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ミュージカル『CROSS ROAD~悪魔のヴァイオリニスト パガニーニ~』感想(バッチーニ こと 相葉裕樹パガニーニ)

いやー終わりましたね!終わってしまう前に感想書こうとしてたのに始まったらほんとクリエに行くのにいっぱいいっぱいになってしまって書けなかった…。相葉さんがコロナ感染して初日を迎えられるのかハラハラし、舞台写真が全然なくて悲しみ(東宝さんもっと出して………!!!!あるだろ!!!!!)、中止公演に心を痛め、代役の宮田佳奈さんに涙し…みたいな波瀾万丈な舞台でもありました。

作品については、元は朗読劇、日本製オリジナルミュージカルの初演、パガニーニ、悪魔、そして上演時間3時間15分!?ということでどんな感じなんだろうな~と思って行ったんですが、ガツっとエンタメ浴びた!たのし~!みたいな印象が強かったです。いい意味で厨二感があるというか…悪魔との契約で奏でられる曲数が「100万曲」なのも、「5000兆円ほしい!」みたいな豪快さよ。ゴシックホラー的な空気を醸し出しながらも観劇後は爽やかな気持ちになるような、不思議な作品でした。

・あらすじ(公式サイトより)
19世紀はまさに音楽に魅了された時代だった。
数多の音楽家が誕生し
人々はその才能を愛で
その美しい調べに酔いしれ
音楽が世界を支配したその時代に
突如として音楽史に登場し
音楽の世界を支配した漆黒のヴァイオリニストがいた
ニコロ・パガニーニ
彼には常にある噂がつきまとった。
悪魔と契約し、魂と引き換えに音楽を手に入れた・・・・と。
街外れの十字路で悪魔アムドゥスキアスと血の契約を結んだ彼は
100万曲の名曲の演奏と引き換えに、命をすり減らしてゆく事になる。
19世紀ヨーロッパの華麗なる音楽黄金期を舞台に
音楽を司る悪魔と
悪魔のヴァイリニストと呼ばれた男が奏でるメロディーは
ヨーロッパを
そして世界を熱狂させてゆく・・・

https://www.tohostage.com/crossroad/

全体の話

悪魔と契約、音楽家の苦悩、みたいな設定からしてもっといろいろな作品のことを思い浮かべたりするかなと予想したりもしていましたが、個人的にはそんなこともなかったかな。もっと音楽の才能の限界について思い悩んでたりするのかと思ってたけど、今作でのパガニーニは悪魔との契約で才能を手に入れてしまっているので意外とそういうのは初期にクリアしてしまってて、それより死に向かっていくこと、異端扱いされ家族に迷惑がかかること…そしてそこからの孤独といった、音楽を取ってしまった選択による苦悩の方が大きかったように思います。私は「何か困難があってもどうしても芸能の道を選んでしまう人」がとても好きなので、パガニーニには申し訳ないと思いつつ、どちらかというと悪魔側の気持ちで観てしまう作品だったかもしれません。テレーザさんやアルマンドさんにもしっかり泣かされてるんですけど、見てる時は「もっと行け!!世界を音楽でやっちまえパガニーニ!」みたいな気持ちが大きかったかも。

最初にこのミュージカルを観た時は、素直に「なんか…光ってる!」と思いました。なんだろうな、疾走感があるのかな?間がエモーショナルというか。たとえば、アルマンドはなんであんなパガニーニを慈しむようになったんだろう?とか、いつパガニーニはアルマンドに打ち明けたんだろう?とか、エリザとは追放されたあと何も話さなかったのかな?とか、行間で気になるところはたくさんあるんですよね。でもいい意味でそういうの吹っ飛ばしてて、さらに劇中でどれくらい年代が経ったのかも示されなくて、その分人物の心情に振ってたことで得られるスピード感がよかったんじゃないか。パガニーニについても、ある程度役としては声を作ったり落ち着いて見せたりしてたとは思うけど、見た目としてはずっと若く美しい姿のままで、物語を見ている時は時間の流れをあまり気にしなくてすむというか。リアルじゃない、というツッコミももちろん成立するんだけど、逆に偉人の一生をなぞるだけで「この作品で何を表したかったんだ」と思うものも今までたくさん見てきたので、そこふっきってフィクションとして盛り上げてることに気持ちよさを感じました。調べる人は結局史実調べるしね。

演奏シーンも、血の契約と異端審問と最後のカデンツァ以外はスッと処理されていて、なんなら現実の演者の歌への観客の拍手がそのまま何らかの演奏後だよ~と示されたりする心憎さもあり。そういうある種のドライさというか、洒脱な話の運びが好きでした。個人的な好みとして、ベタッとしてる話運びや演出の感じを親の仇のように思っているところがあるので(?)そこも大きいかもしれません。悪魔と契約したあとのヴァイオリンをダンスで表現してたのも拍手喝采でした。やっぱ歌もダンスも見たいからさ〜!そういうエンタメ要素を大事にしつつ、展開に即して最後は実際のヴァイオリンで締められていたのも、物語としておお〜!!とテンション上がるところでした。

