試験を2回受験した際は6割の成績であったことから、8割は得点したいと考えた。
戦略と戦術や下書きの有無、ランク付けをして問題を解くなどの戦略は管理会計論の計算と特段変わらない。2013年12月の短答式試験に合格した際、財務会計論の点数は200点で満点であった。問題を解くスピードも速かったため、40分時間が余り暇だったことを覚えている。2012年頃までは短答式試験が難しく、ボーダーが72%であった。2013年以降はボーダーが65%など下がった上、問題も比較的易しくなったので、そのようなトレンドにも救われた点も大きいと感じている。
Cランク捨ててるのに何で満点とれるんや、という方向けへの補足ですが、初学の頃の間違った勉強法が原因です。Cランク含めたテキストの内容を完璧に仕上げてしまったという背景があります。だからこそ、短答式試験に合格までに4回落ちて2年近くを無駄にしています。満点を狙う必要はありませんが、遠回りしたからこそ棚ぼた的な感じで満点をとるに至りました。

財務の総合問題は個別問題の寄せ集めでしかないが、不慣れな方は別途総合問題対策が必要になろう。詳細は後述する。
個別問題は1問8点。2023年5月短答式試験の個別問題の配点は計算12問の出題。96点である。これだけで配点の48%を占める。Cランク1問を除いても44%を占める。点数最大化の観点からは取りこぼしなくABランクは取りたいところだろう。

個別問題対策は管理会計論の計算と勉強方法含めて変わらないため、割愛する。
総合問題対策について触れていく。管理会計論同様、電卓のみで計算し下書きを書かないので受験仲間からは理解されずマネできないと言われました。文字が汚いので下書きない方が合理的だったのですが。。。
総合問題を解く際の考え方は非常に参考になるとかつての受験仲間からは喜んでもらえたので、参考がてら書いていく。

多くの方が苦手とする連結会計に関する総合問題を例に挙げていく。
連結会計は構造論点でたくさんの種類の会計上の論点がありますね。
資本連結と成果連結に大きく分かれますが、資本連結だけでも、支配の獲得に始まり、開始仕訳及び実現仕訳。追加取得、一部売却などたくさんあります。企業結合・事業分離も同じ話ですが、要はくっつけるか剝がすかの話です。
得点すべき問題を見極めたら確実に得点できる計算力が必要になるわけですが、連結に限らず仕訳を切れることが前提です。ここの基本がしっかり身についていないとせっかくAランクとして取るべき問題と判断できても得点に結びつきません。仕訳が切れないと必要な数字の集計ができないからです。集計漏れが生じたり、集計する数字を誤る結果、正解に辿り着けないわけです。

2023年5月短答式試験の総合問題を見てみます。
問題23(Aランク)にて「X2年度のP社連結BSにおける非支配株主持分」が問われています。
仕訳が切れることを前提として書いていきますが、非支配株主持分を算定してみましょう。どのように資料を広い数字を算定していくのか参考にして頂ければと思います。あくまで私の解き方ですので参考までに。

解答から逆算してどのような資料があれば解答を出せるのかという練習を普段からすることでたくさんある資料の中から必要な資料のみを拾うことができ、これが時間の短縮に繋がります。
 「〔資料Ⅰ〕1.P社(公開会社)の企業集団は,P社およびS社の 2 社のみで構成されている。」の記述、
「〔資料Ⅰ〕3.P社について,〔資料Ⅱ〕に示されたもの以外の資本取引はないものとする。」の記述と
〔資料Ⅱ〕の記述から非支配株主持分の構成要素はS社の純資産であることが判明する。
 論点としてはS社の評価差額がなく、成果連結に係るアップストリームの未実現利益の仕訳もここでは関係ないです。
 あとは、S社の非支配株主持分を算定すればよいので、P社のS社に対する持分の推移を追いかける。
 〔資料Ⅱ〕1.よりP社はX1年度にS社株式60%取得で支配獲得
 〔資料Ⅱ〕4.よりP社はX2年度にS社株式20%を追加取得
上記の〔資料Ⅱ〕より、非支配株主持分は20%と判明する。
あとはS社に純資産の非支配株主持分の20%を乗じるだけで算定できる。
 (資本金400,000千円+利益剰余金400,000千円)×0.2=160,000千円
 解答の選択肢の2番 160,000千円が解答となる。

連結会計に関する論点が頭に入っているため、問題23にて「非支配株主持分」の金額が問われたならば、非支配株主持分の金額の算定に影響を与える要素である持分比率の情報、追加取得といった持分の変動の有無などが頭に浮かぶ。テキストの例題でしっかりと基本をおさえていればこの論点の網羅性は問題ないだろう。テキストの目次を見て論点の存在だけさらっと確認するのもいいだろう。網羅的に浮かんだ論点のチェックリストを問題に当てはめていき、必要な情報と不要な情報を取捨選択していくのである。
本問では関係ないが、成果連結でダウンストリームの未実現利益の消去に関する資料があったとしても、非支配株主持分の算定に影響を与えないので、無視していい資料ということになる。資料は一通り見るが、非支配株主持分の算定にあたっては考慮する資料ではない。
連結会計の問題がきたら反射的にタイムテーブルを書いていないだろうか?問題の見直しをしてみると、総合問題によってはタイムテーブルを書かなくてよいケースもあったりするので、機械的に下書きなどを書いていないか見直してみるのもいいだろう。

資料が複雑に絡み合っており解答に必要な資料と不要な資料の見極めが必要であるものの、これがクリアできてしまえば、財務の総合問題は個別問題の寄せ集めでしかない。
基本的な対策は変わらない。

連結会計そのものが苦手なのか総合問題という形式に上手く対応できないのかによっても対策は変わってくるだろう。
しかしながら、本試験に求められる能力を分析して普段からそれを意識した勉強ができれば問題ないだろう。

おわりに

16,000字の大作となりました。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。

あくまで私の計画の立て方はたたき台でしかありません。
適宜、最新のトレンドをキャッチアップしてカスタマイズして下さい。

今回は過去問分析とどのように計画を立て直したのかという点に着目して書きました。
2023年12月短答式試験合格を目指す受験生のお役に立てたのなら幸いです。

参考までに短答・論文含めた不合格体験記をリンクとして貼ります。

よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?