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アイブとうつ病の戦い

2016年夏までリバプールに所属していたジョーダン・アイブ(25歳)。1月にうつ病に苦しんでいたことを明かしていた彼について、 SPORT BIBLE によるのインタビュー記事の和訳です。

元記事は下記のリンクから。リンクの下が本文です。


2021年1月22日の朝、勇敢にもジョーダン・アイブはメンタルヘルスとの戦いについて打ち明けた。

元ウィコム、リバプール、ボーンマスのウィンガーは、インスタグラムにて自身の苦悩を世界へ発信した。



うつ病に苦しんだことで自分自身がどこか暗い場所にいると気付いた。メディアや皆んなに話題にしてほしい訳じゃない。ただ、本当に物事が難しい。皆んなのメッセージや愛に感謝している。パンデミックにより、厳しい時代になっている。家族やダービー・カウンティ(当時の所属)から全面的なサポートを受けている。自分と今の状況を正す、それに100%集中している。家族や近い友人、娘のためだけでなく自分のためにも。

何百万人もの人々が黙って苦しんでいるように、アイブも長年親しい人にですら自身の精神状態について黙っていた。しかし、1月の金曜日の朝、何かが変わった。変化を求めていた。今年の初め、この苦しみを公表するという彼の決断は間違いなく命を救った。

事実、彼自身の命を救った。1月の告白から10ヶ月が経ち、こう語る。

人生で最も暗い時期だった。助けを求めて泣いた。打ち明ける必要があると感じたんだ。そうしないと何が起こっていたか分からない。声を上げてよかったよ。

プロのスポーツ選手に対しては未だに大きな誤解がある。最も大きなものは注目されている選手は苦しみとは無縁だというもの。実際にはメンタルヘルスの問題に区別は無く、様々な人々が影響を受ける。

最近、ジャック・ウィルシャーはフットボーラーは自身のメンタルヘルスについて語り、それが弱点ではないと気付くべきだと話している。自身のメンタルヘルスについて話すことで、人生に大きな変化があったと認めている。

アイブも共感している。

同情してほしい訳ではない。打ち明けることが家族にも大切なことだと感じた。メンタルヘルスの問題はどうなるか分からないからね。ここ4年間、うつ病に苦しんでいた。

ウィルシャーの指摘は正しい。フットボーラーであるかどうかは関係なく、アイブの話は誰もが苦しむ可能性があることを証明している。この問題は現代社会において多くのプロ選手が直面している問題であり、1週間のボイコット運動で問題意識が高まったものの、様々なソーシャルメディア上で選手を標的にした攻撃が常態化。

4年前、マンチェスター・ユナイテッドのフィル・ジョーンズは攻撃され続けたことを理由にツイッターやインスタグラムをやめた。彼は最近、ソーシャルメディアの「有害」な環境と、特に若い選手に与えている影響について明かした。今の若手は、そのような環境に対応できる「精神的な能力」を持っていなければならないと考えている。

アイブはソーシャルメディアが与える致命的な影響を理解している。

批判というものは堪える。ソーシャルメディアでの多くの人のやり取りを見ていて、最も傷ついたのは否定的なコメントを見たときだと思う。自分は自身にとって最悪の評論家あり、自分自身に対してとても批判的。常により良くしたいと思っているんだ。ツイッターやインスタグラムをあまり見ないようにしていたけど、それでも俺のキャリアがどうなっているか、多くの人が意見を述べていた。(1月の)あの投稿は、俺がサッカーをしないで家でくつろいでいるだけではないということを皆に知らせるためでもあった。精神状態を知ってもらい、悪口を言っているわけではないことを知ってもらいたかった。

自分の精神状態を公にしているプロ選手はほんの一握りである。多くの場合、批判や自分への要求に対処するのに苦労している人は、他人に打ち明けることを避けている。ウィルシャーは誰かに意見を言ったり話したりすることは、特にメディアでは弱みになると思っていたと明かしている。彼はプロフットボーラーに対する一般的な認識は、「すべてを手に入れていて、何を不満に思っているのだろう?素晴らしい人生を送っているのに」だろうと分析する。

アイブは心を開くことが難しいと感じていた。常に要求の多いプロの世界で競争を続けながら、4年間もうつ病と戦っていた。自分の精神状態を他人に話したことで、より多くの人が同じことをできるようになってほしいと願っている。

正直に言うよ。個人的に影響が出ないように、「ああ、この話題には触れたくない。」と思うこともある。でも、俺の言葉が5人や10人に伝われば、それは誰かの家族にとっても思いがけない助けとなるだろう。誰かの役に立てるなら、それだけで価値があると思う。それが幸せだ。心を開くことがどれほど難しいか、俺は知っている。願わくば、より多くの人が心を開くことができるように。もしそうでなければ、彼らの状況が改善されることを願っている。

