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ちょっと怖いメリー・ポピンズ?

前回記事で感想を書いたミュージカル「メリー・ポピンズ」東京公演が5月7日に千秋楽を迎えました。
子供から大人までみんなで楽しめる楽しい内容だったので、特に春休み、GWには親子連れのお客さんも多かったのでは。

そんなメリー・ポピンズ、ロンドンでの初演時から一部の曲が変更されています。
今回はそのことについてちょっと書いてみようと思います。

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きっかけは最初に観劇した日、「あれ?サントラと曲が違う…?」と気づいたことでした。

子供たちの癇癪のとばっちりで腕がもげてしまった人形のバレンタイン。
おもちゃを大切にしない子供たちに対して、メリーが物を大切にするようにと、「今度はあなたたちの番よ」とおもちゃ達に息を吹き込みちょっと脅かして教育するシーン。
前もって聞いていたロンドン公演版のサントラでは「Temper, Temper」、今回の公演では「Playing the Game」に変更されていました。

この「Playing the Game」への変更はロンドンの次のブロードウェイ上演時に導入されたようで、後にロンドン公演にも逆輸入(?)されたようです。

上演を重ねるにつれて曲の増減、変更はよくあることですが、この変更は何故なのだろう?と調べてみた結果、こんな記事にたどり着きました。
(英語記事を引用しましたが…拙い中学生レベルの英語力なので以下認識間違いなどあったらすみません)

「Scary Poppins」…恐怖のポピンズ?とでも訳すのでしょうか。
どうやら、ロンドンでの上演時、小さな子供には怖いシーンがあるため「3歳未満入場不可、7歳以上推奨」と言う制限がついていたようです。
そしてこの怖いシーンと思われるのが、

One scene deemed too frightening for youngsters shows toys coming to life in the children's nursery.

…要は子供部屋でおもちゃが動き出すシーン…今の「Playing the Game」のシーンを指しているっぽい。
つまり、「Temper, Temper」があまりにも怖いので後に「Playing the Game」へ変更された…のでは?
(このあたり、公式情報で断言しているものが見つからなかったので推測ですが。)

「Playing the Game」はワルツ調の曲で、前述のとおりメリーと巨大化したおもちゃ達が子供たちに「もっと大切にしてくれ」とちょっと脅かす内容。
最初に見たとき、「お、これからおもちゃに逆襲されるのか!」と思っていたら意外に緩くて案外拍子抜けした印象があります。

「Temper, Temper」も大筋は同じです。物を大切にしない子供たちにおもちゃ達が詰め寄るのですが、こちらではバレンタインの腕がもげた件で子供達を被告人としておもちゃ達による裁判が開かれます。裁判長や証人が何人か出てきたり「有罪!」と宣告されたり…怒りのおもちゃ達に囲まれている様子が想像できます。
「Playing the Game」でのおもちゃの仕返しはメリーを介してふわっと行われているのに対して、こちらはメリーは出てこず直接的に仕返しされてます。
そして、曲調も大分違います。言葉で上手く表現するのは難しいのですが、ちょっとホラーっぽくて確かにこちらの方が十分怖い。
メリーがそこにいる・いないだけでも安心感が全然違うですしね。

日本版を見たときは、それでも子供達が反省しないためおもちゃを全部持ってメリーは雲の上へ一旦帰ってしまう…という内容でした。
あらすじは変わらないと思うので、恐らく同じなのかな…と思いますが、正直「Temper, Temper」での脅かしにも屈しない子供達って逆に凄いのでは。。実際どうなんでしょう。

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こういう経緯を調べたり考察したりするのは楽しいなと思いつつ、もし本当に怖いから曲が変更されたのであればちょっと残念だなあとも思います。
先ほどの記事によると、ミュージカルは映画に比べてトラヴァース夫人の原作に寄せている…ということが一緒に紹介されていたので、この「Temper, Temper」の展開も何かしら意図があって取り入れられたのでは…。

制作側のやりたいことと、観客側の求めているものを完全に一致させるのってきっと難しいんですよね。
最近だと劇団四季のライオンキングが版権元からの要望で演出変更した際、ファンからは色々な声があがったでしょうし…。

ただし、メリー・ポピンズはディズニー映画で有名ですし「子供から大人まで誰でも!むしろ子供向け!」と言った印象の強い作品なので、無理に冒険せずマイルドな内容にして安心して見てもらう…という方が良いのかも。

こんなことを考えていると、舞台って決して完成作品ではなくて観客側・制作側お互いのよりよいところにたどり着けるよう常に進化している…そう捉えることもできる、と思いました。
舞台の醍醐味と言うと、臨場感や、同じ舞台は決して見れない…等たくさん考え付きますが、「作品自体が常に成長を続けている」こともその一つなのかもしれない。
なんてことを発見したのでした。

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