見出し画像

ミュージカル「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」

「ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812」、ついに観てきました!
第一報から待ち続けてほぼ一年…。いやー長かった。

前回書いた通り、小説「戦争と平和」の一部を基にした19世紀のロシアの物語。

今回の日本版は小林香さん演出。
話や曲は同じであれ、舞台装飾や演出は流れを汲みつつもBWとは全然違う、コピーではない正に「日本版グレート・コメット」。もう一度言いますが全然違います!
違いはしますが、その違いが素敵だなと思える舞台でした!
そして客席と舞台が一体になった仕様はもちろん受け継がれていて、コメットシートでの食事、観客との絡みなどなど十分観客の度肝を抜く作りになっています。こんな舞台今までにない!

***

まず、A〜F列(1〜6列目)までの客席を取り外しているため、舞台奥〜恐らくE列くらいまで広く舞台が作られていたのが目をひきました。今回の舞台上の席はコメットシートという名称で、ステージ中に座席のエリアが何箇所か作られていました。舞台よりも一段低いエリアなので、目の前で演技しているキャストを見上げるような形に。数えたところここに座れるのは合計148人!
段差や手すり、ひな壇などなど複雑な形状をしていたBW版に比べると、平面的でちょっとシンプル。
この席の観客は飲食OKなので、ドリンクが提供されます。(しかし舞台に集中してしまい飲む暇が難しい…)

開演5分くらい前にはアンサンブルキャストさんが客席にわっと登場して、お客さんに絡み始めました。これは2階含め全ての客席に満遍なく登場し、ウェイウェイ盛り上げにかかるので全体的に賑やかに!私は1階席・コメットシート、2階席と体験しましたが、ローテーションで毎回違う役者さんが来てくれました。
運が良いとエッグシェイカーやピロシキが貰えるようです。

上演中も、客席通路を走り回ったりエッグシェイカーをさり気なく配ったり…BW版と比べるとさすがに客席を使用する率は低いな、とは感じましたが(劇場の構造や人数の問題もありますからね…)通常の他の舞台と比べると十分一体感を感じられます。
とあるシーンではキャストが観客にプロポーズして舞台上にあげようとしたり、はたまた観客の女性にちょっかい出したり、なんてことも。
(特定の席に座った運のいいお客さんは生田絵梨花ちゃんが隣に座ってくれるんですよ…!笑)

通常の客席も含めて劇場全体がアクティングエリアで、観客も一緒に19世紀ロシアの世界に入り込む…そんな体験ができるのがこの舞台の魅力の大きなところ。
ステージシート自体は、この舞台に限った客席形態ではないと思います。が、観客ではなくどちらかというと舞台の一員という立ち位置なのかもしれません。
コメットシートに座った際は完全に没入してしまうので、終演後にふと客席(1階席、2階席)があることに気づき「そうか、ここは劇場だったのか…」と思い出すという不思議な感覚でした。

そしてプレイハウスは通常時834席なので、小さい…というわけではありませんが、1000人規模の劇場も多い事を考えるとやはり小さめ。(BW版のImperial Theatre は1417席)
小さすぎると観客は入りきらないし、大きすぎると一体感を出すのが難しくなるし…。当初は芸劇で上演することに驚いたものの、このほどよい一体感がグレートコメット にぴったりだなと感じたのでした。

***

そして今回楽しみだったのが、日本語でどう訳されるのかということ。
日本語ですでに観劇した舞台については、流石にわざわざ英語版の歌詞を一生懸命読むことはありませんでしたし、今回のように英語版の舞台を先に観てからの日本語版の観劇、なんて初めての経験でした。

忠実に訳されている部分、意味が抜け落ちてしまった部分、意訳…というか恐らくオリジナルの解釈で書かれた歌詞の部分などなど。
どちらが良い、というわけではなく単純にこの違いを比べるのが面白い!
例えば原詩での「They say we are asleep Until we fall in love〜(誰かを愛するまで私たちは眠っている)」という歌詞。
この部分、「人は人を愛するまで魂のない人形」という歌詞が当てられていました。
原詩でも人形なんて一言も出てきていないのに、ここで突然人形に例えているんですよね。
きっと何かこだわりや意図があっての訳だと思うので、そこをきっかけにあれこれ考えてみるのが楽しくて楽しくて。
(これ、元々は原作小説にある一節らしく。今度頑張って読んでみよう…)

ただ、今回観たことで新たに気づいたことが多々あり、自分は完全にはこの物語を理解できていなかったのだなあと実感。まだまだ英語、精進せねばなりません…

***

最初に見た時は演出にただただ圧倒されていたけれど、回を重ねるにつれてシンプルなのだけれど最後に心が温かくなる、そんなストーリーなのだなあと改めて感じました。
ストーリーのことは後で別記事にしよう…忘れなければ。

主演の井上芳雄さんのピエールも、根暗オタクっぽい…というか猫背で寂しそうという独自のピエールが確立されていて素晴らしかったです。ヒゲなんていらなかった。
レ・ミゼラブルでエポニーヌ役で出演経験のある、ソーニャ役の松原凜子さんも注目していた俳優さんの1人。親友を想って歌い上げるソロナンバーは涙なしには見れません。
なんだかんだ公演中に7回も見てしまったので、アンサンブルも含め全員について感想を書きたいくらい…。

ちょうど昨日(27日)に千秋楽を迎えましたが、既に再演を希望です。
せっかくあれだけの舞台を組んだのだから、もう少し長く公演してほしい…雑な想像だけれど貸劇場だとそうもいかないのかしら?

年明けからこんなに素晴らしい舞台に出会えてすでに心がいっぱいです。
今年はどんな舞台に出会えるのでしょうか…まず来月には期待のパリのアメリカ人も控えているので楽しみがつきません!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?