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【まさか増税?!】NTT株売却益を防衛費増額分に充てるんじゃなかったの?

■はじめに

現在NTTの株、いくらかご存知でしょうか?
NTTの株式186万株が公開されたのが1987年。1次売り出し価格は1株119万円程でしたが買いが殺到し、翌10日、初値160万円で売買がスタート。2ヶ月足らずで318万円まで高騰しました。3回にわたる売り出しで政府は売却代金10兆2000億円を手にし、その後ニューヨーク証券取引所、ロンドン証券取引所に上場しています。以後、数回の株式分割を行い、現在(2024年3月初め)なんと!180円台で取り引きされています(東京プライム市場)。

本noteではこの度国会で審議されることになった「日本電信電話株式会社等に関する法律の一部を改正する法律案」(NTT法改正案:以下「本法案」)について考えてみたいと思います。対象とするものは2024年第213通常国会で法案が提出される『NTT法(昭和五十九年法第八十五号)改正法案』です。

さて、NTT株の売却の話が出たのは「防衛費増額による増税回避のため」とのことでした。防衛費の不足っていくら? そもそも今政府が持っている株式は時価いくら? ということが問題になりますね。

まず世界の主要通信会社をみてみましょう。アメリカではAT&Tの株は米国政府は持っていません。英国のBTグループは1997年に完全民営化、ドイツのドイツテレコムは30.5%、フランスのオレンジは13.4%まで政府保有割合を下げています。わが国では政府は本法律により、国は三分の一を保有しなくてはなりません。現在保有する株式は時価にして5兆円。しかし市場への影響を考え、売却は25年かけて実行する見込みで実質年間2000億円程度の売却額とされています。しかもそこから得られる利益はたった1000億円程度…?

NTT株を売ったところで、防衛費の増額を補うことが出来ないことが明らかにされてしまいました。このためか今回の改正においては政府持ち分の売り出しについては改正はありません。NTT株売り出しについては法第四条「政府は、常時、会社の発行済株式の総数の三分の一以上に当たる株式を保有していなければならない。」の改正が必要ですが該当部分の改正は無し。NTT株の売却がなくなったということは、どのように防衛費増額分の予算を捻出するんでしょうか???

・・・まさか増税?!

NTTは13兆円という国家予算の約1割に匹敵する売上げを持つ巨大企業です。電電公社の時代から25兆円という税金を投入し設備を築き上げてきました。それらのNTTの隠れ資産は40兆円とも言われています。これらは当然巨大な既得権の利益構造にとなっていることでしょう。国会議員や役人もほっておくわけがありません。

NTT法改正、株売却の陰ではさまざまな儲け話が転がっていることでしょう。本noteでは紙面の都合上、これ以上は踏み込みませんが今後NTTがどのような組織になっていくのかということは、今後国民が監視していかなくてはならない問題だと思います。

■NTT法とは

NTT(日本電信電話株式会社)の前身は日本電信電話公社という公営企業でした。それが第二次臨時行政調査会(土光臨調)の答申を受け、民営化されることになりました。そして1984年、日本電信電話公社の民営化と通信自由化に伴い法が制定されNTTが発足しました。

政府の関与や監視を受けることで安定的なサービスを提供すること、研究開発の内容に関する公開を行うこと。政府が株式の三割以上を保有することが主に定められています。

NTT法は1984年、NTTの前身である日本電信電話公社(電電公社)の民営化と通信自由化に伴い、NTTグループの事業範囲や守るべき責務などを定めるために制定された(詳細はこちら)。以来、国の莫大な設備を引き継いだ強大なNTTグループを押さえつけるNTT法と、一定のシェアを超えた通信事業者を規制する「電気通信事業法」の両輪によって、国内の通信市場は公正な競争環境を保ってきた。

NTT法めぐる緒戦、「NTTが完全勝利」2つの理由(2024.01.09)東洋経済オンライン
競合キャリア猛反発も、自民党が「法廃止」提言

NTTが民営化されるに当たり、もっとも懸念されたのが「安定的なサービスの提供」の維持でした。政府としては総務省がそのサービス提供に対する指導をおこなうというのがNTT法の第一の目的です。そのため、NTT株売却、そしてNTT法廃止などという話まで出てきてしまい、焦ったのが電電公社から分かれた第2電電、今のKDDIです。そして、同列でしのぎを削るようになったソフトバンク、楽天など、通信基盤各社も反対を唱えました。