ここ1年ほどは、アイブのキャリアにとって厳しいものだった。昨夏、チャンピオンシップのダービー・カウンティへの移籍を果たすも20/21シーズンは僅か1試合の出場にとどまり、12月のストーク・シティとのスコアレスドローで最後の3分間に出場しただけ。その後、同クラブでプレーすることはなかった。その間、SNSでのネガティブなコメントが彼の自信に影響を与えていた。

当時、精神状態がベストな状態ではなかったこともあって、「もしも彼らの言っていることが正しかったら」と考えてしまった。フットボールへの接し方や試合への態度として正しくないと分かっていたけど、それでも気分が落ち込んでいた。

ロンドン出身のアイブはオンラインで選手に攻撃をしている人物に対して何を言いたいかとの質問に対し、自身の気持ちを明かしている。

自分がその人の人生にどんな影響を与えているのか、その人のメンタルヘルスにどんな影響を与えているのか気づかないものだ。遊びではないんだ。

7月、最後の試合出場から6ヶ月後、ダービーは双方合意の下でアイブとの契約を解除すると発表。アイブの今後の活躍を祈り、ラムズ(ダービーの愛称)のユニフォームを着ていた思い出を大切にしたいと語った。



退団が決まった2週間後、トレーニング中に足を骨折してしまう。

難しいものだった。そんなに酷い怪我をしたことがなかった。今はまだ乗り越えている途中だけど、そろそろ終わりに近づいている。松葉杖は要らなくなったし、良い段階だ。頑張ってピッチに戻るときだ。

元U-21イングランド代表の彼が自分の状況について熱く語るのを聞くと、いかにカムバックしたいと思っているかがよく分かる。大怪我から立ち直ったアイブは試合に出ることを切望している。

すぐにでも復帰したい。試合が恋しいよ。フットボールが恋しくて堪らない。イライラするとまでは言わないけど、少し焦ってしまう。復帰したい。試合に出てから時間が経ってしまった。ただ、ピッチに戻りたいだけ。トレーニングに戻って、いい選手たちと一緒にプレーして、競争力を取り戻したいと思う。あの感覚をもう一度味わいたい。

既に多くのクラブが代理人を通して移籍についてアプローチしてきており、ユース年代に所属したチャールトンが連れ戻したいと熱望している。しかし、まだ決断は下していない。

復帰の前に、フィジカルをピークに持ってこなければならないと分かっている。

アプローチにはイエスともノーとも言っていない。身体をフィットさせることだけに集中しているし、そうなったときに自分のキャリアを次の段階に進めたいと思うようになる。ずっとそうしたいと思っていたし、願わくば今カムバックしたい。

リバプールで4年を過ごしたウィンガーは、可能な限りフィジカルを整えようと日々取り組んでいる。最近ではピッチ外でも大きく変化があり、強みを得るために植物性の食事を摂るようにしている。初期段階だけど効果は出ていると話す。

最高の選手たちからモチベーションを得るために、テレビで多くの試合を観戦。

ロナウドがイングランドに戻ってくるのを見たり、メッシがCLでプレーするのを見たり、全てのトップ選手が刺激をくれる。最近は凄く良い感じだよ。

メンタルヘルスについては、だいぶ良くなったと笑顔で話している。

これだけ長い間休んでいたのによくやっていると思わせるために言っているのではなく、純粋に自分の中でずっと良い気分になっている。幸せだよ、確かに。

アイブは出来る限り良い人間になろうと努力していることも認めている。過去に間違いを犯したが、人としてもフットボーラーとしても改善しようとしている。

今までの自分が悪かったとは言わないけど、家族のために自分の状況を改善する努力をしたい。全てのことをしっかりとしておきたいと思う。フットボールのキャリアはある意味では長いが短いものでもある。すべてを整理しておきたい。



アイブは旅を続ける中で、家族の大切さを実感している。特に幼い娘のアリアナのために最善を尽くしたいと考えている。

俺の人生の過去2年間において重要な存在だ。俺の人生で娘を得たことは、とても誇れること。娘を誇りに思う。この移り変わりをうまく乗り切るんだと自分に言い聞かせている。意識を正しい場所に置いてカムバックしよう。将来的に状況を好転させ、娘の人生を良いものにしたと言いたい。

インタビューの最後に、アイブに今後の抱負を聞いた。これまでの苦労が報われ、より良い方向に向かっていることは喜ばしいことだ。

短期的な目標はピッチに戻ること。簡単な道のりではない。人生に於いて簡単に与えられるものはなく、全てを当たり前だと思ってはいけない。また前に経験した状態に戻りたい。プレミアリーグでプレーしたいし、より良い状況、つまりキャリアの後半が良いものになるよう努力したい。
今のところ、精神的にも肉体的にも余裕を持って過ごせているのは素晴らしいこと。凄く順調だよ。


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