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ビルトダウン人の化石捏造事件とミッシング・リンク

ミッシング・リンク発見!?

1912年、チャールズ・ドーソンというイギリス人アマチュア考古学者が、イギリスの東サセックス州ピルトダウン村の近くで、ヒトを思わせる頭骨と猿人類のような下顎骨を併せもつ化石を発掘したキュイ。

推定される脳の大きさはジャワ原人やネアンデルタール人よりも大きいことから、専門家によりこの化石は現生人類の直系の祖先とみなされ、「ピルトダウン人」と名づけられたキュイ

ピルトダウン人の復元模型

そして、この発見は公表されると、「これこそ長年探し求められていたミッシング・リンクだ!」と世界を大きく揺るがしたキュイ。

20世紀前半までは、古生物学でも人類学でも、サルからヒトへ変貌した手がかりになる人類の祖先がいたはずだと考えられていて、このまだ見つかっていない進化の鎖の環“ミッシング・リンク”があるとみなされていたんだキュイ。

実は捏造だった!発覚まで40年以上!

ピルトダウン人を疑問視する学者もいたキュイが、ウッドウォードなどの著名な学者の支持を得たこともあって肯定派は多く、この“発見”が捏造と弾劾されるまでに40年以上かかったキュイ。

なので、まだ本物と思われていた1938年7月22日には、ピルトダウン人化石発見を記念する石碑の除幕式が現地で行われちゃったキュイ
(記念碑は現在も残ってるが、もはや誰にも省みられない有り様でかわいそうになるキュイ)

ピルトダウン人化石“発見”の地に残る記念石碑

それから10年後、大英博物館のケネス・オークリーがフッ素法でピルトダウン人頭骨の年代測定を行い、骨が5万年前のものであることを明らかにしたキュイ。これにより、ピルトダウン人のミッシング・リンク説は否定されるキュイ。

そして、1953年、とうとう化石は捏造だったと判明するキュイ。骨は中世のヒトの頭蓋骨とオランウータンの下顎とチンパンジーの歯をひとつにまとめたもので、すべてヤスリをかけて人間のそれに近づけ、年代を古く見せかけるために化学処理が施されていたんだキュイ。

誤解されるミッシング・リンクの概念

同年、タイム誌はピルトダウン人を完全に否定する記事を載せたが、“ミッシング・リンク”という概念はもうすっかり大衆の意識に刻み込まれ、取り消すことができないまでになっていたキュイ。

実際は、人類の進化の過程は均一の鎖のつながりではないのであって、一連の鎖からミッシング・リンクが抜け落ちているとの考えは間違っているキュイ。

しかし、この“ミッシング・リンク”という言葉は、進化の道筋についての誤った概念を広めてしまうことになったキュイ。一番よくないのは、人類の系譜を直線でとらえ、進化のある時点では、半ばチンパンジー、半ばヒトという生き物がいたと思わせてしまった点キュイ。ダーウィンは、「ヒトはサルから進化した」とは言ってなくて、サルとヒトは共通の祖先を持ち、そこから枝分かれしてそれぞれ進化したと提唱したのにキュイ。

また、ヒトの進化の過程を、直立するにつれて、体毛がなくなっていく姿を順に並べて描いたポスターも、事実とほど遠いイメージを印象づけるのに一役買ったキュイ。

ミッシング・リンクにまつわる大衆の誤ったイメージが拭えないまま、1974年にエチオピアで骨の化石が見つかると、ミッシング・リンク説はさらに盛り上がり、一部の人々は興奮と期待に胸を躍らせたキュイ。しかし、発掘に関わった人で、そんなことをほのめかした人はひとりもいないんだキュイ。(なお、この化石は現在“ルーシー”として知られているキュイ)

その後、1994年には、ルーシーよりも120万年古い“アルディ”が発表されたキュイ。このアルディの頭がい骨、歯、骨盤、手足から、アフリカの類人猿は人類との共通の祖先から広範囲に進化したものであるとの推定が導き出されたキュイ。それは人類と類人猿の直接的な類似性に関する神話を打ち破ることになり、人類の初期の進化に関する概念を変えただけではなく、ミッシング・リンクの概念に疑問を投じるものとなったんだキュイ。

捏造事件の犯人は誰?

ところで、このピルトダウン人捏造事件の犯人は誰なんだキュイ?半世紀近くにわたって古人類学の進歩を阻害し、迷走させた大罪人は?

ピルトダウン人は北京原人よりも古い進化の段階と
考えられ、何千という教科書に40年間も載っていた。


犯人や動機については、憶測が様々あるキュイ。

【第一発見者チャールズ・ドーソン犯人説】
ドーソンが自宅で骨を造っているのを見たという噂は発見当初からあった。また、2016年にロンドン自然史博物館(大英博物館)などがまとめた研究は、ドーソンが犯人だとほぼ断定している。ドーソンは王立協会のフェローになる野心を抱いていたので、重要人物との関係を築こうとしたのが動機と言える。


【ドーソン&コナン・ドイル共犯説】
アーサー・コナン・ドイルはピルトダウンの住人で、ドーソンと同じくサセックス考古学協会の会員だった。ふたりは“発見”に先立ち、よく身を寄せ合ってなにやら話し込んでいるところを目撃されている。捏造はドーソンが行ったとしても、ドイルが仕掛け人なのではないか。ドイルの動機は、彼がはまっていた心霊主義へ向けられた世間の批判を憎悪して、と思われる。


【動物学者マーティン・ヒントン犯人説】
ピルトダウンの発見がなされた当時、ヒントンは大英博物館のウッドウォードがいた部門で無給学芸員として勤めていた。ヒントンは、週給の要求を拒否したり、仕事を回さないウッドワードに対して怨恨があり、彼を罠にかけ当惑させるために、いたずらでピルトダウンの骨を捏造して埋めたのだ。ドーソンは経緯を何も知らず、彼もだまされた一人なのである。1996年には、ヒントン犯人説の証拠が明らかになっている。大英博物館の屋根裏から、ヒントンのイニシャルマークがついた旅行鞄が発見され、その中からピルトダウンの化石とまったく同じ方法で染色されたゾウ、カバの化石が見つかった。ヒントンは化石の変色についての論文を発表しており、彼が犯人でほぼ間違いないだろう。

どれもホントっぽいけど、実際はどうなんだキュイ?

実は、捏造が明らかになった1953年前後には関係者らはことごとく他界しており、真相は今もって藪の中なんだキュイ。う〜ん、モヤるキュイ


ただ、このような捏造は、いつかかならず暴かれるキュイ。科学は過ちもするけど、自らの力で立ちあがり、先へと進むキュイ。自己修正機能は、科学的手法のもつもっとも優れた特徴キュイね

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