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LOCUST コンテンツガイド(音声5 )THE NOVEMBERS『LIVE:AT THE BEGINNING』 伏見 瞬

 THE NOVEMBERSの配信映像作品『LIVE:AT THE BEGINNING』は端的に素晴らしい。今後、日本のバンドミュージックの基準点として参照されるべき作品だ。期間限定の配信だったが、後世のためにパッケージとして残しておいて欲しいと思う。

 今年5月に発売されたTHE NOVEMBERS8枚目のアルバム『AT THE BEGINNING』。本来なら当然あるべきライヴツアーが今年はできないところで、12月11日にアルバム再現ライヴが配信された。ライヴとは言え、リアルタイムではない。一発録りライヴの音と映像を編集、作品化したものである(音は一回の録音だと思うが、映像はおそらく数テイク撮っているはず。あらゆる角度から演奏を映すのにカメラが一度も映らないから)。

 言うまでもないが、音楽とは本来視覚芸術である。複製技術が音楽に適用されるまで、視覚要素なき音楽の演奏は存在しなかったし、レコード、ラジオの誕生以降は、写真とジャケットとミュージックビデオが大いなる役割を果たす。音楽にとって視覚が重要でなかった時代など、一度たりとも訪れていない。「純粋に、音そのものを聴く」という姿勢(時にそれは「音響派」という言葉と結びつけられたりした)を本質の追求と結びつけるのは誤りである。「音のみの聴取」は音楽メディアの誕生に伴って可能になった新しい鑑賞方法であって、そこに得られる歓びや学びがあるのは間違いないが、「音そのもの」の特権視は、音楽体験の一部分を拡大化する偏った態度であるということも、常に留意しておきたい。

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