もともと電信電話サービスにおいて寡占化を防ぐために民営化したNTTがさらにグループ企業を抱合して全国サービスを行うことはNTT法の設立主意に反することは当然です。NTT以外の通信インフラ企業はNTT法の完全廃止には断固反対の意向を示しています。

「国の金を何十兆円も使って作った独占的インフラをベースに、独占的になんでもやってよい企業を許すのはありえない。それをさせないために分割したのに」
楽天の三木谷浩史会長兼社長は9月5日、自身のX(旧ツイッター)上で、不快感をあらわにした。三木谷氏が問題視しているのは、目下、急ピッチで議論が進められているNTT法の改正だ。
政府内でNTT法の改正がにわかに俎上に上がったのは、防衛費に充てる財源をいかに確保するかという議論がきっかけだった。
NTT法は、政府がNTT株の3分の1以上を保有することを義務づけている。NTTによると、現在の政府の保有比率は34.25%。NTTの時価総額は約15兆円で、単純計算すると政府の保有株は約5兆円に相当する。これらの保有株を売却して防衛財源に充てるならば、NTT法の廃止または改正が必要となる。

「大NTT」復活も?法改正で浮上する再編シナリオ(2023.09.08)東洋経済オンライン
政府・自民党は前のめりだが競合は警戒ムード

各種研究会、審議会などの場で主としてNTT法廃止に関してKDDIなどが中心に反対しました。『NTT法の見直しに関する要望書』が総務省と、自民党へ提出されています。その中から、NTT法改正に対する要望事項をご紹介します。

【1】NTT東西自体による事業拡大や、NTTグループの一体化がさらに進み、我が国における健全かつ公正な競争環境が阻害され、利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞など、国民の利益を損なう

【2】災害時のライフライン確保、DX推進、地方・都市の持続的発展等の様々な社会課題解決に向けては、安心安全・強靭且つ高速・大容量の通信環境を地域問わず実現することが必要であり、民間事業者の競争によって進展してきた。他方、競争でカバーできないエリアについては引き続きNTTがラストリゾートの役割を担うことが適当である。NTT法の廃止によって、電電公社由来の資産・重要な設備を継承するNTTが当該公益的な責務を負わなくなるおそれ。

【3】CATVなど地域に根差した事業者がこれまで提供してきた地域に応じた情報化、防災、生活情報等の地域情報発信機能についてNTTグループは有しておらず、地域事業者が排除された場合に地域サービスの衰退の懸念が生じる。

〇KDDI NTT法の見直しに関する要望書を提出(更新) (2023.10.19)

なお、NTT法改正に関し、次の二つの会議を主体として検討されていることをご紹介します。興味がある方は適宜総務省のホームページでご確認いただくと良いと思います。本noteにおいても記述にあたり参考にしております。

〇公正競争確保の在り方に関する検討会議

〇通信政策特別委員会

■NTT法改正について

さて、本法案の中身を見ていきましょう。『概要』書には次の通り記載されています。

① 「研究の推進責務」及び「研究成果の普及責務」を廃止し、研究開発の自律性を高める。
② 「外国人役員に関する規制」について、外国人役員を一切認めない規制から、外国人の代表取締役への就任や外国人が役員の1/3以上を占めることを禁止する規制に緩和する。
③ 「役員選解任」の決議に係る「認可」を事後届出に緩和する。
④ 「剰余金処分」の決議に係る「認可」を廃止する。
⑤ 「会社名(商号)※」の変更をできるようにする。

NTT法改正法案『概要

さきに述べたようにNTT株の売却、NTT法の廃止は現在のところなくなりました。しかし、NTT法の改正自体はIT産業の発達や人口減少に伴うインフラ整備の議論のなかで常に取りざたされてきた問題です。今回の改正では、NTTをより完全民営化しやすいように段階的に変更を加えているとみられます。

まず、法第三条の改正です。

今後の社会経済の進展に果たすべき電気通信の役割の重要性にかんがみ、電気通信技術に関する研究の推進及びその成果の普及を通じて我が国の電気通信の創意ある向上発展に寄与