テンポが良い一方、歌も楽曲も好きなのに1曲1曲が長いというか「終わりそ……まだ盛り上がるんかい!!」というところはあるにはありました。まあそれも含めて、何かしら「見慣れたミュージカルの感覚」で測れないところがある作品なのかな。物語の展開で言うと、自分の性格が悪くて「アルマンドがたまたまいい執事で良かったよね…」と思っちゃうから、アルマンドとパガニーニの出会いは一言でいいから何かほしかったかも。例えば他の執事は続かなかったけど、パガニーニの音楽が好きだったアルマンドはちゃんと仕えるようになった…みたいな感じとか?そして2幕にもパガニーニ死後軸のアルマンドとアーシャを、物語の間でもいいからちょっと挟んでくれた方が全体の構造としては好みだったかなとも思いました。軽く検索したら朗読劇の時はそっちの構成だったぽい。

アムちゃんの解釈について

中川晃教さん演じるアムドゥスキアスは、意外とお茶目でかわいい悪魔でした。今回特に、あっきーさんの歌声自体がヴァイオリンみたいで、そういう意識とかしているのかな?でもアムちゃん厄介なおたくみたいだよな…と思ってたらアーシャから「ファンのくせに」と言われてて笑いました。パガニーニはすべての音楽をアムちゃんに捧げなければいけないという契約を結んでいますが、最後の1曲に母親が歌っていた曲を選ぶことで心の自由というか、自分の人生をもぎ取り一矢報いるわけですよね。めちゃくちゃいいシーンな一方、ファンのためのコンサートで実は彼女の作った曲弾いてた…みたいな感じで、なんとなく匂わせの手法という気もする…!!(最悪な連想すな)まあ母の愛は偉大だし、アムちゃんも最終的には音楽が好きすぎる自分の本当の気持ちに気付いた上に「パガニーニ、1000年に1度のおもしれー男…」みたいになってたので良いのでしょう。ちなみに個人的にはそんなに匂わせも気にしないというかウケるみたいな感じなのですが、絶対に確実にファンを減らすのでやめといてよ~と思うタイプです。何の話?

クライマックスについては明言されていないので、個人の解釈の範囲内として、パガニーニが「ギャンブル」と表現してても、何か具体的に褒賞を賭けるというよりは「一世一代の大勝負」みたいな意味での「賭け」なのかなあと思いながら見てはいました。そして悪魔と契約して悪魔の音楽を奏でしパガニーニは、あんな安らかな顔で逝ってもやっぱ地獄に行ってしまうのかなあとは思って。

アムちゃんは地獄の公爵だからパガニーニが地獄行った後もあっちで会えばいいじゃん~と上京する大学生くらいの気持ちで思ったりもしたのですが、地獄って業火に焼かれるらしいのでたぶん無理ですかね…。100万曲も弾けるなら割とコスパ良さそうな契約にも感じてしまいますが、最後地獄かも~と思うとやっぱちょっと躊躇うな。そりゃ死ぬの怖いしベルリオーズもアーシャも止めるよ…。てかアムちゃん人間界に関わりすぎてて、自分の率いし29の軍団は大丈夫なのかよ。公爵業=仕事、パガニーニ含めた才能のパトロン業=推し活と考えたらますます親近感沸いちゃう。

相葉裕樹さんのパガニーニについて

さてバッチーニこと相葉パガニーニ。苦悩しつつも、かなり腹括ってるのかなという印象がありましたし、なんかつよニーニなのでもっとやっちまえ!!世界を滅ぼせ!!!とうちわペンラ振り状態で見てました。たぶん何回悪魔に会っても結局契約するでしょ。アムちゃんとも背中合わせで歌ってるし、バディ感ありますよね。命はすり減らしていたかも知れないけど、結局アムちゃんがパガニーニの音楽=魂を支えていた部分もあったし、それがファンと仁とのEternalなのかなとすら思いました(永遠にEternal構文が好きな女)。

その熱が全体に波及するのか、カテコの拍手もどんどん熱くなって…会場中の人が「この拍手、止まらん…!!!」みたいに永遠に手叩いてどんどんカテコ延びてく空気がクリエにあったなあと。たぶん相葉さんがフル出力じゃないと歌いきれない楽曲だから、みたいなところもありそうなんだけど、熱量の高い歌を浴びることができてすごく気持ちよかったです。後半なんかアムちゃんが血の契約で「ア~オア~オア~オ!」みたいになってる回もあって、もう官能的になってしまってるじゃないですか…とびっくりしました。

