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都市の水飲み場と、歩行者・自転車利用との関係

case | 事例

英国の衛生機器販売業のQS Supplies社がスポンサーとなった研究で、OpenStreetMapで入手可能な世界の27万6千の飲水スポットを分析し、世界と米国各州や主要都市の人口10万人あたりの公共飲水スポットの比較を行った。この調査方法では飲水スポットが完全に網羅されないことや、スポットが機能的・衛生的・利用しやすいかどうかは判断できないことは注意を要するが、分析の結果は、米国におけるアクティブトラベルを阻む機能に関する研究のヒントになるとともに、米国の自動車依存に関するデータとの一致も見られた。

例えば、歩行者の死亡率が高い自動車交通志向の州:テネシー州(10万人あたり0.21カ所)、ミシシッピ州(0.24カ所)、アラバマ州(0.69カ所)、ルイジアナ州(0.92カ所)などが最下位にランクされている一方で、オレゴン州(14.77)、ワシントン州(11.43)、カリフォルニア州(9.55)、ミネソタ州(9.61)などは歩行者に優しい州と位置づけられている。ただ、最も飲水スポットが豊かな米国都市ワシントンD.C.(10万人あたり24.83カ所)も、世界のトップのチューリッヒ(221.89)には遠く及ばない。

飲水スポットはウォーキングや自転車交通を促進する重要な要素として研究者に認識されてきているが、政策的には公園や図書館といった公的な場所での飲水機整備の規則があるものの、エリア範囲の設置数基準や衛生基準に関するものはあまりない。車社会の米国都市では、外出先で水を見つけることが難しく、多くの都市は感染対策として水飲み場を閉鎖してきている。ペットボトルの削減やアクティブトラベルの促進には、人々が水飲み場の重要性を認識し、政府や企業が水飲み場を広く利用できるようにする必要がある

記事の出典となったQS Supplies社の調査:

insight | 知見

  • 歩行や自転車交通などのアクティブトラベルを進める政策として、専用道やポートを作ったり、休憩できる公園や緑陰を作ることはよく記事で見かけていますが、気候変動やヒートアイランドが進む中、一定間隔あたりの飲水スポットも重要なインフラですね。

  • 記事で触れられていますが、多くの都市は感染対策として水飲み場を閉鎖してきていることは飲水スポットを普及させるための大きな課題に思えます。

  • 国別比較のマップで日本は10万人あたり4.62カ所(中韓よりは多いですが台湾より少ないです)と示されていますが、果たして日本国内の都市ランキングはどうなっているのかは気になりますね。