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長距離通勤・通学の負担を軽減するためのトロントの新たな運賃プログラム

case|事例

トロント都市圏では、郊外の住宅から都心の企業や大学へ通うには金銭的にも心理的にも大きな負担が伴う。あるケースでは月の交通費が1,000カナダドル(約11万円)をこえ、さらにバスや鉄道、地下鉄をいくつか乗り継ぐ必要があるため、所要時間がなかなか正確に読むことができない。

このような状況を救済するためにトロント交通局(TTC)は今年の3月から新たな運賃プログラムを開始する。新たな運賃プログラムでは、TTCからGoトランジットへ乗り継ぐ場合、TTCの片道運賃が払い戻される。またTTC利用者が他の市営交通に乗り継ぐ場合、2時間以内であれば乗継運賃が無料となる。この運賃プログラムは2026年3月までの暫定的なもので結果次第で延長を検討する。

新たな運賃プログラムによる金銭的な負担の軽減は公共交通の利用者を増やす可能性があるが、その一方で公的な負担を増大してしまうという懸念もある。このプログラムの導入によって、年間2,900万トリップから3,600万トリップ分の運賃収入が目減りすると試算されており、州政府は4,000万カナダドル(約43億円)から6,000万カナダドル(約65億円)の負担を強いられることになる。TTCはパンデミックによる利用者の減少によって経営状況が悪化しており、サービスの維持そのものも課題となっている。市民は他の乗り継ぎにも同様の運賃割引を求めているが、公的な負担をどこまで行うかが論点となる。

https://www.cbc.ca/news/canada/toronto/ttc-go-one-transfer-react-1.7036753

insight|知見

  • 福岡でも地価上昇に伴う市内の賃料上昇などで実質的な通勤圏や通学圏が拡大しているように思います。そのため都心への通勤通学時間も長くなっているのではないかと推察します。また、九大伊都キャンパスへの通勤通学はいくつもの乗継を必要とするのでより利用者の負担が大きいように思います。

  • 一方で、福岡の公共交通事業は、コロナの影響に加えて、運転士不足で必ずしもサービスを安定的に潤沢に供給できるような状況ではありません。

  • そのため、公共交通ネットワーク全体での効率性を高めるために、ダイヤ上の連携や運賃の連携が欠かせないように思います。そのとき、トロントのように収入減少分の負担をどうするのかという点が課題になります。

  • 日本の公共交通経営は多くを民間資本に頼り、運賃収入で採算をとっているので、これ以上、民間の経営努力だけで改善するのは酷なようにも思うので、公的な負担も含めた官民連携の議論が必要な気がします。