あと、ダンスね!!すごくいい!しなやかすぎるターンも、光魔法かっこいいポーズのジャンプも素敵だし、特に悪魔と契約した瞬間に髪を解くところはしびれました。こんな120%「かっこいい」しかない間の仕草できることある??と思いました。この場面たとえて言うなら「Real Face」の赤西仁の舌打ち……(Eternalつながり)。「いやこんな…普通の人にはできん!!!」というかっこよさをキメてくる、そういう外連味たっぷりみたいなところが最高でした。

そしてやっぱりちょっとした仕草、ただ立っている、座ってるだけのところすらも形がキマっていて……。特に跪くところの脚、そしてヴァイオリンを弾き鳴らしてるところの脚、外に開くから長見えすぎてすごい。プリエというか電車のパンタグラフだもん。そういう仕草が時に"型"に見えてしまうところもあるなと思いつつ、この舞台映えは本当にすごい武器だよなと思いながら見ていました。ただ嘆く芝居はもうちょっと自然でもいいよ…!

相葉裕樹さんの歌の素敵なところ

相葉さんの歌については新たな作品を観る度驚いてるんですけど、今回は難曲なことに加えて失礼ながら「こんなに曲数歌えたんだ!」と驚いて……え、だって数えたら12曲?ある。「Cruel God」はちょっと青年ぽい声で歌ってるのが好きです。「血の契約」はあまりにもヴィジュアル系すぎて、「音楽の前で僕は無力!!」のところとか…それはそれは好きです。パガニーニがアムちゃんの手を額に当てて契約結ぶシーンも、陶酔したようによろよろするバッチーニの動きがあまりに厨二心をくすぐりすぎて怖かった外連味の才能がありすぎる。契約した後にガッシガシ踊りまくりながらの歌声もしっかり出ててすごかったです。

「Asha The Gypsy」の歌声はディズニープリンスだし、「Violinist The Devil」「Asha The Gypsy(Reprise)」は会話歌が「レミゼ出身の人だ!」て感じで好き。「異端審問」は「黙れ凡人ども!」から踊りに踊るシーン最高すぎかて。「World Knows」はアムちゃんとの背中合わせバディ感でアガりまくるし、本当は不穏でもあるのに「俺こそが頂点!」でキャッキャする。そして「アンコーラ」は本当にずっと頭を回ってしまう名曲!ただこれ具体的に残りの曲数出てくるのが「Violinist The Devil」の80万曲(本当は76万曲)以来な上に、「アンコーラ」の時点で460曲くらいまで減ってるから、「そんな弾いてたの!?」ってボーボボのビュティみたいなツッコミもしちゃうよ。そもそも「Violinist The Devil」で4万曲くらい誤認してた点で、パガニーニの残業申請の計算とか絶対ガバそうと思ってはいた。

「Casa Nostalgia (Reprise)」はテレーザさんと息を合わせながら歌うのが死ぬほど大変そうなのに泣かせてくるし、「血の契約(Reprise)」はパガニーニ自体は歌ってない(※ので曲数に数えてない)が好き。「迷い子」はなんかのなにかがあれば中学の合唱曲定番になれる。「Casa Nostalgia (Last ver.)」は胸熱というか、圧倒的カタルシスを感じさせてくれるところが最高です。そして「アンコーラ(Reprise)」は歌いながら死に向かう表現がうますぎてなあ。

ちなみにどの曲担?と言われたら、それはもう「血の契約」担です!パフォーマンスが最高すぎるし、曲的にも、太古の昔に…ピアノの先生やってた友達のお母さんが編曲してくれたMALICE MIZERの曲を音楽の授業で合奏して発表したという黒歴史を思い出させるところがある……。これが私の母さんノスタルジアだ…(他人の母さん)。黒歴史でありつつ好きだったからこそアガるみたいなところね…。

苦言で言うなら…

ただこれだけは…てところで言うと、ちょっとずつ改善されてたと思いますが、音響のバランスがやっぱりつらかったですね…。根底にあるのは中川さんへの信頼感で、「推しの声が聞こえないなら推しの力量かもと我慢するが、中川さんの声が聞こえないのはおかしい!」というところは誰しも共通してると思います。あとやっぱ、いいところでスモークのプシューて音が聞こえるのもストレスだと思う…。

この2点が特にやばいと思うのは、観客が「ここの懸念点をつぶさないのやばくない?」と思って、他のすべてもネガティブに捉えてしまう可能性があるからで。逆に言えば、そこをちゃんとしておけば、どこか足りないところがあってもどんどんポジティブに解釈していくとこもあるだろうに…と。とにかく物語をがんばっても、プシューて音で萎えるみたいなことは全然あるので…。そして、観客がそこに萎えることがわかってないのか??と思ってしまうこともあります。今回はもうスモーク発注済みかもしれなくて(??)しょうがないにしてもブラッシュアップしてくれたらいいな〜と思いました。

あと本当、全員の役者さんに言及したいくらい好きなんだけど、今後足すか別記事で書くかできたら…!最後に言っとくことがあるとしたらパガニーニが事切れたあとに優しく脈と息を確認するトイマンド好きすぎでした!

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