の部分が削除されました。

携帯電話の普及に伴い電電公社が築いてきた全国に張り巡らされた通信インフラの有効活用により、5Gの先、いわゆるBeyond5G(6G)の通信基盤の研究、整備が進められています。6Gは光通信網や低軌道衛星を使った光ネットワーク(IOWN構想)とされ、NTTの開発した技術が世界的にみても先頭を走っているそうです。これら開発した技術の公開をなくし「研究開発の自立性を高め」ることが出来るようにしたものと考えられます。

今回の改正のトップに挙げられた「研究の推進責務及び研究成果の普及責務の廃止」。これは平たく言うと、NTTが研究の先頭に立つ責任をもっている、それを皆にひろめる義務があったが、それを廃止するということです。

しかし実は、他のキャリアが恐れているNTT法改正の肝はここではないかと勘繰りたくなります。つまりこれまでNTTの研究に「おんぶにだっこ」でAUやソフトバンク、楽天は研究開発に力を入れていないのではないかと思えるのです。NTTからその責務が外されることで、各社独自に研究開発を進め、より独自色をもった回線を提供する必要がでてくるのではないかと思います。要は親から自立するのは面倒なわけです。

NTTは巨大すぎるのかもしれませんが、現在ではシェアを3割ずつ分け合っている状況ですから、比較的競争としては安定期に入っています。ですから「利用者料金の高止まりやイノベーションの停滞」については、かえってKDDIやソフトバンクのほうこそ企業努力(先進的な技術開発)を忘れていませんか?と言いたい総務省のカウンターパンチなのかなと感じました。

本noteでは、本法案に関して「研究の推進責務及び研究成果の普及責務を廃止」については賛成です。

■結局本法案はどうした方が良いの?

NTTのインフラは楽天の三木谷会長が述べたように「国の金を何十兆円も使って作った」と書かれている通り、私たちの納めた税金が投じられています。これを使って利益を得るNTTの株式売買利益は本来私たちに還元されるべきものと考えられます。その分を減税にまわしましょう! 民営化するならば、他の通信会社で分け合うよりも先に私たちに返すのが当然ではないでしょうか。

NTTの役員や幹部などが旧公社に在籍していたというだけで役員報酬を受け取るのはおかしいと思います。なぜなら、総務省始め、経済産業省など関係各省庁からの天下り先であったわけで退官後高額報酬を得ていたわけです。現在も継続して利益を出し続けているのは税金を投じてインフラ整備を起こった結果です。つまり国民が出資していたのです。完全民営化する前に、これらの利益をまず国民へ還元するべきではないのでしょうか。また現在の役員、幹部などは総入れ替えをするなど既得権として巨大企業に横滑りするような人事を廃止したり、NTT自体を民間に売却するようなことも必要ではないでしょうか。

そのため、本法案にある「役員選解任決議の認可の事後届け出への緩和」「剰余金処分の決議に係る認可の廃止」には反対です。せめて総務省への事前報告をしてそこで審査を受けることで天下りに歯止めをかけましょう。従来から総務省、経済産業省などの国家公務員などが役員や管理職に就くという既得権擁護の会社運営はやめませんか? 改正条文の裏にあるのは天下り問題の隠蔽、温存です。そんな既得権にしがみつきたがる人が経営している会社なんかが完全民営化したところでGAFAMに対抗することなんて到底無理です。

したがって「役員選解任の決議に係る認可を事後届出に緩和する」 「剰余金処分の決議に係る認可を廃止する」点については反対です。

また、今後NTTの完全民営化を図る上で、地方過疎地域などへのユニバーサルサービス提供(法第三条の前半部分)の変革が必要になってきます。そのため過疎地域などでは従来型サービスの低下あるいは廃止が必要であり、高齢者を中心に国民への理解を得る政策が必要になってくるでしょう。総務省の取組としてはBeyond5Gや量子未来社会ビジョンという新しいインフラ構築を進めていく国策があります。当然時代とともに通信技術は入れ替わっていきます。その中で従来のサービスとは様態が異なってきます。そういった次世代型技術を広める広報を優先させて進めていくことも大切です。

令和6年度の概算要求書において次のような予算が組まれています。この他にも各部署が関連予算を計上しています。こういった予算も具体的にどのように使われているのか明らかにすることを求めます。高齢者や地方過疎地域に住む人がいつまでも税金を使ったインフラ維持を求めることに反対します。既得権にしがみついている人たちのために子ども世代を犠牲にしてはいけません。不要な政策はやめ、減税して政府のリソースを減らすべきです。

