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グラスゴーはバス交通の公営化を検討している

case|事例

グラスゴー市とその周辺地域の公共交通を管轄するストラッチクライド地域交通パートナーシップ(SPT)は、ローカルなバス路線をフランチャイズ化することを承認し、バス交通の公営化に一歩前進した。フランチャイズ化されるとSPTのようなパートナーシップや公的機関が運賃やルート、乗車券の管理を行うことになる。バス交通のフランチャイズ化は、ロンドン、マンチェスターなどで実施されており、リバプールでも最近導入された。フランチャイズ化は、利用者にとってサービスレベル(LoS)の維持などのメリットがあると想定されているが、本格的な移行まで5年から7年掛かり、費用も1,500万ポンド(約29億円)必要になる。

SPTは「フランチャイズ化は既存のバス利用者と自家用車からの転換を促したい潜在的な利用者の両方がメリットを享受でき、魅力的でアクセスしやすく、手ごろな料金のサービス提供を可能にするようなネットワークに再編し、LoSを充実させる機会となる。」と期待を寄せる。フランチャイズへの完全移行までの間、バス会社と公的機関はバスサービス改善の協定を結ぶ。これによって、SPTのような地域交通を管理する公的機関は、路線や運賃を決定できないものの、最低限の運行頻度と運賃の上限を定めることが可能となる。

スコットランドの最大手のバス事業者であるマギルズ社は、フランチャイズ化で納税者に年間1億ポンド(約190億円)の負担をかけることになり、この計画が前進するようであれば法的措置を検討するとコメントしている。また、バスの利用者の最大の不満は道路混雑で、公的機関は何よりも優先してインフラを改善し信頼性やLoSを高めるべきだとも述べている。

insight|知見

  • バス会社は、独立採算での経営ではなくなり運行委託を受けて事業を行うことになるので、経営の安定化という観点では賛成なのかなと思いましたが、マギルズ社のコメントを読む限り、委託で収入は安定するとしても赤字路線を維持しないといけないため人件費や車両費がかさむなど、さほどの経営的なメリットがないのかもしれません。

  • ただ、地域のインフラとして公共交通を守る議論が行われ、公的に維持するという判断がなされているグラスゴーは、日本での議論よりも進んでいるような気がします。

  • 日本では、運転士不足や人口減少で縮小均衡のような議論になりがちです。しかし、福岡市のバスの代表交通手段分担率は約8%で、他の都市も似たような状況です。仮に人口が減少したとしても自動車からの転換を進めることで利用者を増やす余地はあるように思います。地域のインフラとして公共交通を維持し、さらに充実させていくような議論がもっと進んでほしいです。