『奄美三少年 ユタへの道』●円 聖修著

 奄美でユタとしての仕事をしながら、占い師等の顔も持つ著者による自伝的作品だが、著者と同じくシャーマン的な資質を持った友人二人との交流を中心に綴られている。

 その友人の一人「平少年」は高校時代、学校で神懸かりとなってしばしば周囲を驚かせた。ある時担任の教師が校長室に呼ばれ、少年を退学処分とするよう言われる。担任教師は「彼はこの土地に古くから伝わる神障(ざわ)りではないかと思うのです」と食い下がるが、「なに!神障り、ユタ…君は正気かね?」と校長は嘲り、「脳病院に…」などと言いだす。しかし、担任教師は平少年を親身になってケアし、彼のユタとしての資質を自覚させることになる。

 もしも地域社会にシャーマニズムの伝統が残っていなかったら、平少年はこの校長のような人物によってただの病人にされていたことだろう。

 他にも3人が体験した不思議なオカルト的現象が多く語られるが、このエピソードに見られるようにシャーマニズム研究や地域文化、教育といった多視点で読むことが重要だろう。

◆1620円・四六判・155頁・南方新社・鹿児島・2017/10刊・ISBN9784861243691

地方・小情報誌【アクセス 2017年12月号】新刊ダイジェストより

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