「産業・社会活動の基盤となるBeyond 5G(6G)」  
 ・研究開発の加速事業 155億円
地域DXの推進を支える情報通信環境の整備  
 ・「デジタル田園都市国家インフラ整備計画に基づく全国津々浦々での光ファイバ・5Gの整備・維持更新、データセンター・海底ケーブル等の整備、非地上系ネットワーク(NTN)の展開などの取組の推進」 127.4億円
 ・高齢者等に向けたデジタル活用支援の推進他 38.9億円

令和6年度総務省所管予算概算要求の概要

私はNTT及びそれらの関連会社は巨大な既得権集団であると思っています。これに対してNOを突きつけることが大切だと思っています。


浜田参議院議員に質問してほしい!

減税と規制緩和に賛成で、国会でも政府に鋭い質問をしてくださる参議院議員NHK党の浜田議員に、ぜひとも国会で質問して欲しいな〜と思うことを番外編として掲載しています。(^_^)

【質問1】
岸田首相にお尋ねします。NTT法改正案は当初防衛費増額に必要な財源確保としてNTT株の売却を検討しているということでしたが、今回の法改正案から削除された経緯をお聞かせください。また、今後防衛費増額の財源は何を当てるのでしょうか。
まさか当初言われていた防衛増税を行うということでしょうか?

【質問2】
NTTの利益は私達国民が納めた税金によって構築されたインフラから得られたものです。言わば、国民全員がNTTに出資した結果、現在のNTTがあるのです。法的にもみなし公務員規定が盛り込まれているNTTです。これまでも電電公社以来の天下り官僚や総務省、経済産業省などの官僚経験者などが経営者や役員になっていると考えられます。民営化以後の利益が棚ボタ式に天下り官僚などの莫大な役員報酬や退職金になっています。国民全員が出資した企業の利益を国民ではなく、一部の人が棚ボタ式に得ているのは国民の誰もが納得できないのではないでしょうか。今回の改正には「役員選解任決議の認可の事後届け出への緩和」「剰余金処分の決議に係る認可の廃止」が盛り込まれているのですが、政府が株式を三分の一有している現状、人事や利益処分については国の承諾を受けるべきではないかと考えます。

また別の角度から考えますが、NTTは欧米のGAFAMなどを目指していると言っています。それらIT大企業はひとりの天才が築き上げ巨大な企業となることができました。創業者やそれを支える社員の知恵と行動で得た利益をそれらの人々が得るのは当然です。しかしNTTは公営から民営に移行し経営者が横滑りしただけでこの人たちが築き上げたものではありません。国民の出資があったからなのです。

総務省あるいはNTTの代表者にお伺いします。NTTの利益が国民へなんら還元されることなく、役員や幹部などがNTTに在籍していたというだけで役員報酬を受け取るのはおかしいと思います。完全民営化する前に、まず国民への還元を行うべきではないのでしょうか。また現在の役員、幹部などは総入れ替えをするなど既得権として巨大企業に横滑りするような人事を廃止したり、NTT自体を民間に売却するお考えはありませんでしょうか。


【質問3】
NTTが構築した全国にあまねく広がったユニバーサルサービスとしての電話回線網整備に関するお尋ねです。NTTが完全民営化した場合、いち企業として効率化、利益追求を進めていくものと考えますし、国として手放す以上、企業として大きく発展することの支援が必要です。また一方、人口減少社会を考えると住民が著しく減少する地域などでユニバーサルサービスを継続していくことは当然困難であろうと考えます。そのような中でできるだけ問題を少なくして完全民営化に移行してくことが望ましいと思います。

例えば個人が使用する固定電話によるサービスの維持が難しくなるのであれば、国民が自らの意思でスマートフォンに切り替えていく、そういった柔軟な動きが国民には求められると思います。特に高齢者を中心とした固定電話という古い電話の方式へのこだわりをなくす必要があると思います。国民全員がスマートフォンにできるだけ早く切り替えられるような政策については検討されていますでしょうか。それはいつまでにしないといけないとお考えでしょうか。今後の携帯電波のインフラ整備に関してお聞かせください。

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